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【Honda X-ADV】簡単さと攻略する楽しさも併せ持つスクーターの皮を被ったスゴイバイク
- 中古バイクカタログ
- 2023.12.21
今回は【Honda X-ADV】を紹介します!
2代目である現行X-ADV。エッジを効かせたスタイルに、大径タイヤとちょっと長めのサスペンションストロークを持ち、ブロックパターンのトレッドを持つタイヤをスポークホイールに履く。その外観衣装は疑いの余地なくアドベンチャーバイクのそれ。パワフルかつイージーでもあるX-ADV。そのマルチパーパス度を検証してみた。
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X-ADVの特徴
ホンダの十八番、DCT技術。マニュアルトランスミッションと同じ6速ギアを持ち、そのクラッチ操作と変速操作を電子的に制御。ライダーはAT車のようにアクセルを捻るだけで走行を可能にした技術パッケージだ。
それでいてCVTの無段変速とは明らかに異なる走行フィーリング。それは自動であれ変速するメカニズムを持っているからだ。アクセル開度が少なければ早めにシフトアップをし、急ぐなら高い回転まで加速してから次のギアに変速する。アクセルでライダーの意思をくみ取ってくれるDCTの制御マップは、人の感覚精度と極めて近い。通常のバイクは発進、停止、シフトアップ&ダウンを注意深く行う必要がある。それが上手くいかないとバイクの走りがギクシャクするからだ。DCTの場合、千分の一秒単位で制御するメカによりギア抜けもない。エンストも基本ナシ。シフトアップ/ダウンの切り替えスピードは駆動力の途切れが極めて少ないのもDCT最大の魅力。
そんなメカを搭載しただけに、大きく重たい車重にもかかわらずX-ADVは不思議なほどライダーとのフィット感が高いのだ。
270度位相クランクを持つ750ccの直列2気筒エンジンはNC750Xなどのユニットと同系で、低い回転からトルクが厚く鼓動感にも富むのが特徴。2022年に発売された現行型のエンジンは、軽量化したピストンの採用や吸排気レイアウトの見直しにより、以前のモデルにも増して軽々とエンジンが回るようになった。また、4~6速のミッションレシオを見直し、走りのリズムの良さと燃費性能向上も図られている。
その出力はチェーンドライブで後輪へと伝えられるX-ADV。車体の骨格はスチールフレームが存在し、フロントに17インチ(リアは15インチ)という大径タイヤを履くことでアドベンチャーバイク的スタイルを提示する。さあ、X-ADVで走り出そう。
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試乗インプレッション
エンジンを始動後、シフトスイッチでDを選択。あとはアクセルをじわっと開けるだけで発進する。フィーリングはまさにMTバイク。CVTとは全く違った世界がある。もちろん、アクセルの開度と捻る速度によって加速度の異なるダッシュを引き出すことも簡単。ババババ、と歯切れの良い排気音は快感。動き出すと2200mmという長い車体や236kgという車重を意識するコトがなくなった。市街地でも長めに取られたサスペンションのストロークもあって、路面のデコボコを気にする必要はない。雲の絨毯、とまではいかないが、減衰圧調整を備える前後のサスを、好みの動きにすることも可能だろう。
新型になってバイワイヤ式のスロットルを採用したことで、ライディングモードの選択でさらに解りやすいエンジン設定を楽しむことができる。スポーツ、グラベル、スタンダード、レイン、ユーザーと5つの選択肢がまず用意され、パワーカーブ、トラクションコントロール(ホンダではセレクタブルトルクコントロールと呼称するシステム)、エンジンブレーキコントロール、シフトタイミング、ABSの介入タイミングなどが変化する。パワー特性はハイ、ミドル、ローの3つ、トラコンの介入度は、低い、中間、高い、そしてユーザーモードではオフにする選択も可能。エンジンブレーキの効き具合もハイ、ミドル、ロー3種類、シフトスケジュールも5タイプが用意されグラベルモードではアフリカツインでも搭載されるクラッチ制御をグラベル仕様にしたものまで用意されている。ABSは介入度がハイ、ローの2種類がある。
