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【SUZUKI V-STROM 800DE】ダートを走る楽しみも大幅投入。 V-STROMの流れを変える800DE、登場。
- 中古バイクカタログ
- 2023.09.15
今回は【SUZUKI V-STROM 800DE】を紹介します!
昨秋EICMA=ミラノショーにて発表されたスズキの新型V-STROM800DEに海外試乗会で乗ることができた。長くオンロードサイドからアドベンチャーバイクにアプローチをしてきた同シリーズが、ここに来て1050、800と続けてDEというモデルをリリースしてきた。そして800DEは新たな行動半径をV-STROMシリーズに与えた記念碑的なモデルだった。
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スタイリング
気合いの入れ方が違うな。それは乗り始めてすぐに伝わってきた。チャンピオンイエローとブルーのコントラストは、どうみてもスズキのオフロードモデルを想起させる試乗車。Vストロームの歴史にあって、もっともダートロード成分が濃い目に感じさせるのがこの800DEだ。
試乗前夜に受けた開発趣旨などプロダクトのブリーフィングがあって乗る前にある程度イメージはついていたが、新しいエンジン、新しいフレーム、そして目的を持ったサスペンションとの合わせ込みは尋常ではない時間、意見が交錯したはずだ。それを丁寧に仕上げ、灰汁をとりスッキリとVストロームらしい味に仕上げつつ、まるですでに熟成された既存モデルのような乗り味にまで高めている。
例えば発進する時の低回転トルク。800ccという排気量から期待するとおり、厚みのある押し出し感でさらりとバイクを発進できた。これはローR P Mアシストという既存の大型Vストロームモデルにも採用されているものを搭載しているのだが、従来モデルのようにアイドリング回転数をボワンと上げることなくその役目を果たす。それだけに、エンジン特性によりラクラク発進ができたとしか感じないのだ。いや、事実そうなのかもしれない。
路地から出て小さく左折する場面でも、大柄な車体に思えて一体感がある曲がり方をする。そして2速で低い回転からクラッチを合わせてゆくような場面でも低速トルクの厚みは充分。現状の環境規制、ユーロ5相当となってやはり排気量の後ろ支えは強みだが、それ以上を感じさせるのだ。低速域で走る限りどこにもツッコみようがない。
21インチの前輪と17インチの後輪を合わせる800DE。そのDEの語源は、デュアル・エクスプローラーだという。20Lの燃料タンクを満タンにして230kgとなる800DEは、前後共に220mmのホイールストロークを持ち、Vストロームシリーズがこれまで築いてきたコミューターとしても使い勝手が良い、という部分はまるごと継承されているのがわかる。
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試乗インプレッション
試乗が行われたのはイタリアのサルディーニャ島。地中海に浮かぶその島の南部だ。山と海が海岸線で出会うかのように道路はアップダウンが続くワインディングであり、その道には時折夜露で路面が濡れている所がある。鉄フレームにエンジンを吊り下げるレイアウトを採る800DEでは、フレームのしなやかさと必要な剛性バランスを得た上でパイプ径を小さくできる手法を優先し、その素材が選ばれている。その分、ライダーがタンクを挟む膝のエリアなどスリムで、体重移動を駆使して走る場面でもスムーズな動きでバイクの存在感は極めて少ない。
ワインディングではステップのバンクセンサーが接地する領域まで、スムーズに素早くリーンすることが可能だ。ハンドリングにイヤな重みがなく自然な走りを見せ、その走りは気持ちが良い。前後のブレーキは片押しタイプのキャリパーを使うが制動力に不満はない。深いブレーキングを試みても長いストロークを持つフロントフォークが沈み込むものの、挙動変化のスピードが掴みやすくコントロールしやすい。
ここでも新型のエンジンはスバラシイ仕事をする。3000rpmから6000rpmあたりを保つようにギアを選択すれば、あとはアクセルで欲しいトルクを引き出し、加速を楽しむだけだ。アップ、ダウンともに作動するクイックシフターも備えるので、リズムを取りやすいし、スポーティーさを味わいたい気分はさらに盛り上がる。
アクティブ、ベイシック、コンフォートの頭文字をとってA、B、Cとある出力特性モードは、Cだと少しアクセルの開け口がマイルドになるが、ことさら回転上昇やパワー感を下げるものではなく、Aでもギンギン過ぎることがない。エンジン特性、車体特性ともマッチしたものだ。ライダー一人、空荷で走るにはBでも何の不満も感じなかった。
