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【KTM 1390 SUPER DUKE R EVO】KTMストリートモデル頂点の更なる進化 パワー、ハンドリング……全身が最恐に!
- 中古バイクカタログ
- 2024.04.16
今回は【KTM 1390 SUPER DUKE R EVO】を紹介します!
KTMのデュークシリーズの頂点に立つスーパーデュークがモデルチェンジを受けた。エンジン排気量を上げ、吸排気系もリファイン、ラムエア効果を狙った吸入経路も搭載。スポーツネイキッドとして希有な存在である大排気量Vツインエンジンがもたらすめくるめくパワフルさをアルメリアサーキットで体験した。
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KTM 1390 SUPER DUKE R EVOの特徴
今年2024年はKTMがデュークをリリースしてから30年目となる。エンデューロマシン用の水冷4ストエンジンをベースに、カウンターバランサーを入れ排気量はアップした609ccの通称LC4エンジンをセミダブルクレードルフレームに搭載。当時人気だったモタードバイクのようでもありながら、オフ車に前後17インチホイールやダウンフェンダー、特徴的なフロントフェイスでストリート用の個性を与えられていた。
2005年には990スーパーデュークが登場する。ダカールラリー用に造られた水冷Vツインエンジンをベースに999ccへと拡大し、トレリスフレームに搭載したデューク上級モデルとして登場する。KTMにとっては大排気量Vツインロードスポーツはこれが最初。ドゥカティモンスターが築いたストリートファイターセグメントに向けたバイクだ。その成り立ちは、スーパースポーツからフェアリングを外し、クリップオンのハンドルバーをアップライトなバーハンドルに変えて仕立てたスポーツネイキッド、と言える。
当時からそのプロモーションビデオはストリートスタント的で、アスファルト上でパワースライド、ウイリー、ブレーキターンなど何でもあれのライディングで市街地を駆け抜けるそれは話題になった。アジリティーの高さ、ハイパワー、個性的な外観を合わせたパッケージはどのデュークシリーズにも注がれる伝統だ。
ここに紹介する2024年型1390スーパーデュークRエヴォもその伝統を守ったモデルである。このモデルは先代1290スーパーデュークR EVOから正常進化版と言えるもの。エンジンはピストン径を2mm拡大して先代の1301ccから1350ccへと増強。最高出力は10PSアップの190PSへ、それを先代よりも500rpm高い10,000rpmで発揮する。最大トルクは5N・m増加した145N・m/8,000rpm(発生回転数は同じ)となる。
吸気系レイアウトは新たに走行風圧を使いラム圧過給を活用するレイアウトを取り入れた。燃料タンクの内側にある吸気ボックスの形状などもリファイン。ライディングに集中できる外観としながら燃料搭載量を1.5リッター増加させ、航続距離も伸ばしている。
クロームモリブデン鋼を使ったトレリスフレームは一部レイアウトを変更。リアホイールを片側で支えるスイングアームはスーパーデュークらしいものとして引き継がれた。シャーシ周りでは採用されている電子制御セミアクティブサスペンションをアップデイト。サスペンションの制御も新生代となった。これは減衰圧をコントロールするバルブに電子制御マグネティックバルブを用いることで、コンフォートよりのセットからサーキットでのハードなライディングに耐える仕様まで対応幅と設定の細かさが特徴となる。サスペンション用のECUを搭載することでその制御速度も格段に上げているのだ。
また、オプションでサスペンションモードプロを投入すればセッティング幅をさらに細分化して選択が可能になる。例えば、フロントフォークは圧側/伸び側、それぞれ20段階で減衰圧を調整可能、リアショックの圧側はストロークスピードの高速側/低速側を加えて20段階の調整が可能。サスペンションプロトラックでは、リアタイヤがスライドしたときの減衰圧を、ライダーが望むスライド量に合わせて調整が可能になるほか、コーナリング時、加速時、減速時と場面に分けた調整が出来るのだ。これらは5インチのカラーTFTモニターと左スイッチからビジュアル的に出来るのも特徴だ。