それぞれのモードはキャラクターがけっこう解りやすく変位する。スポーツは低いギアで引っ張り、アクセル操作で加速、減速(エンジンブレーキ)を引き出しやすい。その分、車体に前後のピッチングがでないよう右手のシビアさも要求される。スタンダードでも充分なほどスポーティーな一体感があるスポーツバイク的な走りを楽しめる。レインモードは雨の日を想定した穏やかなパワーデリバリー、エンジンブレーキとなり、個人的にはこのモードで低い回転でシフトアップ、鼓動感ある加速を楽しみつつ、穏やかなエンジンブレーキでアクセルオフでも転がってゆく感じが好みだ。スクーター的なライディングフォームながら、やや広めのハンドルバーにより、アップライトでありながら、ちょっと前傾した姿勢を取りやすいという一体感がある。
ブレーキの操作性もX-ADVの性格に合ったものだと思えた。ハンドルバーに装着された前後ブレーキは鋭くはないものの、制動力は充分。結果的に市街地は勿論ツーリングシーンでも自信をもって走ることができる。驚いたのはワインディングで素早くリーンしてみると旋回性を強めながら思い描いたラインをトレースしたことだ。トルクフルなエンジンが見せるダッシュ力はここでも「ただ者」ではない。旋回性に加えてその加速で、酔えるレベルで峠道を切り取ってゆく。セパハンのスポーツバイクのようにはいかないが、ネイキッドモデルとは対等に渡り合えるパフォーマンスではないだろうか。
林道にも入ってみた。最初は様子を探ったものの、その安定感、安心感が高いレベルにある。ABSとトラコンの設定もそうした安心感重視のもので、「滑るかも」をしっかりとコントロールしてくれる。前後のサスペンションもオフ車には及ばないがこの巨体をしっかりと受け止め暴れさせない。意外と林道ランナーとしての素質を持つことを確認できた。X-ADV。名が示す通りどんな場面でも楽しめるバイクだったのだ。
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車両詳細
Honda X-ADV主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒OHC 4バルブ ■総排気量:745cm3 ■ボア×ストローク:77.0×80.0mm ■圧縮比:10.7 ■最高出力:43kW(58PS)/6,750rpm ■最大トルク:69N・m(7.0kgf・m)/4,750rpm ■全長×全幅×全高:2200×940×1340mm ■軸間距離:1580mm ■シート高:790mm ■車両重量:236kg ■燃料タンク容量:13L ■変速機:電子式6段変速(DCT) ■タイヤ(前・後):120/70R17・160/60R15 ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式シングルディスク ■車体色:マットバリスティックブラックメタリック、グランプリレッド、パールディープマッドグレー■メーカー希望小売価格(税込):1,320,000円
フラットダート走行を楽しめる「GRAVEL」モードも設定されているが、今回はそこまで攻めた走りはしていない。それでも林道ランナーとしての素質を持つことを確認できた。
ライディングポジションはビッグスクーターと同様ながら、ハンドルバーの位置、シートの着座位置からオフ車的にちょっとタイトなライディング環境だと思える。シート高は高めに感じるが足着き感そのものは悪くない。
右のスイッチボックスにはシフターとAT/MTの切り替えスイッチ、パーキングブレーキのレバーがある。左にはモード、ファンクション、選択キーの他、DCTのシフトアップ、ダウンのパドルも装備する。
ウインドスクリーンがフォルツァのように電動で可動できれば使い勝手はさらに上がるはず。現状は停止時にしか動かせない。
メーターのグラフィックは複数用意され、カラーTFTモニターは様々な機能表示する。ライディングモードの制御パラメータも表示。
メインスイッチは丸型のボタンを押すタイプ。オフは外側のダイヤルを回転させる。下のスイッチはシートの開閉、給油口のオープナー。
シート下には22Lのラゲッジボックスを装備。シートの開閉は本体スイッチ部分で行える他、リモコンキーからも操作が可能。
φ41mm倒立Fフォークは減衰圧調整機構付き。ホイールはスポークながらチューブレスタイプ。ラジアルマウントキャリパーを装備。
フットボードは前後に長いが幅は広くはない。タンデムステップは折りたたみ式。足をまっすぐ地面に下ろせるようデザインされている。
リンク付きモノサス方式のリアサスペンション。アルミ鋳造の長いスイングアームを持つ。リアタイヤは15インチと小径で160幅。
ヘッドライトを含めテールランプ、ウインカー等はオールLED。タンデムグリップはリアシートの上面よりやや低めにセットしている。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:増井貴光 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン