【aprilia TUONO 660 Factory】アプリリアレーシングスピリットを 660ccのアップハンで味わう

　とても興味深いバイクをたくさん作っているのに、日本国内では販売網がもう一つ弱いというか……アプリリアとはそんなイメージではないだろうか。ハーレーやトライアンフなどメジャーな（？）メーカーが販売店を増やし、より国産車に近いようなサポート体制を築いてきているのに対し、アプリリアは昔ながらの小規模を維持していることで、よりプレミアムな感じを残しているとも言えるだろう。

　しかしそんなアプリリアも思わず気軽に買いたくなるモデルを出してくれた。660ccパラツインのRS及びそれのアップハン版のトゥオーノである。しっかりとスポーツバイクでありつつも、同時に尖りすぎていない、というコンセプトはホンダのCBR650RやヤマハのR7に近いのかもしれないが、それだけではないのがさすがアプリリア。しっかりと100馬力ほどを確保し、しかも電子制御も充実、サーキット走行も見据えた確かなスポーツ性も秘めているのが魅力だ。今回の試乗以前にはサーキットをしっかりと走り込んだこともあったが、アップハンのトゥオーノでも非常にエキサイティングな走りが可能で、しかもトラコンの介入度を走行中に手元でコチコチと簡単に変えられるなど、本当に「走る」ことに本気で取り組んでいるバイクだと感じさせてくれた。

　試乗したのはそのトゥオーノの上級グレードの「FACTORY」。基本は同じとしながらも、ファイナルをわずかにショート化しより強力な加速力を手に入れ、そして最高出力もスタンダードのトゥオーノの95馬力から5馬力アップの100馬力とした仕様ではあるが、それでも比較的快適なライディングポジションやタンデムや荷物の積載を現実的としている広いタンデムシートといった、トゥオーノブランドとしての魅力は引き継いでいるのが素晴らしい。サーキットマシンとしての妥協はせず、それでいて公道での付き合いやすさもしっかりと確保しているバランス感覚は、ストリートファイターの祖とも言えるトゥオーノならではのものだろう。

　プレミアムなリッタークラスのバイクが多かったアプリリアが放ったこの660パラツインは世界中でヒットとなっているようだが、日本でもアプリリアのイメージを変えてくれる一台となってくれているように感じる。アップハンのトゥオーノはそうでもないかもしれないがRS660の方はサーキット走行会でも見かけるし、中古車市場にもチラホラ出てきている様子。270度クランクのパラツインというエンジン形式的には新しさは感じないものの、アプリリアというブランドを知る入り口としては非常に魅力的なモデルと言えるだろう。「何か面白いバイクないかな」と探しているお客さんに薦めたい、手軽な本格スポーツバイクである。

TUONO 660 Factory主要諸元

■エンジン種類：水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量：659cm3 ■ボア×ストローク：81.0×63.93mm ■最高出力：73.5kW(100HP)/10,500rpm ■最大トルク：67.0Nm(6.83kgf)/8,500rpm ■全長×全幅×全高：1995×805×--mm ■軸間距離：1370mm ■シート高：820mm ■装備重量：181kg ■燃料タンク容量：15L ■変速機：6段リターン ■タイヤ（前・後）：120/70ZR17・180/55 ZR17 ■ブレーキ（前・後）：油圧式ダブルディスク・油圧式シングルディスク ■メーカー希望小売価格（税込）：1,562,000円

アップハンとは言え、前輪が遠くに感じないぐらいの程よいポジションだ。

フルアジャスタブルの倒立フォークを備え、ブレーキもブレンボを標準装備。さすがイタ車の抜かりなさ。

660クラスでもリアタイヤは180幅。排気系は腹下にサイレンサーをもつショートタイプだ。

100馬力まで増強されたパラツインは最大トルクの80％を4000rpmで発生するフレキシブルなユニット。

RSのセパハンに対してバーハンドルがトゥオーノの特徴。とはいえそれなりにスポーティなポジションだ。