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【Honda CBR650R E-Clutch / CB650R E-Clutch】シフターとしての優秀さと他機種展開への期待

  • 中古バイクカタログ
  • 2024.08.14

今回は【Honda CBR650R E-Clutch / CB650R E-Clutch】を紹介します!

長らく噂されていたホンダの「Eクラッチ」がとうとう発売された。オートマとマニュアルの間を自由に瞬時に行き来できるという画期的な新提案、しかもコンパクトでシンプルな作りゆえに今後は様々な機種にも展開できるようになるとか? まずは初搭載されたCB650R / CBR650Rにて試乗した。

 

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  • Eクラッチとは?

 Eクラッチとは、一体何なのか。世の中には既にたくさんのクラッチレスの乗り物がある中で、さらにそこに投入された新機能。ちょっと世の中のオートマ(と言っていいのか?)をまずは整理したい。

 

 ホンダに限らず多くのメーカーが展開してきたスクーターは、ほとんどがオートマでありしかも変速も自動のCVT機構を持っている。そのCVTの中に意図的にギアレシオ的な設定を設けることで、手元のスイッチによって疑似的マニュアル操作あるいはシフトダウンができるものもあったりするが、あくまでCVTはCVTであり、ある意味わかりやすく、なかにはスポーツバイクでもこの機構を持っているものもあった。もちろん、クラッチレバーはない。

 ギア付きで代表的なオートマ機構としてはホンダのDCTもある。これは普通にミッションがあって、その変速を含めて自動でやってくれるというもの。クラッチレバーはなく発進も停止も変速もやってくれる(変速はMT操作も可能)のだが、CVTに対してよりダイレクト感がある一方で、CVTのようにレシオがバリアブルではないため、自動で変速されたギアレシオがライダーの意図と違うこともある。

 他にヤマハはFJR1300ASでYCC-Sというオートマ機構があり、これは発進・停止を自動でやってくれるがシフト操作そのものはライダーが担当するというもので、クラッチレバーはない。また、ヤマハはこれに似た新たなオートマシステムY-AMTも発表したばかりだ。

 

 そんなオートマ界のどこにEクラッチは位置するのか。近いのはヤマハだろう。というのは、発進・停止は自動でやってくれるが、シフト操作そのものはあくまでライダーが担うという意味で似ている。しかし独創的なのは「それでもクラッチレバーがついている」ということだ。通常のMT車同様にクラッチレバーは確かにあり、しかも通常のMT車のようにそのクラッチレバーを操作すれば、それこそ全くEクラッチを意識することなく「通常のMT車のように」乗ることもできるのである。

 

 整理すると、最もオートマなのはCVTで、通常MTとの中間にあるのがDCTだとすると、EクラッチはDCTと通常MTのさらに中間に位置する、というイメージだろう。変速はあくまで自分でする、発進・停止はヤマハYCC-Sのようなオートマ機構に任せても良いし、もしくは自分でやっても良い、ということだ。

 

 この機構が最初に搭載されたのはCB650R及びそのフルカウル版のCBR650Rとなる。公道を模したクローズドコースで試乗した。

 

 安心するのは見た目が慣れ親しんだ通常MT車とほぼ同じということだ。開発者の話では「欧州でDCTの浸透に時間がかかったのは、あって当たり前のクラッチレバーがそこに無いという違和感という部分がありました」ということだったが、Eクラッチではクラッチレバーは「ある」ため、あまりオートマを意識せずに接することができるはずだ。

 

  • 試乗インプレッション

クラッチを握らずに1速に入れ、アクセルを開ければ普通に発進してくれるのはFJR1300ASと同様だ。スムーズに繋がりストレスや違和感はない。柔らかく開ければ柔らかく発進するし、勢いよく開ければ元気に発進する。繋がり方は、特にUターン時など柔らかく発進したい場面では幾分唐突に感じる場面もあったが、それはいずれリファインされていくかもしれない。個人的にはクラッチの繋がり方のダイレクトさを「ソフト」「シャープ」などと選べるような設定があっても良いのではと感じた。

 

 シフトチェンジはあくまでライダーが担うわけだが、オートシフターとEクラッチの組み合わせによりシフトアップもシフトダウンも全くクラッチに触れる必要はなく極ナチュラルにこなしてくれる。特にCBRの方はスポーツに熱中できるパッケージとなっているので、この極スムーズなシフトチェンジは強い武器。既に世にはクイックシフターが溢れてはいるが、クラッチの制御も加わっているこのEクラッチのシフトチェンジは完全に別次元で正確かつ上品。コーナリング中のシフトチェンジでもシフトショックは極小で、低速/低回転域でも確実なシフトチェンジをしてくれる。Eクラッチによりもたらされたワンランク上のオートシフター機能は、一点の注文もない素晴らしいものである。

