他カテゴリ記事を絞り込んで探す
【HARLEY-DAVIDSON X350/X500】ハーレーのコンパクトスポーツ パラレルツインはとにかく楽しい
- 中古バイクカタログ
- 2023.12.13
今回は【HARLEY-DAVIDSON X350/X500】を紹介します!
ハーレーダビッドソンは、普通自動二輪免許で乗ることができる「X350」と、その兄弟モデルである「X500」の国内販売を開始。再びラインナップされた小排気量モデル、「Xシリーズ」と名付けられた新世代ハーレーはいかなるものか。国内試乗会で感じた、2台の印象をお伝えする。
-
ハーレーダビッドソンの新たな挑戦
いよいよハーレーダビッドソン(以下HD)の小排気量モデル・シリーズ「X350」と「X500」の発売が日本でスタートした。これまで大排気量のV型2気筒エンジンを搭載したモデルがラインナップを占めてきたHDにとっては歴史的な出来事。かつてはイタリアのアエルマッキ社を買収し、そこで開発されていた単気筒エンジン搭載モデルや2ストロークエンジンを搭載したオフロードモデルなども展開していたが、そういった多モデル展開をしていた時期からも50年近い歳月が経過しているため、今回のXシリーズの展開はHDブランドにとっても新たな挑戦と言えるだろう。
日本市場において、このXシリーズは魅力的な車両だ。いまHDを中心としたクルーザー市場のモデルは排気量を拡大し、限りなく2000ccに近づいている。当然、車体も大きくなり、それに躊躇するライダーも少なくない。対してHDが新たにラインナップした「X500」は、大型自動二輪免許を必要とする既存ラインナップの中でも小柄で、これまで購入を躊躇していたライダーにも再度アプローチできるモデルとなっている。
そして「X350」は、普通自動二輪免許/通称“中免”でも乗ることができ、これまで250ccや400ccモデルを購入検討したり、すでに購入しているライダーもターゲットとすることができる。この350ccモデルは、インドや東南アジアでポピュラーな存在であり、「X350」は日本市場のためだけに展開されるモデルではないが、日本の道路事情と似た市場向けに開発されたモデルただけに、我々日本人ライダーにとっても親しみやすいサイズやパフォーマンスにパッケージされていることも大きな魅力だ。「X350」と「X500」と名付けられた2台は、ともに360度クランクの並列2気筒エンジンを搭載していることは共通しているが、その基本設計は異なる。「X350」はHDの歴史的な市販レーシングマシン/XR750をイメージソースとしたスタイリングデザインを採用。そのコンパクトな車体と、ステップが少し後ろで高い位置にあるスポーティなライディングスタイルから、ネイキッドスポーツカテゴリーに属する。
一方の「X500」は空冷スポーツスターのようなスタイリングを与え、またやや前で低い位置にあるステップと幅の広いハンドルポジションによって、アメリカンスポーツバイクにまとめ上げられている。ともに、かつてアメリカのレースで活躍したHDファクトリーのチームカラーであるオレンジを車体カラーやグラフィックに使用したことから、XシリーズはHDのライトウェイトスポーツカテゴリを再び構築しようとしているのかもしれない。
-
試乗インプレッション
エンジンには、両車ともH Dとして初となる360度クランクを採用した並列2気筒を搭載している。今はほとんどの並列2気筒エンジンが180度クランクまたは270度クランクを採用している。ちなみにHDのV型2気筒エンジンは45度であり、不等間隔爆発と呼ばれる、2つのピストンが上下する間隔のズレが“ドコドコ感”と呼ばれるエンジンの個性を生み出していた。
しかし360度ツインにも大きなメリットがある。それは上下する2つのピストンが等間隔で爆発することによって生まれる、滑らかなエンジンの回転上昇と扱いやすい出力特性だ。不等間隔爆発の2気筒エンジンは、低中回転域で唐突で力強いシリンダー内爆発を感じ、それが力強いというフィーリングに繋がる一方、扱いづらさに変化してしまうこともある。
その点、「X350」「X500」は、ともに低回転域でも扱いやすい。排気量が大きくてパワーがある「X500」では、街中でもさっさと3速か4速にシフトを上げ、あとはアクセル操作だけでクルマの流れを十分にリードできる。首都高では、3速以上を使っていれば、どのギアを使ってもかなり速く走れてしまう。
