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サイドスタンドプロジェクト、活動展開中“誰かの支えがあればオートバイも運転できる”

  • 中古バイクカタログ
  • 2022.08.09

今回はSSP(Side Stand Project)の、公道での障がい者のバイク・ツーリングの実現に向けた活動をご紹介します! 体験走行会で少しでも、興味を持ってもらえれば嬉しいですね♪

バイクは自立出来ない。でもサイドスタンドがあれば立っていられる。そんなところからネーミングされた一般社団法人SSP(Side Stand Project)は、この秋、ついに公道での障がい者のバイク・ツーリングの実現に向けて動き出しています。

 

【目次】

1.あの青木三兄弟が発信する活動!

2.回数を重ねるごとに進化する体験走行会

3.写真詳細

 

 

 

 

 

 

  • あの青木三兄弟が発信する活動!

“誰かの支えがあればオートバイも運転できる”をコンセプトに、「障がいを抱えても、オートバイに乗りたい」と考えるオートバイ好きに再びバイクに乗る楽しみを提供したいという活動を行なっている一般社団法人SSP。その活動の始まりは、元WGPライダーで、1998年のシーズン前に行っていたテスト中の事故で脊椎を損傷、下半身不随となってしまった青木拓磨さんに、再びバイクに乗って欲しいということがキッカケです。

 

事故から22年となる2019年にオートバイに乗せたことから始まったわけです。その活動を推し進めているのは、その拓磨さんの兄弟である、青木家の長男・宣篤さんと、三男・治親さんの二人。そう、この3人は1990年代に世界的に大活躍した群馬県出身のロードレーサーの兄弟で、青木三兄弟として有名です。

 

障がいを抱えてしまった拓磨さんを身近に見てきた彼らでしたが、ヨーロッパで障がいを負ってしまった人たちが、その後もオートバイを楽しんでいる様子を動画配信サイトで見つけたのをきっかけに、「じゃ、拓ちゃんも乗れるのでは?」といろいろ調べていき、実際に2019年の鈴鹿8耐レースのイベントで約7万人の大勢の観客の前でその走行を披露したのです。

 

その活動は、拓磨さんの走行だけにとどまりませんでした。この感動をもっと多くの人に届けるべき、と展開を始めたのが『パラモトライダー体験走行会』でした。2020年から始まったこの活動は拓磨さんのようにバイクの事故などでけがをして「もう二度とバイクに乗れない」とバイクを諦めている人に、オートバイに乗ることは不可能なことではないということを伝えていこうという思いから展開しているのです。

 

琢磨さんが乗ったバイク(2019年の鈴鹿8耐のイベントではCBR1000RR SP2)には、ある特殊な装置が付いていました。それがボタンで操作できるシフターです。ハンドル横にスイッチを用意し、シフトアップとダウンはこのスイッチを押すだけでクラッチを握ることなくシフト操作が可能となります。足を置く通常のステップを、ビンディングのついた特殊なステップに付け替え、ライディングブーツにもクリートを取り付けて、これで足を固定。大腿部についてはベルトで開かないようにしています。

 

ちなみに拓磨さんは、その後2019年のMotoGP日本ラウンド(もてぎ)で青木兄弟3人による走行、さらに鈴鹿でのサウンド・オブ・エンジンでは、同じく車いす生活を余儀なくされているウェイン・レイニーさんとともに鈴鹿サーキットのコースを走っています。レイニーさんは先日イギリスで行われたグッドウッドフェスティバルでその走行シーンを披露していますが、そのもっと前にレイニーさんに声を掛けてバイクに再び乗ることを提案したのは、この青木三兄弟なのです。現在、拓磨さんはミニバイクレースである「Let‘sレン耐」を主催していますが、そのレース車両の一台にSSPのハンドシステムを搭載しており、レースの現場で走ったりしていて、周囲からは、すでにバイクに乗ること自体は特に驚くことでもない、という状況になっています。

 

  • 回数を重ねるごとに進化する体験走行会

その一般社団法人SSPは、青木治親さんが代表理事を務め、テクニカルアドバイザーに宣篤さん、専属パラモトライダーに拓磨さんというカタチでこれに関わっています。SSPでは拓磨さんのバイク走行を機に、「もっと多くの人にこの感動を」と『パラモトライダー体験走行会』という無料の走行会を開催しています。2020年の6月に初開催をしましたが、以後コロナ禍による休止を除き、月に1回程度の頻度で開催をしてきており、その開催数は約2年ですでに20回を数えます。

 