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試乗インプレッション
その進化を確かめるための舞台は、スペイン南部にあるアルメリアサーキット。緩やかな丘陵地にあるこのサーキットは、丘の向こうにコースが消えた先で曲がっていたり、フルバンクのロングコーナーや、複合で奥がきつくなるコーナーなど手強さが印象的なコースなのだ。
最初の印象は足周りのしっとり感。前後のピッチングを感じさせず、車体姿勢をフラットに感じさせるかのよう走り出す。エンジンは低回転からすでに力強い。加速をアクセル開度一つで柔らかくも激しくも簡単に引き出せる。剛力だが凶暴ではない。開け方を間違えなければ猛烈な加速を楽しむコトができる。4,000rpmあたりからどのギアでも豪快な推力が楽しめる。同時に、あえてヘアピンやシケインのような場所も3速で流すように通過しても不足ない加速をする。
エンジンの特性は回転を上げるほど、アクセル開度の合わせ込みで掴みやすいパワー特性だ。ミシュランパワーGPが持つグリップ力、ハンドリング特性もマッチしている。安定感を持つ軽快さ、それが特徴だ。旋回からの立ち上がりでも嫌な滑り方(とうより動き方)をしない。減速時の足周りとのバランスも絶妙。フロントフォークのインナーチューブについているOリング式のストロークセンサーがパドックに戻るとフルストロークしているものの、そのストロークスピードが緩やかなこと、減衰力に余裕があること、リアが浮き上がるような印象を見せず接地感が残り安定して減速からリーンに入れることなどから不安なく攻め続けられたのだ。
数々のセッティングパラメータを、インフォテイメントを駆使して変更するのがこのバイク最大の付加価値であることは間違いない。ただ、それが今回走ったトラックモードに入れておけば、どこにも不満が湧いてこない。むしろ、このバイクで初めて走行した難所続きに感じるアルメリアサーキットを、1本目の走行枠が終わる頃には楽しめだせたこと、これがこのバイクへの最大の賛辞となると思う。とても次元の高いバイクなのだ。
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車両詳細
KTM 1390 SUPER DUKE R EVO 主要諸元
■エンジン種類:水・油冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:1350cm3 ■ボア×ストローク:110×71mm ■圧縮比:-■最高出力:140kW(190PS)/10,000rpm ■最大トルク:145N・m/8,000rpm ■軸間距離:1,491mm±15mm■シート高:834mm ■車両重量:212kg ■燃料タンク容量:17.5L ■変速機形式:6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17・200/55ZR17 ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式ディスク■車体色:ブラック/オレンジ ■メーカー希望小売価格(消費税込み):2,699,000円
φ320mmのブレーキディスクとモノブロック4ピストンキャリパーを組み合わせるフロントブレーキ。電子制御セミアクティブサスの特徴はアウターチューブにハマるブルーのリング。1390にはエアロウイングレットも採用されている。
燃料タンク内側にあるエアクリーナーボックスが大型化。その吸入口を前方に据えているのも新しい。エアボックス拡大により左右のフレームを連結するチューブの位置が変更されている。片持ちスイングアームで後輪全体が見える。
1000cc以上のスポーツバイクで減少が続くVツインエンジン。75度のシリンダー挟み角は最初のLC8から続く伝統の様式。
新世代デュークシリーズを印象付けるヘッドライト。外郭がDRL。中央に縦二灯のLED集光レンズタイプが備わる。
メーターは5インチTFTカラーモニターを採用。ブレーキ、クラッチのマスターシリンダーもアップデイトされている。
ハンドルバークランプの取り付け位置を二箇所設けたトップブリッジ。左にスプリング、右に電子制御ダンパーを装備することで重量増加も抑えている。
WP製APEX SATリアサス。オプションのサスペンションモードプロを選択すれば、数多くの設定を幅広く好みに合わせ込むことが出来るのが特徴。
■試乗・文:松井 勉 ■写真:KTM ■協力:KTM Japan