他カテゴリ記事を絞り込んで探す
【KAWASAKI KLX230 S】シート高が低くなり 走る楽しさがグンと広がった。
- 中古バイクカタログ
- 2022.07.15
今回は「KAWASAKI KLX230 S」をご紹介します!
カワサキKLX230 Sは、これまであったKLX230のシート高885mm から830mmと55mmも低くなった。強く望んでいた人は多いはずだ。
これはKLX230から、フレーム、シート、燃料タンクなど基本を変更せずに、前後のサスペンションだけで実現したもの。ホイールトラベルがフロント220mm→158mm、リア223mm→168mmと短くなり、最低地上高が265mmから210mmと低くなった。
オフロード走行だけにこだわった競技専用車両とは違い、公道が走れるデュアルパーパスモデルは、混雑した街中から、ツーリングなど、使い方のシチュエーションの幅が広くなる。
そしてライダーもオフロードマニアだけに限らず、ベテランからビギナーまで幅が広い。だから足着きが良くなったことはとても大きなメリットであり、登場に拍手をしたいくらいだ。
【目次】
1. 試乗インプレッション
2. 車両詳細
-
試乗インプレッション
シート高が低くなったことによって走りがどう変わったのかが気になるところ。2019年に発売されたKLX230に合わせて新開発された空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブエンジンは、基本的にそのまま。最大出力、最大トルク、6段の変速比など変化はない。クセがなく、スロットルワークに対するレスポンスが気持ちよく軽快に高回転まで回りきる。不足なく進ませるトルクがありながら、低回転域でもギクシャクさせない乗りやすさ。トコトコと歩くように進むのから、ビュンビュン回して飛ばしても気持ちいいエンジン。バランサーシャフトが入っているので単気筒でも振動が少なくスムーズなフィーリング。排気量は232 ccなのだから、すごい加速にはならないが、日常的な使い方でもどかしく感じさせない十分な速さがある。
舗装路で走り出してすぐに思ったのは、しなやかな乗り心地を失っていないこと。前後の足を短くしたことにより重心が下がったことと、サスペンションの姿勢変化がより小さくなっており、操作に対するバイクの動きがよりダイレクトになった。コーナー進入の切れ味が増して、S字を切り返すときの荷重抜重で、前後のサスペンションが伸びて縮んでの反応が良い。リーンして旋回しているときの安定感も増している。ちなみに標準タイヤは変わっていない。特別な操作や乗り方は必要とせず軽快で自由自在な走りが楽しめる。
Uターンは足が届きやすくなったことで、ハンドルフルロックで不安定になっても足をついて支えられる。これで得意じゃなくてもやりやすく、心理的にも余裕。当然、それはオフロードでも同じ。
シングルトラックの狭いダートに入って、来た道を戻るときでも、左右45°と大きく切れるハンドルと、足で支えられることで、停止して2回も切り返せば180°向きを変えられる。穴や石や斜面などで足場が悪いならなおさら助かる。上手な人なら法面を使ったり、アクセルターン、トライアル風に片足着きフローティングターンとか技があるが、誰でもできるわけじゃない。難所で積極的にスロットルを開けていけなくても、ゆっくり足を着きながら行けるのはオフロード初心者には強い味方。
凸凹やうねりが大きいところを高めの速度で通り抜けようとすると、サスペンションのストロークが短くなったことを実感するのは確かだ。ただ前後とも初期からアタリが柔らかく突っ張り感がないので、速度を控えめにいけば大きく振られることなく、安定して走れる。車体の軽さもあって唐突な動作になりにくく、コントロールが楽だ。逆にそうして走ったほうがゆったりと自然の景色を堪能できるし、突然の穴ぼこなどに気がついても時間的な余裕があり対処しやすい。
最低地上高が低くなっているけれど林道くらいで困ることはほぼない。BOSCHと共同開発したカワサキ初となるオフロード車向けABSは、ブレーキをかけだすとすぐに介入してこないから滑りやすいダードで目立った邪魔をしない。ABSを解除する機能がなく、リア単体だけでもそれがあるとうれしいけれど、マイナスポイントにならないくらいよく考えられた制御。
シートが低くなったことで、街から山まで走る楽しさが身近になった。KLX230Sが手に入れたのは、万人向けデュアルパーパースモデルとしてまっとうな進化だ。
-
車両詳細
インナーチューブ径37mmの正立フロントフォークを採用。ワイヤースポークホイールはオフロード車の定番である21インチ。アルミリムには、ビードストッパー用の穴もある(ゴムでフタをしている)。IRC GP-21/22タイヤも含めて基本的にKLX230と同じものだが、ホイールトラベルを158mmと220mmから短縮してローダウン化している。見た目で明らかに以前より蛇腹のフォークガード部分が短い。ブレーキローターはφ265mmで、ピンスライドの2ポッドキャリパーを装着。
90年代から2016年まであったKLX250は水冷エンジンでDOHC4バルブだった。新開発のこれは空冷SOHC2バルブで軽く、ヘッド周りがコンパクト。これによって動きの軽さを出せたとKLX230が登場した時に開発した人に聞いた。もちろん部品点数が減るからコストも下げられた。φ32mmスロットルボディのフューエルインジェクション。キックはなくセルだけの始動。フレームは高張力鋼を使ったペリメターフレーム(セミダブルクレードルという表現もできる)。
変速は6段。
ボトムリンク式のユニトラックを採用。リアのホイールトラベルは168mm。見た感じKLX230よりスイングアームのタレ各が浅い。18インチアルミリムのサイズは18×1.85。フロントと同じくリアにもビードストッパーを取り付けられる穴が設けられている。リアブレーキはφ220mmローター+1ポッドキャリパー。深い轍や障害物にチェーンが触れてもはずれにくいクローズタイプのチェーンガイドを標準装備。タンデムステップはボルトオンなので取り外せるが、右側はブレーキのマスターシリンダータンクを取り付けてあるので、それをどこかに移設しなければならない。
大きなヘッドライトがKLX230Sの特徴。これはLEDではなく60/55WのH4バルブ。ウインカーもバルブ式。ホイールがストロークする時にブレーキホースが動きの邪魔にならないよう、オフロード車らしくホースの長さに余裕があるのと、ホースガイドが付いている。
補強が溶接されたアップハンドルはスチール製のいわゆるミリバー。ハザードスイッチはない。モノクロ液晶メーターにタコメーター機能やギアポジション表示機能はない。スピード、オドメーター、デュアルトリップメーター、燃料計、時計などを表示する。試乗した機種はETCを取り付けてあったので、アンテナとインジケーターがメーターの左側にある。
シュラウドに隠れているけれど、スチール製燃料タンクは二重構造になっていて、下側はフレームの中に潜り込んでエンジンに近い。高さをおさえながら7.4Lの容量を確保。そして、シート座面から燃料タンクまでシームレスに面がつながりライダーが前後に動きやすくもなっている。KLX230よりシート高を55mm下げたが、シート形状も含めて変化はなさそう。キーロックができる独立したヘルメットホルダーがあり、その左側、サイドカバーの中にあるキーホールはカバー取り外し用。
■試乗・文:中村浩史
■写真:増井貴光
■協力:カワサキモータースジャパン