走行会自体は、貸し切り状態で安心して走行を行なえる空間として、サーキットや休校日の自動車教習所というクローズの空間を会場として使用しています。安全のため、ヘルメットはもちろんブーツ、グローブ、革ツナギまでライディングギアをSSP側が用意し、体験走行で参加者が使用できるように準備をしています。バイクももちろんSSPが用意し、この体験走行会には無料で参加が可能となっています。そのバイクは拓磨さんが乗ったのと同じハンドシステムを装着した大型バイクと、転倒防止用の補助輪の付いた小型バイクです。

 

バイクへの乗降、そして発進と停止の際に不安定になる状態は、ボランティアスタッフがバイクを支えることで、サポートするということになります。そのため、この体験走行会には多くのボランティアスタッフが参加しています。このボランティアスタッフの大半がバイク乗りで、バイクを諦めた元ライダーが再びバイクに戻ってくれることを心の底から喜んでいます。

 

この体験走行会に参加するパラモトライダーは、当初は、脊椎損傷や足の切断など下半身不随の障がい者をメインに考えていましたが、さまざまな問い合わせや参加希望がありました。その都度スタッフは実現できる可能性を探り、それに合わせてバイクを合わせてきました。また、サポートの仕方もしかりです。

 

当初はパラモトライダーもSSPスタッフもお互い手探りの状態での体験走行会でしたが、回数を重ねるごとに内容も進化していきました。ハード面でいえば、補助輪の付いた小型バイクは、アウトリガータイプのものを角度別に3タイプ用意するサイドアシスト車に進化しましたし、緊急時用にリモコンでエンジンを停止させることもできるようになりました。また、体幹がなくバランスの取りづらい参加者には、バイクに乗る前にバランス取りの練習ができるペダル無し自転車も用意するようになりました。また、ライダーとのコミュニケーションを取るため、通信用インカム「B-com」を使用し、ライダーとサポートライダーおよびスタッフとの会話をスムーズに行うようになっています。視覚障がい者の走行にもこのインカムが有効活用されています。

 

そして、このSSPの活動の最終的な目標は一般公道でのツーリングです。といっても、バイクを諦めた障がい者の多くは2輪免許をなくしています。そのため、一般公道として存在し、それでいて道路の貸し切りができ、貸切る事により免許不要で走行の出来る箱根ターンパイクでのパラモトライダーの走行を実現しようという企画『やるぜ!! 箱根ターンパイク2022』が、ついに9月11日(日)に開催となります。障がい者がオートバイに乗る、絶対不可能だった ”夢” を叶えるチャレンジ、その実現も近いのです。

 

  • 写真詳細

2019年7月の鈴鹿8時間耐久レースのスタート前のイベントのひとつとして、青木拓磨さんが大勢の観客の前で走行を披露したのがこの活動のきっかけとなりました。

 

2019年10月のMotoGP日本GPでは、現役時代に乗っていたのと同じレプソルカラーを施したホンダRCV213V-Sを持ち込み三兄弟で走行を披露しました。

 

2019年11月、「SUZUKA Sound of ENGINE 2019」に、『WGP US Legends』として、ケニー・ロバーツ、エディ・ローソンらとともにウェイン・レイニーさんがバイクに乗る姿を披露した。このきっかけを作ったのはもちろん拓磨さん。

 

拓磨さんが主催している「Let‘s レン耐」はレンタル・ミニバイクの耐久レースだが、時折自身も走行して参加者との走行を楽しんでいます。参加者からは「実は足動くんじゃないの?」と訝しがる声も。

 

SSPでは参加者のためにヘルメットからグローブ、ブーツ、革ツナギなどをすべて用意しているので、再びバイクに乗るためにすべてを用意する必要はありません。

 

SSPが用意している車両。シフトペダルにはアクチュエーターを取り付け、その操作ボタンはステアリング横に設置。それぞれのバイクに合わせてセットアップされています。

 

SSPでは体験走行会を重ねるごとに改善を行っており、日々新たな対策品や新たな施策で内容をブラッシュアップしています。ボランティアスタッフの班割などで一度に何名かのライダーを同時に走らせることも可能になりました。

 

視覚障がいの方からの参加希望を受けて、どうしたら走行が可能かを考え、インカムでナビゲートして走行することとなりました。現在では複数の視覚障がいのパラモトライダーが誕生しています。

 

SSPでは体験走行会に機材を持ち込むためにトラックを持ち込んでいるが、ゲート付きの冷蔵車両を持ち込んでいます。これは参加者の着替えのためのスペースと、参加者の体調管理のための冷房室として使用しています。

 

制作・協力

■文・写真:青山義明 ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクト 

 

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