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【YAMAHA XSR900】XSRは振り子のように

  • 中古バイクカタログ
  • 2024.02.16

今回は【YAMAHA XSR900】を紹介します!

大ヒットモデルMT-09のバリエーションモデルとして展開されてきたXSR900。MT-09がモタードライクな個性的な乗り物だったのに対し、かつてのXSRはよりオーセンティックなネイキッドとしてやはり人気だった。しかし新型はまた個性強めの方向に舵を切ったようだ。

 

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  • 「個性」問題をどうするか

 かつて初代のMT-09が登場した時には、トライアンフから名作3気筒の「ストリートトリプル」が出ていて世界中で人気だった。これに対してMT-09は、同じ3気筒というエンジン形式のネイキッドを投入するだけでは弱い、と判断したのだろう。着座位置が前方にあり、前後サスが良く動くモタード的なMT-09をリリースし、ヒットとなっていった。

 しかしこの個性的な乗り物は、どちらかというと好きモノ向けの設定であり、MTシリーズ登場前夜に世の中を席巻していた、高い汎用性を持っていたビッグネイキッド勢とは真逆に振れていたとも言える。そしてMTの直感的面白さは認めつつも「もう少し普通に楽しみたい」という要望があったかなかったかは定かではないが、そんな潜在的ニーズに応えたのがXSRと言えるだろう。

 

 初代XSRは着座位置がより一般的なネイキッドに近い位置に改められ、前後サスペンションもモタード的なものではなくよりしっとりとしたロード向けとなっていた。結果として3気筒の個性的かつ魅力的でパワフルなエンジンはそのままに、より一般的に受け入れられやすいモデルとして登場した。かつてのRZをイメージさせるようなカラーリングも展開され、ルックス上は個性を確かに持っていたが、乗り味としてはMTに比べるとずいぶんと普通、あるいは一般的、もしくは乱暴な言葉で言えばマトモ? になっていたのだ。

 強い個性をアピールしたMT、そして逆に普通に戻ってきたXSR。ところが今回の新型XSRはまた「個性」の方向にバーンと振れた感覚なのだから面白い。

 

 

■ネイキッドなのか/旧車なのか/ドラッグマシンなのか!?

 個性的な方向に振れた、と感じる新型XSRは、何もルックスだけの話ではない。今回の撮影車のカラーではなく、イメージカラーのブルーは確かにかつてのヤマハのレーシングシーンを連想させるものだし、最近発表されたカウル付モデル「XSR900GP」はさらにそういったヘリテイジを感じさせる個性を放っている。しかし本当に個性的なのはむしろその乗り味の方なのだ。

 

 そのキモとなっているのはハンドルやシートの位置だろう。先代XSRは一般的なアップハンドルだったのに対し、新型はバーハンドルではあるもののその位置はかなり低めでしかもワイド。対するシングル風のシートはメインのクッション部が視覚的シート位置よりも後方に確保されているため、乗っていると自然と腰を引いたライディングポジションとなるのだ。

 これはカウル付モデルのバリエーション展開を見越しての設定かもしれないが、先代と比べるとかなりライダーの前傾角が強まり、かつ車体が大きく感じられる違いがある。MT-09よりも長いスイングアームを採用し、しっかりとバイクの前半部分に覆いかぶさるポジションをとることができることで、ウイリーの心配が少なくフル加速ができるようになった新型XSR。これで加速を楽しんでいるとまるでドラッグマシンかのようなのだ。これは今までのXSR、そしてMTシリーズにはなかった新しい個性だろう。

 

 また、コーナーを曲がろうと思うと後ろに引いた着座位置の関係で、MTよりも、そして先代のXSRにも増して、後輪にライダーの荷重が乗る印象があり、それは後輪を軸とした旧車的な操作感ももたらしている。意図的にシートの前の方に座って今日的な乗り方もできないわけではないが、ナチュラルにバイクに任せて走っていると、なんとも言えない「良き旧さ」をもったハンドリングに感じるのだった。

 

  • 888cc&120馬力──「速い」に磨きがかかる

 ルックスから「ヘリテイジ」感を楽しめ、走りの方は旧車風テイストとドラッグマシン的フル加速の両方を楽しめる新型XSR。その中心となっているのはやはり熟成を重ねた3気筒エンジンだ。かつての845cc/116馬力仕様も数値以上に本当に速かったが、この新型の888cc/120馬力仕様は輪をかけて速い。

4つあるパワーモードのフルパワー(1)を使おうものならどこにスッ飛んでいくかわからないほどで、アクセル操作は腫れ物に触るかのよう。サーキットでしか使えないモードにすら思える。モード2及び3でやっと普通に公道で走らせられるといった感じで、大排気量初心者や100馬力越えのバイクに慣れていない人はモード4からスタートすることを強くお薦めする。「ちょっとヤバいな」というぐらい速いのだ。

 

そんなに速いからこその、長いスイングアームと前傾ポジションなのだろう。MT-09の方はエキスパート向け、XSRはそこまでではないけれども「でもこの3気筒を楽しみたい!」というライダーでもこのエンジンのヤバさを感じやすい設定にしてくれたように思う。

しかし何度も言うようだが、ストリートでも幹線道路でも高速道路でも、とにかく本当に速いのである。ツインのようなパルス感はなく、逆に4気筒のような回転の上がり待ち/パワーバンドへの突入待ちといったこともなく、回転数問わずに3気筒らしい唸りを上げで猛然と加速するのだ。実際のパワーや加速力だけでなく、体感的なものを加味した場合、このエンジンは最強の「速さ」を持っているとすら思える。

