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【YAMAHA MT-09 Y-AMT】ヤマハからギア付きオートマがデビュー! まずMT-09に搭載したその意図は?

  • 中古バイクカタログ
  • 2025.04.03

MT-09 Y-AMTのレポートが届きました!オートマバイクに注目が集まっています。

ホンダがEクラッチというフレッシュな話題を提供してくれたばかりだが、ヤマハはTMAXやFJR1300ASで長らくオートマスポーツを追求してきたメーカー。そのヤマハが新たなオートマ技術「Y-AMT」を提案してくれた。まずはサーキット試乗会レポートをお届けする。

  • 「Y-AMT(ワイエーエムティー)」とは

「Y-AMT(ワイエーエムティー)」というネーミングはホンダの「DCT」や「Eクラッチ」に比べるといくらか浸透しにくいかな? と思ったが、ヤマハとしては「なんとしてもMTというワードを入れたかった。クラッチを省略したラクチンなオートマではなくて、この機構はあくまでマニュアルトランスミッションを備える、スポーツモデルであるというアピールです」とのこと。

 ホンダのEクラッチに続きこのヤマハY-AMT、そしてBMWやKTMも含め、2024年はクラッチレスのマニュアルミッションバイクが多く登場する節目の年となった。各社各様のアプローチがある中で、ヤマハはクラッチレスであることのラクさではなく、スポーツの魅力を前面に押し出すべく初搭載車を活発な運動性で知られるMT-09としたのだ。

 簡単におさらいすると、Y-AMTはクラッチレバーとシフトペダルは無く、変速は左手の親指と人差し指でするマニュアルモードと、ギアチェンジもシステム任せとなるDモード(及びD+モード)が備わる。使い方としてはホンダのDCTとよく似ているが、DCTのようにデュアルクラッチを備えるわけではなく、クラッチ操作とシフト操作を担うアクチュエーターをそれぞれ備えてクラッチと変速を管理する。既存のエンジンに大きく手を加えることなく他機種にも搭載しやすいという意味では、ホンダEクラッチに近いかもしれない。

 スポーツ性をアピールしていても、クラッチ操作を省略したと聞くとやはりツーリングシーンや発進停止を繰り返す渋滞路での負担軽減が頭に浮かぶだろう。メインの試乗場面はサーキットだったが、区切られた低速走行エリアでスラロームやUターンを試すことができた。好印象だったのは、止まる寸前までクラッチが半クラッチ状態を維持してくれる特性だ。トルクフルなCP3エンジンと組み合わされているおかげもあるかもしれないが、極低速になってもクラッチが断続的に繋がったり切れたりせず、絶妙な一定の半クラッチを続けてくれるのだ。このおかげでUターンなどではフラつくことがないし、ハンドルをフルロックした状態でクルクルと旋回を続けても駆動のかかり方が安定していてコントロールしやすい。こういった極低速シチュエーションでもリアブレーキを上手に使えば上級者のマニュアルクラッチと変わらないコントロールができるように感じた。

 通常の発進停止もスムーズだ。ゆっくりとアクセルを開ければ唐突に繋がる感覚もなくスルリと発進できるし、ガバリ!と開ければ前輪を持ち上げる勢いですっ飛んでいく。ちなみに0-400mの参考タイムは10秒9である。ただこのテストシチュエーションはあくまで作られた環境。実際の交通社会や渋滞路での使い勝手は改めてテストしたい。

 

 本命のサーキット試乗に移ろう。ヤマハとしては変速も自動で行ってくれるDモード及びより元気なD+モードも試して欲しいとのことで、最初の数周は各Dモードで走行した。シフトチェンジの速さ及びスムーズさは素晴らしく、ペースアップすればアクセルの開けっぷりに応えるようにギア選択をしてくれる賢さを持ってはいるが、サーキット走行の特に減速についてはライダーの好みのエンジンブレーキの強さやタイミングがあるため、各Dモード中に左手親指でシフトダウン(それも可能だ)をするのが良いように思えた。各Dモードはワインディングでは良さそうだが、より突っ込んだスポーツ性を求めるサーキットならばやはりライダーが任意のギアを選べるマニュアルモードにしたい。

 マニュアルモードで走っているぶんには、上下両方向クイックシフターを備えるバイクとほぼ同じ操作感覚だ。ギアチェンジが左足から左手に移っただけで、0.1秒という瞬間的なシフト時間もクイックシフターと同じ。優位性を挙げるとすればシフトダウンもクラッチを滑らせながら繋げるためクイックシフターよりもスムーズに作動すること。そして電気的に確実に各ギアを送り込むため、シフトミス/ギア抜けの心配はないということか。

