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絶対王者と挑戦者たち ~2024年全日本ロードレース選手権~

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  • 2024.11.18

今回は「2024年全日本ロードレース選手権」のレポートです!

現在、全日本ロードレース選手権は、小排気量から順に、J-GP3/ST600/ST1000/JSB1000の4クラスと、選手権ではない「MFJカップ」として、JP250クラスが開催されている。

そして最高峰クラスJSB1000では、久しぶりの下克上、世代交代が実現したシーズンだった。

というのも近年のJSB1000クラスは「絶対王者」との異名をとるほど、YAMAHA FACTORY RACING TEAMの#1 中須賀克行が勝って勝って、勝ちまくるシーズンの連続。2008年にJSBクラスを初制覇すると、17年間で12回もチャンピオンを獲得。1981年生まれの中須賀は43歳、「挑戦者」たる若手ライダーたちが次々と高い壁に挑み、なかなか乗り越えることができないでいたのが、このところの全日本選手権だったのだ。

 

2024年は、その中須賀に、挑戦者たちが出揃った。まずは、ドゥカティのワークスマシンの貸与を受けたTeamカガヤマが、ホンダからマシンをスイッチした#3水野 涼(DUCATI Team KAGAYAMA)を擁して参入。さらに世界選手権Moto2から帰国した20年JSB王者の#32野左根航汰(Astemo HondaDream SI Racing)もJSBクラスに復帰。ほかに17年王者の#33高橋 巧(JAPAN POST HondaDream TP)もST1000クラスからJSBクラスに復帰し、HRCワークスマシンではなく、自らのチームを設立してダンロップタイヤの開発を目的に#30長島哲太(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)も参戦。さらに中須賀のチームメイトである岡本裕生(YAMAHA FACTORY RACING TEAM 2)もJSBクラス3年目を迎える強敵のひとりだった。

開幕戦はまだ冬の寒さが残る鈴鹿。ここは、どんな条件にでも合わせられる、タイヤの扱いの上手い中須賀が先勝。2位にドゥカティを駆る水野、3位に岡本、4位に野左根と、新顔が上位を占めることとなった。2レース制の第2戦も中須賀がダブルウィンを果たし、岡本が2位、水野が3位が順位を変えて表彰台に登壇。ここまで中須賀が3連勝したが、昨年までとは顔ぶれを加えての表彰台だった。

 

そして、続く第3戦・菅生大会で世代交代の波が動き始める。2レース制で行なわれた大会では、レース1で中須賀が勝って開幕から4連勝、しかし2位に入った岡本が、中須賀の背後でフィニッシュ、その差はわずか0秒152だったのだ! レース2では、その岡本がとうとう中須賀を撃破。「菅生は本当に得意なサーキット」と、水野とのトップ争いを制した岡本は、3位中須賀に11秒5もの差をつけて今シーズン初優勝を決めてみせた。

ここから挑戦者たちの躍動は続いていく。鈴鹿8耐明けの第5戦・もてぎ大会(第4戦はJSBクラスの開催なし)では「8耐でかなりの走行時間を積み重ねた」という水野がドゥカティで初優勝を挙げ、2位中須賀、3位岡本の順。外国車が全日本ロードレースの最高峰クラスで優勝するのは、これが史上初めてのことだった。

 

第6戦オートポリス大会は2レース制で行なわれ、岡本がダブルウィン。中須賀は2レースとも2位に甘んじ、3位にはレース1で水野が、レース2では高橋が今シーズン初めて表彰台に登壇。その勢いをかって第7戦・岡山大会も岡本が制し、これで岡本は3連勝を挙げ、中須賀は5レースも優勝から遠ざかってしまう。シリーズチャンピオン争いは、192ポイントの中須賀vs188ポイントの岡本のふたりに絞られた。最終戦2レースを残して、その差わずか4ポイント!

 

最終戦も2レース制で行なわれ、レース1では水野が「鈴鹿との相性がいい」というドゥカティで今シーズン2勝目を獲得。2位に岡本、3位に中須賀が入り、ふたりのポイントは211で同ポイントとなってしまう。レース2、つまりシーズン最後のレースで先着した方がシリーズチャンピオンだ。

そのレース2では、シリーズ後半の勢いを表わすように、岡本がスタートから後続との差をじりじりと広げてトップを快走。このままでは岡本がチャンピオン獲得──と思われ始めたレース後半に多重クラッシュが起こり、コースにセーフティカーが介入。スロー走行で全マシンの差はほぼゼロになり、中須賀にとっては願ってもないチャンスが訪れたかのように見えた。

しかし、セーフティカー退出のすぐ後、中須賀は1コーナーで転倒を喫し、15位以内に入れば岡本がチャンピオン、という流れの中、岡本は3位に入り、初のJSBチャンピオンに確定。中須賀の転倒は、セーフティカー後方での3周ほどの走行でタイヤが冷えてしまったのが原因と思われ、開幕戦を「タイヤ使いの上手さ」で勝ち切った中須賀の、タイヤのコントロールを誤ったが故のものだった。

 

JSB参戦3年目にしてチャンピオンを獲得した岡本は、2025年から世界選手権スーパースポーツ600へ、ヤマハのニューマシンYZF-R9での参戦が決定。全日本ロードレースを勝ち上がっての世界挑戦という、若手ライダーに夢のあるステップアップを見せてくれた。

全日本ロードレース選手権は2025年、2年目を迎える水野+ドゥカティを軸に、絶対王者・中須賀の巻き返しと、最終戦で初表彰台に登壇した野左根の戦いが繰り広げられるだろう。

 

開幕戦、鈴鹿2&4は極寒の路面を上手く攻略した#1中須賀克行が先勝。

 

第2戦もてぎは#1中須賀がダブルウィン。このあたりまでは中須賀絶対優位のシーズンだった。

 

第3戦・菅生大会は#1中須賀と#2岡本裕生が優勝を分け合った。これが中須賀のシーズン最後の優勝。

 

鈴鹿8耐明けのもてぎ大会では#3水野 涼が独走。鈴鹿で走り込んだデータが生きた優勝だった。

 

#1中須賀、#2岡本とも得意とするオートポリス大会は岡本のダブルウィン。ここから岡本が3連勝。

 

岡山大会も#2岡本が盤石の強さを見せつけた。#1m中須賀は予選での転倒がひびいた決勝だった。

 

最終戦は#3水野がダブルウィン。レース1が終わった時点で中須賀と岡本が同ポイントとなり、レース2を勝った岡本がチャンピオンを決めた。

 

JSB1000クラス昇格と同時にヤマハワークスチーム入りを果たし、3年目で中須賀越えを果たした岡本。25年からはワールドスーパースポーツ600にニューマシンYZF-R9でエントリーする。

 

チャンピオン岡本裕生、ランキング2位・中須賀克行、ランキング3位・水野 涼の3人が全戦表彰台のほとんどを占めた2024年シーズン。この3人以外で表彰台に上がったのは高橋 巧、野左根航汰のふたりのみだった。

 

制作・協力

■文・写真:中村浩史

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