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【鋼騎馬ラプソディ最終回】10年経っても未完成?カズ兄のZ2
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- 2025.04.30
【KAZU中西の鋼騎馬ラプソディvol.188】長期連載いただいた鋼騎馬ラプソディ。最終回は愛車のZ2について!是非ご一読ください。
2015年8月に受領して以来、事故や転倒なく走り続けているカズ兄のZ2。ここまで試したパーツやオイルは数知れず。大きなトラブルは無く、重整備は走行距離8万kmの時、エンジン腰上のリフレッシュ1回のみ。約50年前のオートバイとは思えないほど快調です。今回はメンテナンスを終えて戻ってきたモリワキマフラーとデイトナラジアルマスターについて、語らせていただきます。
1. 旧車にも違和感なし?デイトナラジアルマスター
2. ココ一発の場面でいつも共にあったモリワキワンピース
3. 忘れ得ぬ初心とZの父へのリスペクト
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1.旧車にも違和感なし?デイトナラジアルマスター
2017年のデビュー以来、大型バイククラスではダントツの人気ぶりを見せるZ900RS。デザインについて、Z1/Z2をオマージュしていることは有名な話。車種専用のカスタムパーツにおいてもZ1/Z2用をイメージさせるものが多いです。Z900RSは僕自身も数多くのメディアで紹介、関わってきました。実はデビュー当初からぼんやりと思っていましたが、Z900RSに採用されているカスタムまたはドレスアップパーツは、デザイン考としてZ1/Z2にも応用できるのでは?機能や性能も現代的にアップグレードするだろうと。2023年の某日、デイトナを取材で訪れた際、ストリートカスタム仕様のZ1を目にしました。さらによく見ると、ブレーキマスターはラジアルマスターに変更されていました。ここから、もしかしたら、Z1/Z2にZ900RS純正採用のラジアルマスターは、違和感なく装着できる!ぼんやりと思っていたことが確信に変わった瞬間です。僕のZ2、通称カズ兄のZ2は、シャシーをZ750Four(D1)としており、ブレーキシステムではフロントがダブルディスクブレーキ式となっています。ならば、Z900RSチックなラジアルマスターはすんなり着けられるはず。ルックス的には逆も真なり、表の裏の裏は表なのだ!というコンセプトのもと、ブレーキまわりのカスタムに着手してみました。
某年某月某日、恩師・多田憲正さん(故人)と同行、Z900RS絡みの取材がありました。この時、Z900RSのデザインを担当した松村さんは、多田さんがカワサキ製品のデザインに携わっていた時代、最後に採用したデザイナーだと教えていただきました。松村さん自身もZ750Fourに乗っているとのことで、Z1/Z2のボディワークやカラーデザインがZ900RSに上手く落とし込まれているのはそんな経緯があったからなのかも?と思いました。並べられたZ900RSとカズ兄のZ2を見て、現代的な機能パーツやドレスアップパーツをZ1/Z2のカスタムに採り入れれば、さらなる発展があるかもと予感しました。
カズ兄のZ2は2輪専門誌に何度も登場しただけでなく、ミーティングイベントやサーキット走行イベントでも活躍。普段の街乗りやツーリングにも使っていますから、正にフル稼働という感じです。サーキットでは、もう少しコントロール性が良く、効きの良いブレーキシステムが欲しいなと常々思っていて、それを実現するためにはブレーキシステムのアップグレードが必須だと感じていました。
カズ兄のZ2は、フロントに別体タンクタイプマスター、俗にいう横型マスターを装着していました。横型マスターは汎用性が高く、純正と同等のピストン比を選んでも、純正以上のブレーキ性能を得ることが可能です。また、純正のブレーキマスターより低価格であることがほとんどで、リペアパーツも安価なのがありがたいです。
横型マスターはデイトナでも販売していますが、最近の旧車人気やネオクラシックブームに合わせるかの如く、レトロタイプマスターを発売しています。フォルムはまさにレトロチック、しかし制動力や信頼性については現代的というもので、純正のリプロパーツとしても活用できます。Z1/Z2の場合、STDのルックスを大幅に変えたくない!という人に向いているかもしれません。
このほど、デイトナに協力いただき、横型からラジアルへとブレーキマスターの交換に着手しました。結果は予想通りというか、Z900RS採用のラジアルマスターと同様、スモークタンクタイプのラジアルマスターを選んだので、ルックス的にはまったく違和感なし。これはZ900RSに見慣れていることもありますが、Z1/Z2をオマージュしてデザインされたZ900RSが採用しているブレーキマスターだから、とも言えます。逆も真なり!やはり、表の裏の裏は表でした。