 左足でのシフトがないということは左バンク中でもギアチェンジができ、かつステップをつま先へと踏みかえる必要もないというのも一つのアピール。ただこの動作が省かれたからといって車体のホールドがよりしやすいという考えには、個人的にはそんなに賛同はしていない。少なくともサーキット走行においてはギアチェンジを足でしても指でしてもあまり変わらないような気はするし、その理論を追求するならば右足のブレーキペダルも手で操作する場所に移設するべきだ、という話になると思うのだ。ただこういった各種設定はオートマモデルがより広く出回り市場ニーズが見えてきたときに熟していくものだろうし、今回の印象もサーキットに限ったものであり公道ではまた違った印象になる可能性もあるため見守っていきたい。

 

 オートマと聞くとどうしても「ラク」というワードに結びつきやすく思うが、ヤマハはY-AMTのデビューにおいて「スポーツ」を強くアピールしてきた。筆者のようにマニュアルも苦にしないライダーでも「テストではY-AMT仕様の方がサーキットタイムも出ています」と言われてしまっては、オートマスポーツの未来にワクワクもしてしまうというもの。その点、ヤマハはオートマでのスポーツという新しい価値観を上手にアピールしてくれたと思う。今回の試乗はあくまでサーキットだけだったが、公道でのフィーリング、使い勝手、そしてスポーツ性にもワクワクがあることだろう。

 

  • YAMAHA MT-09 Y-AMT主要諸元

■エンジン種類:水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ ■総排気量:888cm3 ■ボア×ストローク:78.0×62.0mm ■圧縮比:11.5 ■最高出力:88kW(120PS)/10,000rpm ■最大トルク:93N・m(9.5kgf・m)/7,000rpm ■燃料供給方式:FI ■全長×全幅×全高:2,090×820×1,145mm ■軸間距離:1,430mm ■シート高:825mm ■車両重量:196kg ■燃料タンク容量:14L ■キャスター角:24°40' ■トレール:108mm ■変速機形式:6段リターン ■ブレーキ形式(前・後):油圧式ダブルディスク・油圧式ディスク ■タイヤサイズ(前・後):120/70ZR17・180/55ZR17 ■車体色:ブルーメタリック/マットダークグレーメタリック ■メーカー希望小売価格(税込):1,364,000円

 

  • detail

シフトが電気的に行われるため、ギア抜けなどのシフトミスの心配がないのと、シフトダウンのスムーズさはクイックシフター以上。またクイックシフターが基本的に苦手とする低回転時/低負荷時、あるいはアクセルがパーシャル時の変速でも、Y-AMTではシフトチェンジにクラッチも使うためこういった回転領域でのギアチェンジは格段にスムーズかつ確実性が高まっている。

 

ストリートに仕立てた低速コースも走ってみた。ハンドルフルロックでの定常円旋回はオートマが苦手としているが、リアブレーキとの併用で問題無くこなす。

スラロームは全く苦としないから、渋滞路でもストレスはないだろう。

ルックスは通常マニュアルクラッチ装着のMT-09と全くと言っていいほど同じで、クラッチレバーとシフトペダルがないだけだ。足着きも同様。オートマ機構がついてもエンジン張り出しなどが増えたということもない。

 

 

シフトチェンジはまさに一瞬! セルモーターの上に見えるモーターがシフトを担当し、右側に斜めについている方がクラッチを操作する。このコンパクトな構成を活かして今後はMT-07系のエンジンにも搭載していくようだ。

前傾角の深いMT-09エンジンの後方に上手に二つのアクチュエーターを収め、とてもコンパクトにオートマ化。車重は3kgの増加だ。ミッションはボトムニュートラルで、1速に入れたままエンジンを切れるため、坂道駐車も可能。

前後足周りや車体周りも全てSTD版と共通。ABSやトラコンの設定など電子制御系も変えていないという。

ヤマハは左側のスイッチボックスそのものを刷新したばかりだが、Y-AMT仕様では親指と人差し指で操作するシーソー式スイッチを新設。親指でシフトダウン、人差し指でシフトアップなのだが、人差し指でスイッチを前方に弾いてのシフトダウンも可能だ。

STDにはなく、SPに採用されているスマートキーを装備。価格はSTD(1,254,000円)とSP(1,441,000円)の間の1,364,000円に設定された。

5インチに大型化してとても見やすくなったTFTディスプレイ。

 

制作・協力

■試乗・文:ノア セレン 

■撮影:松川 忍 

■協力:YAMAHA

 

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