「X350」も、基本的には500と同様のエンジンフィーリングだ。排気量が小さいこともあり、首都高速を走れば、どのギアを使ってもX500から1500~2000回転ほどエンジンを回して走ることになるが、その伸びやかなエンジンは気持ちが良い。そしてしっかりエンジンを回せば、しっかり速い。また意外にも、低回転域を多用する街中でも力強く、せわしなくギアチェンジをしなくても加減速が連続する街中をのんびり流すこともできる。
この高回転も低回転もしっかり使え、なおかつ反応の優しいエンジンは、たしかにバイク初心者や大型バイク初心者には大きなメリットとなるだろう。そして同様に、いまや絶滅危惧種的な存在となった360度クランク採用の並列2気筒エンジンは、ベテランライダーにとってもそれを味わう絶好の機会である。
排気量350~750ccの中間排気量クラスは、日本の4メーカーを中心に、ロイヤルエンフィールドやトライアンフなどが参入し、魅力的なニューモデルを投入する大きなマーケットである。そこにHDが参入したことで、市場はさらに活気づくだろう。「X350」と「X500」は、その市場で台風の目になることは間違いないだろう。
HARLEY-DAVIDSON X350主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:353cm3 ■ボア×ストローク:70.5×45.2mm ■圧縮比:11.9 ■最高出力:27kW (36HP)/8500rpm■最大トルク:31Nm/7000rpm ■全長×全幅×全高:2110×─×─mm ■軸間距離:1410mm ■シート高:777mm ■車重:195㎏ ■燃料タンク容量:13.5L ■変速機:6段リターン ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式シングルディスク ■タイヤ(前・後):120/70 ZR17・160/60ZR17 ■車体色:ドラマティックブラック、ダイナミックオレンジ、スーパーソニックシルバー、パールホワイト:■車両本体価格(税込):699,800円
HARLEY-DAVIDSON X500主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:500cm3 ■ボア×ストローク:69.0×66.8mm ■圧縮比:11.5 ■最高出力:35kW(47HP)/8500rpm■最大トルク:46Nm/6000rpm ■全長×全幅×全高:2135×─×─mm■軸間距離:1485mm ■シート高:820mm ■車重:208㎏ ■燃料タンク容量:13.1L ■変速機:6段リターン ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式シングルディスク ■タイヤ(前・後):120/70ZR17・160/60ZR17 ■車体色:ドラマティックブラック、ダイナミックオレンジ、スーパーソニックシルバー、パールホワイト ■車両本体価格(税込):839,800円
-
車両詳細
「X350」はHDの歴史的な市販レーシングマシン/XR750をイメージソースに、薄い燃料タンクと跳ね上がったシートカウルをデザイン。
一方「X500」は丸みを帯びた燃料タンクに一体型シート、バブカットしたリアフェンダーで軽快な印象に仕上げられている。
エンジンもフレームも両車はまるで異なり、「X350/上段(以下同じ)」はやや前傾したエンジンをトラスフレームに搭載。「X500」はシリンダーが直立に近く、フレームはよりシンプル。マフラーは「X350」がショートで「X500」は太いサイレンサーを持つ。
シンプルな一眼タイプメーターは両車共通。メインのアナログスピードメーターの中に、距離計やエンジン回転計を選択して表示でき、メーター盤下部に警告灯をまとめる。メインキーシリンダーは「X350」がメーター下右側、「X500」はメーター下左側にある。
両車ともに倒立タイプのFフォーク(X350はφ41、X500はφ50)に、4ポットキャリパーをダブルでセット。「X350」は小径のウェイブディスク、「X500」は大径ディスク+ラジアルマウントキャリパーを採用する。どちらもフローティングディスク。
同縮尺ではないが、ハンドル幅やその高さの違いがよく分かる。ハンドルは「X350」はやや手前に引かれているのでコンパクト。「X500」は少し遠くて幅も広い。両車ともヘッドライトはL E D を採用。その中にはHDのロゴをデザイン。それによってXシリーズが持つ、既存ラインナップとは違うモダンな雰囲気を造り上げている。
■試乗・文:河野正士 ■写真・取材協力:ハーレーダビッドソンジャパン