ラジアルマスターへ変更するにあたり、ブレーキホースも同じくデイトナのハイスペックライン・ステンレスメッシュに交換しました。バンジョーはあらかじめカシメられている(組み立て式ではない)タイプで、装着後のブレーキフルード滲みや漏れの心配がなく、コラボ製造会社がオートバイメーカー純正採用のニチリンということもあり、信頼性も抜群です。ちなみに、カズ兄のZ2は、ノーマルとほぼ同サイズのハリケーン・Z2タイプハンドルを装着しており、ブレーキホースの長さは900mmがジャストサイズでした。マスターとキャリパーの距離的には、少し余裕を持たせたとしても850mmでイケそうでしたが、横型マスターとラジアルマスターはホースの取り付け位置が異なるため、必要な自由度も考慮すると900mmになりました。
\110万以下有/
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2.一発の場面でいつも共にあったモリワキワンピース
カズ兄のZ2は、闘病生活にあった恩師・多田憲正さんを元気づけるため、絶版車の専門店ウエマツの協力を得て製作されたもの。その製作開始当初から用意されていたのがモリワキワンピースマフラーだった。Z1/Z2をデザインした多田さんと面会する際は、ノーマルの4本出しスタイルで乗り付けることを基本としていました。これはインダストリアルデザイナー多田憲正さんに対する敬意であり、忘れてはいけない心遣いだと思います。一方、イベント参加やサーキット走行会等では、モリワキワンピースマフラーを装着していました。これは、80年代から製品でお世話になり、僕が全国誌デビュー以降も製品のみならず、取材やレース活動等でお世話になってきた森脇護さんとモリワキエンジニアリングに対する敬意から。製品については、フォーサイトやモンスターから始まりZEROも愛用。レースの場面では、エンジンの作り方やフレーム考、シャシーバランスやタイヤの選び方、エアロダイナミクス等の技術的な事だけでなく、チームの運営等についても親身になって教えてくださいました。そのご恩に応えるためには、カズ兄のZ2が日の目を浴びるココ一発の場面で、モリワキワンピースマフラーを使用することだと思っています。実際、モリワキ製エキゾーストシステムの音色が好きだし、ポンつけでもしっかりと性能向上するところが気に入っています。他のオートバイでは、SP忠男やヨシムラ製のマフラーを愛用していますが、カズ兄のZ2については機能美に惚れ込んでいるモリワキワンピースマフラーを今後も愛用していくと思います。
世界的に有名な日本のコンストラクターであるモリワキエンジニアリング。Moto2におけるMD600の活躍は、レースファンなら記憶に残っていることでしょう。そんなモリワキの総帥である森脇護さんは、僕が今さら説明することもないほど有名な方ですが、僕にとってはモノづくりの恩師であり、人生の歩み方を親身になって教えてくださった先生でもあります。僕のくだらないダジャレにも嫌な顔一つせず、ウイットに富んだジョークで返してくれる心優しきスーパーエンジニアなのです。
昨年の秋頃、モリワキワンピースマフラーをメンテナンスに出していました。モリワキでは、製品を売りっぱなしにせず、有償になりますが可能な限りアフターサービスを行なってくれます。例えば、排気音がデカくなったなぁと感じた時、サイレンサーのリペアを依頼することも可能。製造者義務としては対応しなくても良いような年代のものでも、親身になって相談、対応いただけます。そんなモリワキワンピースマフラーですが、このほどメンテナンスを終えて戻ってきたので、早速装着することにしました。マフラー交換の際に必要となるショートパーツはエキゾーストガスケットです。純正品やリプロパーツも入手可能なZ1/Z2ですが、今回はドレミコレクションのオリジナル仕様ガスケットを使用しました。他のガスケットと何が違うのか?間違いなく詳しく説明したいとのことでしたので、詳細を知りたい方はドレミコレクション東京までお問い合わせください。
いつも作業していて思うのですが、モリワキワンピースマフラーは装着が簡単です。カズ兄のZ2では、ノーマルの4本出しマフラーを外し、センタースタンドも外すというひと手間があります。マフラー交換作業の基本は、エキゾーストポート…つまりヘッダーパイプ側を仮組みし、サイレンサーブラケット側を仮組み、エキゾーストフランジナット(またはボルト)を本締め、サイレンサー側を本締めという手順です。複数のパイプを差し込み、スプリングフックを掛ける分解型の場合は、パイプがエンジンやフレーム、ハーネス等に触れないよう取り回しを調整しながら装着していきますが、ワンピース型の場合はその必要がないため、比較的クイックに装着できます。装着が出来たらエンジンを始動して、排気漏れを確認。問題なければ作業完了になります。今回は、戻ってきた記念として、ポイントカバーもモリワキ製に交換しました。
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3.忘れ得ぬ初心とZの父へのリスペクト
