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【Kawasaki NINJA e-1】カワサキ初の電動はスポーツバイク  その意義は大きい

  • 中古バイクカタログ
  • 2025.01.24

今回はKawasaki 初の電動バイク【NINJA e-1】をご紹介します!

実用車としてスクーター形状の電動バイクは国産でもチラホラ出てきてはいたが、現在勢いに乗るカワサキは初の電動バイクをスポーツバイクのカタチで提案した。動力的にはまだまだ発展途上と感じたが、スポーツバイクとしてスタートを切った独自性をまずは歓迎したい。

 

  • Kawasaki NINJA e-1 /Z e-1

 本誌をご覧の販売店の皆さんで、電動バイクに関わっているショップはどれだけあるのだろう。電動バイクと言っても、多数の新興メーカーを含めれば、意外と何らかの形で電動のモビリティに関わっていて、かつ既にその魅力や難しさに気付き、そしてそれぞれで対応策や各々の付き合い方を見出しているショップもあるだろうし、反対に全く関わっていないショップもあると思う。

 

 電動の乗り物は、四輪の世界では珍しくはなくなったものの、しかし一方でテスラの盛り上がりはひと段落し、「いやいや、完全なる電動はちょっと難しいのではないか。ハイブリッドの方が現実的ではないか」といった論調も目立ち始めている昨今である。では、バイクはどうかというと、ホンダなど一部で業務用のリース販売をしていて、都市部では電動のスクーターが郵便配達をしているのを見ることもある。しかしそれとてまだまだ一般的と言えるほどではないだろう。郵便局職員から聞けた話では、バッテリーが劣化してくるとお昼休みの間だけでもちょっと追充電が必要になってくる、といったこともあるそうだ。

 

 さてそんな中、実用車/業務用車としてではなく、スポーツバイクとしての完全な電動車の国産第一号が発売された。カワサキのNINJAe-1/Z e-1である。区分はピンクナンバーの原付二種。パワーは12馬力と、このクラスの一般的な数値ながら、トルクは400cc並みの40N・mを0-1600rpmで発揮する。それだけを見ると走りに期待するが、一方で航続距離は約55kmと限定的で、また充電は搭載される2つのバッテリーを完全に空の状態から満充電までしようとすると7時間強の時間がかかると知ると、まだ電動モビリティは発展途上なのかな、という気にもなる数値である。バッテリーを車体から外さずにケーブルを直接車体に接続することもできるのだが、この際タンデムシート部が開けっ放しになること、また充電器が届く範囲に電源が必要なことなど考えると、安心して充電しておくにはガレージが必要というイメージ。こういった部分でもこれまでのエンジン車とは違ったアプローチが必要なのは明らかだ。

 一方、車体の方はしっかりとスポーツバイクである。φ41mmのフロントフォークを持つフロント周り、インホイールモーターなどではなく一般的なバイクと変わらずにチェーン駆動されるリア周り、どこにも違和感のないポジションなど、印象としてはあのシングルスポーツ、ニンジャ250SLのようなスリムさとスポーティさ、及び手の内感がそこにあった。電動車と言えばスクーター形状が多い中、カワサキ初の電動車をこのスポーツバイクの車体で出したのは良かったと思う。

 

 走り出すとその車体の良さは予想通りのものだ。タイヤが実績のあるIRC製RX01ということもあってか、とても接地感が高く安心感のあるハンドリング。これなら初心者が乗ってもすぐに自信を持って人車一体感を楽しめるはず。かといってハンドリングが緩慢だとかそういったことはなく、経験者がスポーツマインドで乗ってもしっかりと応えてくれる。ブレーキはとても良く効き、オートマではあるものの各部の操作系も今まで親しんできたエンジン式のバイクと同じで混乱することがない。車体で言えば本当に上手に、違和感なくエンジンから電動にスライドさせているなという印象だ。これにはきっと重たいバッテリーを通常のタンク位置に入れて前輪荷重を稼ぐだとか、あるいは重たいモーターをピボット近くの低い位置に配置して全体を低重心とするだとか、電動ならではの各部品をどう配置すれば違和感のないハンドリングを作り出せるかという試行錯誤がされたのではないか

と推測する。そんな意味でもスポーツバイクとしてコレが出た意義は大きい。

 