 

 

■今もっとも「買い」な大型マシンかもしれない

 大排気量バイクに乗るのは趣味である場合がほとんどだろう。特に最近の大排気量車はとてもパワフルで個性的なものが多く、その代わりというわけではないが車両価格も高くなってきているし、燃費や消耗品といった部分を加味しても、実用車として乗れる機種は少ないと思う。

 そんな中でXSRは車両価格が125万4000円とライバル勢と比べてかなり割安なのがまずは魅力的だ。そして少なくとも国産では他にない3気筒エンジンは独自の魅力を確かに持っているだけではなく、前述したように性能面においても妥協はない。さらにルックスも個性的で、他のいわゆる「ネオレトロ」系とは違った独自の世界観も持っている。

 

 見てカッコ良く、乗って興奮でき、さらに比較的お手頃。試乗を回想しながらこの原稿を書いているだけで「これは買った方がいいのでは??」と思えてくるほど、ナイスバランスな一台なのだ。

 なお、最初に書いたようにこの新型XSRは振り子が「個性」側に大きく振れていると感じる。それこそが魅力でもあるわけだが、一方で先代XSRのことを思い出すと、むしろ正統派ネイキッドとしてまとまっていたアッチも魅力的だった。XSRブランドがどこに向かっていくのかはわからないが、いずれのモデルもそれぞれ面白い! と再認識した次第である。

 

  • 車両詳細

先代がかなりコンパクトな印象だったのに対し、新型はそれなりに存在感がある。ただ足を降ろすとちょうどステップとペダルの間に滑り込ますことができ足着き性は悪くない。また長身の筆者(185cm)でも窮屈に感じる場面もなかった。実際に走り出すとシートのクッション部がもう少し後方にあるため、前傾角は深くなるだろう。先代とはかなり違った印象であり、後継機というよりはバリエーションモデルといったイメージも強い。

 

先代でも十分速かったエンジンは排気量アップに伴い120馬力に届いた。ピークパワーで勝るモデルは他に多くあるが、常用域から強力なトルクがあふれる3気筒の感覚的速さには驚かされる。なお先代まではピボットの外側にスイングアームがついていたが、MT-09と共にモデルチェンジした際にスイングアームの外側にフレームがつく新型に。ピボット周りの剛性が高められ、これもまた初代のモタード感が薄らいでより一般的なロードモデルに感じさせる一因でもあるだろう。

 

フルアジャスタブルの倒立フォークと、軽量高剛性の「スピンフォージドホイール」。さらにブレーキはマスターシリンダーにブレンボ製を採用するなど非常にコントローラブル。クラシカルなルックスからはサーキットとの結びつきをすぐには連想しないかもしれないが、走りのポテンシャルは相当に高いため、サーキット含めて楽しみたいと思わせる。

 

MT-09系ではなく、トレーサー系の長めのスイングアームを採用していることで、ウイリーしそうになる感覚はかなり薄まって逆に積極的にアクセルを開けることができる。前傾姿勢が強めということもあって、フル加速時はドラッグマシン的な感覚が強い。タイヤはブリヂストンのS22を標準装着。

 

先代ではタヌキのしっぽのような、キュートな丸い排気口があったが、新型では排気口も下を向いた完全腹下構造となったサイレンサー。後続車に排気を浴びせないことや、また駐車時などに火傷の危険性が減るなど歓迎したい設定だ。ただ排気音はなかなか大きめで、早朝の住宅地などでは気を遣うかもしれない。

 

タンデムシート部がゼッケンプレートのように盛り上がっているためシングルシート風に見えるが、タンデムも可能な設定でしかもタンデムステップは非常にスマートに作り込まれていた。ただタンデムシート座面はミニマムで、快適な長距離タンデムは難しそうだ。ライダー側のシートはクッション部が後方に位置し、シートストッパーに尻が当たるぐらい腰を引いて乗るのが最も快適だ。

 

先代では車体のもつクラシカルなイメージを優先してか、ヘッドライトはハロゲンタイプでそれも魅力の一つに思えたが、新型ではLED化。

 

テールランプはシングルシート風シートの後ろに上手に隠されていて、点灯していないとその存在に気付きにくいほど。しかし点灯時の被視認性は高く安全性は高い。

 

バーハンドルながら低め&ワイドめの設定で、感覚としてはセパハン。バーエンドミラーも新しいトピックだが、これは後方確認時に視線の移動量が多いし、かつストリートでは幅が広く使いやすいとは言えない。ただ通常のミラー位置にも雌ネジが用意されているため、好みでミラーは替えても良いだろう。

 

視認性は良いものの、全体的なサイズ感がかなりミニマムなメーター。メインキーはタンク前方に位置し、ハンドルロックは左右どちらでもかけられたのは嬉しい所。ただハンドル切れ角そのものは大きくなく、Uターンは大回りになりがちだ。

 

先代ではウインカーとホーンのスイッチ位置が独特で、そういった日常的な操作がしにくいのには閉口したが、新型では通常のスイッチ位置に戻されていて安心した。ただ左のスイッチボックスはボタンが多くちょっとゴテゴテしちゃっている印象も。右側にある上下クルクルダイヤルは大変に使いやすく、メーター内の情報を自在に操ることができた。

 

制作・協力

■試乗・文:ノア セレン ■撮影:松川 忍 ■協力:YAMAHA

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