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【遠藤イヅルの名車カタログ】第104回 ヤマハ・XJ650LJ-TURBO
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- 2020.07.26
毎週お届けするイラストレーター遠藤イヅル氏による名車・珍車を紹介するコーナーです。 今週の名車は、世界初のキャブレター・ターボ・システムを搭載した「ヤマハ・XJ650LJ-TURBO」のご紹介です。
■ヤマハ・XJ650LJ-TURBO ■エンジン:空冷4ストロークDOHC並列4気筒
■最大出力:90ps/5,000 rpm ■最大トルク : 7.5kg-m/5,000 rpm
クルマでは、1980年代にハイパワー獲得のために普及したターボ。
現在では小排気量エンジンの高出力化と燃費向上などでも
その技術が用いられている。
一方、バイクの世界ではターボエンジン搭載車は少なく、
数えるほどしか存在しない。
量産モデル世界初のターボ・バイクは、
1981年登場の「ホンダCX500ターボ」だった。
GL500(海外名CX500)用のVツインをIHI製のターボ(50mm径)で武装し、
ノーマルエンジン比約2倍の82psというパワーを叩き出していた。
一方、ライバルのヤマハも、負けじと1982年に「XJ650LJターボ」を発売。
ターボ搭載バイクではホンダの後塵を拝してしまったヤマハだが、
そこはヤマハの意地、エンジンはホンダのVツインOHV 500ccに対して
直4DOHC650ccとした結果、7psほど出力を上回る。
ターボは三菱重工製三菱TC03-06Aで、40mm径の小型タービンを装着していた。
排気量比ではパワーアップ値が少ないが、これは
そもそもCX500ターボがかなりのハイパワーだったことと、
FJ650LJターボではあえて最高出力を抑え、
使い勝手の良いセッティングを目指したためだった。
しかもヤマハはコスト削減の意味もあって、
電子制御を採用しない「キャブレターターボ」を採用。
排気ガスをウエイストゲートからマフラーに回して
過剰なブースト圧を抑える安全機構や、
アンチノック対策も備えていた。
外観上の特徴を成すフルカウルは、
風洞実験によって導き出されたデザインによって
ライダーへの負担軽減を実現していた。
CX500ターボ同様、このモデルも日本国内では販売認可が下りなかったが、
日本国内にも導入されたXJ750Dとは、カラーリング以外の外観は
ほぼ同じ形状だった。
ターボにバイクは、同時期にカワサキやスズキも開発を行ったが
いずれも販売台数は少なかった。
これは、そもそも車体が軽くエンジンのパワーも出ているバイクでは、
パワーアップをターボに頼らなくても特に問題がなく、
ターボ化によってエンジン各部の熱対策や耐久性向上のために
さらにコストもかかってしまう、燃費が悪い、などの理由による。
そのため、現在市販車でターボ搭載車は存在せず、
カワサキがスーパーチャージャーを「Ninja H2」と「Z H2」に
載せるのみとなっている。