何事にも言えることですが、ある程度ベテランの領域になってくると初心を忘れがちです。僕はオートバイに乗り始めて以来、有名無名を問わず、大勢の人々にサポートいただきました。それは、レース活動、ジャーナリスト活動だけでなく、人として道を踏み外さないよう人生においても言えることです。このサポートくださった人々、そして恩師たちに対する敬意を忘れたことは一度もありません。支えてくださるファンの皆様においても同様です。よって、業務で行うインプレッションはもちろん、趣味のモータースポーツにおいても操縦ミスや判断ミスによる転倒、さらに事故を起こさないよう、オートバイに乗るときは平常心と慎重さを忘れないよう心がけています。事実、業務で行うライディングについては、転倒によるオートバイの破損は仕事の遅延につながり、パーツの破損は製品開発の遅れを招きます。カズ兄のZ2については、恩師への敬意の塊であり、ベース車の現存台数の少なさからも、転倒は許されないと思っています。そのため、転ばないためのメンタル、そして運転技能を、安全運転講習会やモータースポーツで鍛えました。オートバイはある意味で気軽な乗り物ですが、刃物のように使い方を間違えば他人の命を危めるマシンでもあります。生前、多田さんがよくおっしゃっていたことは、オートバイが楽しい乗り物だと人々に説いていくことがカズさんの使命だよ、でした。僕は2輪業界に携わっている間、オートバイは正しく乗れば危なくない。そして恩師たちに教わってきたオートバイとの関わり方を正しく伝えていくことが楽しさにつながり、ひいては日本のオートバイ文化に対する恩返しになると思っています。
ブレーキシステムをデイトナのラジアルマスター、エキゾーストシステムをモリワキワンピースマフラーに交換して試走です。走り出してすぐに気づいたのは、ラジアルマスターゆえの繊細なブレーキコントロールと効力の使い勝手。まさに指を動かした分だけ、リニアな効きを得られます。伊豆半島では、海沿いのワインディングロードが景色も良く右に左にと切り返すオートバイの操縦感が醍醐味。ラジアルマスターは、その操縦感覚をワンランク上げるだけでなく、突発的な危険回避のしやすさにも大きく貢献しています。極論で言えば、止まれれば衝突しないわけで、危険予測運転の気持ちと合わせて絶大なる性能アップを果たしたと思います。乗り味の面では、モリワキワンピースマフラーゆえの音色とパワーフィールが心地よい。サーキット走行では、高回転域での伸びのあるパワー感を味わえますが、ワインディングロードでは特に2000回転から6000回転域でのモリモリパワーが加速の良さを上積みしているように思います。また、リアショックのセッティング変更を要するほど、軽量化にも大きく貢献しているため、切り返しの場面では50年ぐらい前のオートバイとは思えないほどクイック。どこを走っても心底楽しいオートバイになりました。
ちょっとした港でも写真映えするのは、Z1/Z2のスタイリングゆえのことだと思っています。缶コーヒーを片手にぼーっと眺めていられる。Z900RSの人気ぶりが証明しているように、人々が客観的に良いなと思えるスタイリング、デザインなのがZ1/Z2だと思います。
伊豆半島で試走となれば、必然性?として寄りたくなってしまう伊豆オレンヂセンター。飲めば3年長生きでお馴染みのウルトラ生ジュースをいただきます。今回は定番のオレンヂジュースだけでなく、ブルーベリージュースも飲みました。目の衰えは危険な運転につながりますので、ブルーベリー味も飲んで損なしです。
カズ兄のZ2に乗る時、いつも多田さんを思い出します。面会に行いくと、我が子が元気に走っているのはマフラーの音からわかるとおっしゃっていました。僕は恩師への敬意を忘れることなく、毎回ブジカエルを実践しています。
試走を終えて帰宅すると、キジマの荷掛けフックナットとデイトナのモンスターミラーが届いていました。荷掛けフックナットは、これまで難儀していたシートバッグ前側の固定に必ずや役立つはず。モンスターミラーは、ロッドの太さと新開発の防振ウェイト、鏡面のみ動かせるアジャスト性がポイントです。早速装着、直ぐに試走と行きたいところですが、3月はとにかく時間がない。4月上旬までモーターサイクルショーのラッシュですからね。よって、荷掛けフックナットとモンスターミラーのインプレは後日にお知らせしたいと思います。
カズ兄のZ2の進化・熟成はまだまだ続いていきますが、KAZU中西の鋼騎馬ラプソディはこれにて終了となります。これまで、僕が経験・検証してきた事実と結果は、皆さまのバイクライフに少なからず役に立つと思っています。長きに渡る連載のご支援をありがとうございました。今後も2輪業界への恩返しは続けていきたいと思っていますので、イベント会場やサーキット等で見かけた際はお気軽に声掛けください。グラシアス!そしてアディオス
関連リンク
デイトナ
モリワキエンジニアリング
伊豆オレンヂセンター
キジマ
ドレミコレクション
ハリケーン(大阪単車用品工業)
ウエマツ
\4時間3,000円~/
■ライター:KAZU中西
フリーランスのモータージャーナリスト。通称カズ兄さん。イベントMCやラジオDJ(FMIS・カズ兄さんのモーターレボリューション)などタレント業でも活躍。
観察分析力に定評があり、開発に携わったバイク用品やカスタムパーツも多数。
一方では、二輪車の事故防止&安全利用の最前線に立つ『Mr.事故ゼロ』とも呼ばれている。愛車はスペシャルメイドのZ2他。趣味はプレジャーボートのクルージング