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まだまだ「SR文化」は続くだろう

  • 中古バイクカタログ
  • 2022.08.12

今回はヤマハ・SRを紹介します!

SRのファイナルエディションが発売され、40年以上も続いた超ロングライフモデルが(とりあえずは)歴史に幕を下ろした。良いものは変えなくて良い、変える必要がないのなら変えなくていいじゃないか、と、言うのは簡単だが、本当にほぼ変わらずに売られ続けたモデルは他にない。新車では買えなくなったが、SRはまだまだ走り続ける。

 

【目次】

1.オフ車をリメイク、という出発点

2.ヤマハ的牧歌フィーリング

3.車両詳細

 

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  • オフ車をリメイク、という出発点

SRの歴史については語りつくされているが、これだけのロングセラー商品となったのはその出発点が「オフ車ベースであった」ことが効いているのではないかと思う。オフロード車は大抵トルクフルなシングルを搭載し、軽量でパンチ力があり扱いやすいもの。その代わりに背が高くて足が着きにくかったり、シートが細く尻が痛かったり、オフロードタイヤが舗装路向けでなかったりする。しかしこれらマイナス要素をすべて見直せば、軽量でコンパクトで快適なオンロードモデルが出来上がる……それがSRだろう。

 

 乗りやすいだけでなく付き合いやすいバイクとなると「じゃあセローかな」などとなることも多い。そう、バイクは爆発的パフォーマンスよりも、軽くて扱いやすい方が良いじゃないか、と考える人は多いし、だからこそSRは一定の支持層が40年も存在し続けたのだろう。オフ車がベースというのが、一つのキモだったのだな、と今になって思う。

 

■紆余曲折と少しずつの進化

1978年の発売当初、SRはフロントがディスクブレーキで、19インチホイールだった。それが後にクラシカルイメージを追求しドラムブレーキ化&18インチ化。そして2001年には再びディスクブレーキに戻った。

2009年には様々な規制に対応する意味でインジェクション化も果たした。この時に始動性が大幅に向上したと言われたが、個人的にはそんなことはないと思う。キャブレター車でもちゃんとしていれば一発始動は難しくなかったし、インジェクションでも一発目の爆発をうまく起こせなければかけられないこともあった。一度エンジンがかかってしまえばそこからチョークと相談しながら暖気などする必要はなく回り続けてくれる、という意味では安心感は高まったインジェクション化だったが、「始動性が良くなった」というのは語弊があるだろう。

と、40年以上もの歴史があるバイクなのに(大まかに言えば)たったこれだけの変更事項なのである。本当にシーラカンス的な、変わらずずっと来たモデルである。

 

  • ヤマハ的牧歌フィーリング

とうとうファイナルエディションなわけだが、乗ればそれは43年前のSRとそう変わらない。各種規制などに対応してきたことなどから初期型のような荒々しさや、ビッグシングルから想像するような鼓動感のようなものは減ったかもしれないが、逆に上質になりルルル~と走るその様は魅力的だ。

 

回転を無理に上げても振動が増えるばかりで、それなりに加速はするものの目を見張るような性能は全くない。どんどんシフトアップし、低回転域でアクセルを大きめに開けるような乗り方が一番気持ちよいだろう。エンジンの鼓動がオブラートに優しく包まれているような、あのブルブル感は今の車種で言えばボルト的で、とてもヤマハらしい味付けだと思う。

 

ハンドルと着座位置の関係が極自然で、シート高も低くコンパクトな構成はそれだけで自信につながる。シートがフラットで、その後ろのテールセクションが上向いていないおかげで、タンデムライダー含めて乗り降りもとてもしやすくとにかくハードルが低い。タンデムしたり荷物を括り付けたりといったシティユース・ツーリングユースなどに幅広く応えてくれる汎用性もまたSRの魅力だろう。

 

試乗するとどんなバイクでもそのスポーツ性を確かめたくなってしまうものだが、SRについてはそんな気が起きないのも面白いところだ。「無理してもしょうがないヨ」という雰囲気が強すぎて、自然とノンビリ、周りの景色や世の流れを見ながら走らせてくれるのがSRだ。

 

■いつかまた会おう

ファイナルエディションが出て「もうSRがいなくなってしまう」と嘆いてしまいがちだが、いやいや、43年も作られてきたのだから中古車はまだまだ溢れている。新車でこそ購入できなくなったが、まだむこう何十年とSRを楽しむことは可能であり、さらにSR文化のようなものも続いていくだろう。

 

 そしてやはり、いつかはこのSRが復活してくれるんじゃないか、という期待もある。同じ車体、同じエンジンとはいかないだろうが、同じコンセプトをもった、付き合いやすい普遍的なミドルクラスマシン……そんな、次の40年を担うようなモデルの登場を期待したい。その時はキックアームはもちろん着けたままで良いから、セルも付けて欲しい(熱望!)。

 

  • 車両詳細

XT500のエンジンがこんなに長く使われると誰が想像しただろうか。吸排気の変更や後のインジェクション化を果たしながら43年間もファンを獲得し続けた名機だ。ファイナルでは様々な補器類がいくらかルックスをスポイルしているが、そこまでしてでも延命してきたヤマハに拍手を送りたい。

 

初期のディスクからドラムになった時は退化としか思えず、再びディスクに戻った時にはホッとしたものだ。初期の頃の19インチもまたなかなか良いフィーリング。今、SRの神髄を楽しみたいなら19インチも検討してみて欲しい。

 

リアに関してはまさにシーラカンス。初期から変わらず一貫したドラムブレーキと18インチホイール。変える必要なし。変えない。

 

低いシート高と良好な足つき、タンデムライダーもスッと跨がれるハードルの低さ、これがSRの大きな魅力に思う。400ccとはいえ、実車は驚くほどコンパクトなのだ。

 

クラシカルな2連メーターは昔ながらの構成としつつ、文字のフォントなどは適度にアップデートされヤマハらしいスタイリッシュさを持つ。

 

キック始動のみにこだわったSR。キックする姿がカッコイイ、キック出掛けることに美学がある、といったことも解らなくもないが、複数車線の交差点の右折車線でエンストでもしようものなら命の危険もある。気軽なアイドリングストップができないのも難点。もしSRが復活するならセル装着は今の交通事情を鑑みて必至に思う。

 

機械的な部分でも魅力はあるが、SRの一番のアピールポイントはそのスタイリングじゃないだろうか。このスリムでクラシカルなタンクや昔ながらのフレーム構成・2本ショックなど、「ザ・オートバイのカタチ」である。各○○周年モデルなどで限定カラーなどがあるのも選ぶ楽しさだし、カスタムを始めたらいつまででも楽しめることだろう。

 

左スイッチボックスにはデコンプレバーが今もあり、コツを掴めばエンジン右側の上死点確認窓を見なくとも始動可能。

 

制作・協力

■試乗・文:ノア セレン ■撮影:赤松 孝 ■協力:YAMAHA

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