 しかし動力的な視点で言えば、正直まだまだではないかという感覚はぬぐえない。パワーそのものは125ccクラスと考えれば不足はないし、右手親指操作の「eブースト」機能を使えば15秒間だけパワーが増し、追い越し加速時や登坂時には重宝する。しかしトルク値が400cc並みとはいえ「速い」と感じさせる場面は特になく、そして55kmという航続距離はやはりネックと感じてしまった。ちょっと出かけて、ぐるっと回って帰ってくるという気軽なショートトリップでも意外や55kmぐらいは走ってしまっているのだ。期待していたよりも早く電量計は減っていき、最後は無事に帰りつけるか不安に感じることすらあり、せっかくのスポーツ心に水を注してしまったのだった。

 

 航続距離と充電時間、加えて販売価格的にもまだ課題は残っていると実感した試乗だが、一方でクリーンでサイレントというのは魅力だろう。ガソリンやオイルの匂いはしないため、例えば玄関の中に入れて置くといったこともできるだろうし、早朝に出かけるといったことについても周囲に対して気兼ねはない。加えて、初心者にとっては音や匂いがしないというのは心理的にハードルを下げてくれるような気もする。音が大きく、熱を発しながら排気ガスをまき散らす……というのは、次世代ライダーにとってはもしかしたら野蛮に感じる部分であるかもしれない。そんなことも連想させてくれた、新しい電動スポーツバイク、e-1であった。

 直接的に一般の販売店に、このe-1が中古車として入ってくるとすれば、それはまだ先のことだろう。しかし今回の試乗で、未来は着実に使づいてきているとも感じた。

 

  • detail

押している時はわずかにモーターのフリクションが感じられるため、「ウォークモード」を使いたい。歩行程度の速度で進んでくれる。しかし法律的にはグレーゾーン。あくまでガレージの出し入れなどで使える機能で、歩道や横断歩道で使っては問題が起きそうだ。

 

兄弟モデルでネイキッドスタイルのZ e-1。

 

サイズ感は125ccクラスのため足着きは良好で、ポジションもコンパクト。※充電方法は3種類ある。①取り外したバッテリーを直接充電器と接続して充電。②取り外したバッテリーを充電ドックに接続して充電。③バッテリーを車体に装着した状態で充電。※走行中にスロットルを戻すことで、運動エネルギーがバッテリーに蓄えられる回生システムを搭載し、航続距離の延長に貢献する。

 

φ41mmのフロントフォークと定番IRCタイヤで素晴らしい接地感。確かなスポーツハンドリングを提供。

 

インホイールモーターとせず、駆動は一般的なチェーン。エンジン音がしないだけにチェーンの音が気になった。

 

交流同期電動機という種類のモーターはピボット部に搭載。ハンドリングはとても自然だ。

 

通常のタンク位置に収まるバッテリーは11.5kgのものが二つ。取り出して運ぶのはそれなりに重労働となる。

 

バッテリーを取り出さずに直接充電する際はタンデムシート下から。ガレージ内での充電が理想だろう。

 

動力用とは別に灯火類用のバッテリーも搭載。電欠になってもハザードなどは使えるため安心だ。

 

手元のスイッチ類は特別なものとせず、慣れ親しんだ形状。eブーストは15秒間使用可能で追い越し加速に重宝。

走行モードはECOとROAD。ECOは原付一種程度の動力性能。いずれのモードでもeブーストは使用可能。

 

  • Kawasaki NINJA e-1 /Z e-1主要諸元

■モーター種類:交流同期電動機 ■定格出力:0.98kW ■最高出力:9.0kW(12PS)/2600-4000rpm ■最大トルク:40N・m(4.1kgf-m)/0-1600rpm ■走行モード:ROAD/ECO ■バッテリー:リチウムイオンバッテリー×2 ■全長×全幅×全高:1980×685【730】×1105【1035】mm ■軸間距離:1370mm■シート高:785mm ■車両重量:140【135】kg(バッテリー2個含む)■変速機形式:オートマチック ■タイヤ(前・後):100/80-17・130/70-17 ■ブレーキ(前・後):油圧式ディスク・油圧式ディスク ■車体色:メタリックブライトシルバー×メタリックマットライムグリーン ■メーカー希望小売価格(消費税込み):1,067,000【1,012,000】円※【】内はZ e-1※バッテリー充電器(38,610円税込)、充電ドック(38,759円税込)、充電アダプター(19,305円税込)はいずれも付属しておらず別途購入が必要。

 

制作・協力

■試乗・文:ノア セレン 

■撮影:松川 忍 

■協力:カワサキモータース 

■ウエア協力:アライヘルメット、アルパインスターズ

 

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