 

 Eクラッチによる発進は普通にMT操作をせずにアクセルを開けるだけだが、クラッチを握らず停止したらDCTのように自動で1速には戻らないためそこはライダーが操作して1速まで戻す。クラッチ操作を省略できるのは渋滞路などでは便利な機構とも言えるが、シフトチェンジはあくまでライダーが行うため、ストップ&ゴーを繰り返す場面ではDCTやCVTほどの楽はできず、よく言われる「疲労軽減」の効果は感じ方次第だろう。機構としては良くできている(特に変速については)のは間違いないのだが、「DCTとMTの間に、はたしてEクラッチという新たなカテゴリーはそもそも必要だったのか?」という、コンセプトに対する疑問が浮かばないでもなかったのが正直なところだ。

 

 その疑問に対する答えは時間と販売数が示してくれることだろうが、まずはこういった新たなチャレンジを歓迎したい。どのようなお客様にこれを薦めるか、と聞かれれば、長距離ツーリングをする人や渋滞路走行が多い人、だろうか。通常のMT版に対して僅か55,000円(黒カラー)の価格上昇は機構の優秀さを考えればかなりリーズナブルだとは思う。またEクラッチのシステムは多くの車種に転用が容易だというから、今後はよりクラッチ操作簡略化ニーズが高そうなレブルなどクルーザー系にも搭載されていくだろう。一点惜しいのは、クラッチレバーが「ある」という事実ゆえAT免許では乗れないことである。

 

  • 車両詳細

Honda CBR650R E-Clutch/CB650R E-Clutch主要諸元

■エンジン種類:水冷4ストローク4気筒DOHC4バルブ ■総排気量:648cm3 ■ボア×ストローク:67.0×46.0mm ■圧縮比:11.6 ■最高出力:70kW(95PS)/12,000rpm ■最大トルク:63N・m(6.4kgf・m)/9,500rpm ■燃料供給方式:PGM-FI ■全長×全幅×全高:2,120×750【780】×1,145【1075】mm■軸間距離:1,450mm■シート高:810mm ■車両重量:211【207】kg ■燃料タンク容量:15L ■キャスター角:25°30' ■トレール:101mm ■変速機形式:6段リターン ■ブレーキ形式(前・後):油圧式Wディスク・油圧式ディスク ■タイヤサイズ(前・後):120/70ZR17・180/55ZR17 ■メーカー希望小売価格(税込):1,188,000円(赤)/1,155,000円(黒)【1,089,000円(黒/グレー)】※【】内はCB650R E-Clutch

 

Eクラッチ搭載だけでなく、外装や足周りなどモデルチェンジを受けますます魅力的となっているCBR。夢中でスポーツ走行をさせてくれるし、Eクラッチがもたらす極上のクイックシフター機能はその上質なスポーツ体験をサポートしてくれる。

 

開発メンバーの面々。10年をかけて完成したEクラッチだけに思い入れも強い。プロジェクトリーダーは「とても良くできたと思います。DCTを駆逐できるのでは!?」と笑っていた。

 

吸気チャンバーと一体化された左右のシュラウドが特徴のCB650RE-Clutch(左)とスーパースポーツ直系のスタイリングのCBR650RE-Clutch(右)は、どちらもE-Clutchではなく通常のクラッチ操作のモデルもラインナップする。

 

フルロックのUターンなどでは、Eクラッチのつながり方が幾分唐突に感じることもあり、経験のあるライダーならマニュアル操作した方が正確に車両をコントロールできると思う。ビギナーにとっては「エンストしない」という事実は安心要素となるはずで、坂道発進などでは助かることだろう。ゼロ発進でもご覧のようにクラッチ操作はせずにスタート。

 

Eクラッチ本体はとてもコンパクトな設計。モーターを2つとしたのはスリムさを実現

するため。赤く塗られた歯車がEクラッチが制御する側、青はMT操作時に作動する部

分だ。

 

作動部はクランクケース右側に装着。今はまだ後付け感があるが、Eクラッチありきの設計が始まればさらにコンパクトになるだろう。写真はCB650R。

 

跨った時は、やはりいくらか右ヒザが開く感覚はある。このため若干足着きも犠牲になるかもしれない。ただライディング中はニーグリップなどに干渉することはなかった。

 

Eクラッチ仕様ではないCBはクイックシフターもオプションだが、Eクラッチ仕様ではクイックシフターと協働してシフトチェンジを行うため標準装備だ。

 

クラッチを手動で握ると即座にMTに切り替わるが、AT復帰した際にはメーター右側のインジケーター(緑のAマーク)で知らせてくれる。これが点灯している間は発進・停止は完全にオートマ任せだ。

 

制作・協力

■試乗・文:ノア セレン ■撮影:渕本智信 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン

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