ワインディングが楽しい。これはアドベンチャーバイクにとって大切な要素で、高速道路の快適な巡航性も持ち合わせることでライダーは遠出へと誘われる。ロングツーリングに出たら、2日目より3日目から効果を発揮するだろう。
さてダートでの800DEだ。トラクションコントロールは3、2、1という舗装路向けと、完全にカットできるOFF、そして点火タイミングを遅らせるなどライディングとバイクの動きをよりダート用に合わせ込んだG(グラベル)というモードがある。最近のバイクのように慣性計測装置(IMU)を搭載することをせず、あくまでも車体、エンジン特性に加え、ライダーのスキルを合わせやすいように時間をかけて作り込んだのがこのトラクションコントロールのマップだ。
実際、ダート路ではI M U 非搭載というデメリットを感じさせなかった。慣性ドリフトからパワースライドへと移行させやすく、それでいてこれ以上は困る、という領域までは滑らない。その止め方がバツンとパワーを絞るのではなく、あくまでも自然につまんでくれるのだ。6軸IMUの恩恵こそ現代のアドベンチャーバイクの走り、と思っていた筆者にとって目からうろこが落ちるような思いだった。
例えばクルーズコントロールが非装着だったり、TFTカラーモニターがスマホとコネクティビティーを持たないなど装備面で「もうひと声!」と言いたい部分はある。今時兄弟のヒエラルキーでもあるまい。そんな小言を漏らす以外、全方位丁寧に造られた800DEは、ヒットを予感させる出来映えだったのである。
●V-STROM800DE 主要諸元(ヨーロッパ仕様)
■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:776cm3■ボア×ストローク:84.0mm×70.0mm ■最高出力:62kW/8500rpm ■最大トルク:78N.m/6800rpm ■変速機:6段リターン(クイックシフター標準装備)■全長×全幅×全高:2345×975×1310mm ■軸間距離:1570mm ■最低地上高:220mm ■シート高:855mm ■キャスター/トレール:28°/114mm ■タイヤ(前・後):90/90-21・150/70R17 ■燃料タンク容量:20L ■車両重量:230kg ■車体色:チャンピオンイエローNo.2、グラスマットメカニカルグレー、グラススパークルブラック ■メーカー希望小売価格(消費税込み):1,320,000円
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車両詳細
トラクションコントロールでGモード、エンジン
モードはAを選択。ABSはカットせずもっとも
介入度の少ない1でダートを走行した。パワー
を自然に受け入れ、テールスライドをフロント
タイヤがライダーの狙う方向に向かうまでは
ホイールスピンを許容してくれるのが特徴。
オプションのトップケース&サイドケースを装着した状態のまま、テストコースで最
高速付近まで安定感しているそう。
量産二輪車で初めてクランク軸に対し90度に一次バランサーを2軸配置した「スズ
キクロスバランサー」を採用する(イラストの黄色の部分)。これにより振動を抑えな
がら軽量・コンパクト化を実現した。
Vツインよりも前後長が短くコンパクトな新型直列2気筒エンジン。「スズキクロスバランサー」により前後長を短縮化させた。スイングアーム長を640mmとれたのもこのエンジンの恩恵が大きい。
灯火類はナンバー灯を除きLED光源を使う。ナックルガードも空力的にライダー保護に貢献し、高さを3段階調整できるスクリーンが写真の最下段状態でもプロテクト効果は高かった。
TFT5インチのカラーモニター。グラフィカルな回転計、速度、トリップ、オド、外気温、燃料、水温などを表示。トラクションコントロール、エンジンモード、ABSモードも表示。
減衰圧の圧側、伸び側、そしてイニシャルプリロードの調整が可能。そしてコンベンショナルな片押し2ピストンのキャリパーを備えるフロント回り。
シート高は855mmだがシート前端部分は細身で足着きは良好。オプションでは20mm低いローシート、30mm上げたハイシートの用意もされる。
後輪に17インチを採用。これは舗装路、未舗装路でのハンドリングバランスやアフターマーケットでのタイヤチョイスの多さを狙ってのこと。ただし、前後ともチューブ入りとなる。より強靱なリムが選択出来るのがその理由。
USB電源ソケットをヘッドライト脇に装備。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:スズキ ■協力:スズキ