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【バイクメンテナンス】バツじゃないけどマルでもないメンテナンス記事の裏側的な話

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  • 2020.06.06

【KAZU中西の鋼騎馬ラプソディ】vol89。​今回はエンジンオイルの見極め術を伝授してくれました!

  • 正解が無くて当たり前?エンジンオイルの見極め術

オートバイの性能を維持するために、定期的なメンテナンスが必要なことは百も承知でしょう。中でもメジャー級と言えるのが、エンジンオイルに関する話。今や情報が溢れすぎていて、どれが正しい情報なのかを見極めづらい状況にあると思います。


僕は長きに渡り二輪専門誌に寄稿、メンテナンスや修理、カスタム、チューニング関連の記事も執筆してきました。なので、僕に文責のある記事も情報発信源の一つだと言えますが、書き手だからこそ語れる情報の見極めポイントは次の通りです。


・万人が求める性能を100%満たせる物はこの世に存在しません

・排気量を問わずいかなる車両にも最適だと言える物は無いです

・最新の情報や公平な目線で執筆しているとは思えない記事もある


WEBサイト等ではメーカーや各人の推しがあったり、参考にしている情報源の信ぴょう性に疑問を覚えることもあります。そう言ってしまえば、僕の書いているこの記事だって本当かどうか疑われても仕方のないことです。


よく話題になるのは化学合成油と鉱物油の優劣ですが、使用する車両や使用環境、乗り方によって適しているのか否かも変わってきますから、正解は無いと断言できます。むしろ、正解があったとしたら皆がそれを実践しているわけで、様々な情報から正解を得ようとするよりも、書き手が何を言いたいのかを見極めることが、自分自身の使い方に合ったエンジンオイルを見つける近道になると思います。


僕はエンジンオイルの性能をチェックする際、サービスマニュアルに記載されている標準値や基準値、その計測方法を参考にしています。例えば何回転の時に油温が何℃で油圧が何kPaか?です。オイルポンプも含めてエンジンが正常であれば、おおよそ記載数値に近くなるはず。それを外れていれば、エンジンオイルがダメになっているのか、油送ライン中に何らかの不具合があるということになります。


また、この数値だけに捉われてはいけないというか、メーカー指示のテスターで計測しない場合は、必ずしも記載数値通りにならないということです。よって、新油の状態で油温と油圧を計測、その後の数値変化をモニタリングするという方法で、数々のエンジンオイル性能をチェックしてきました。


ほとんどの市販車に言えるのは、エンジンが約1000rpmで油温が約70℃の時に、適正油圧を見るという方法。化学合成油、鉱物油を問わず、新油の時は70kPa前後の数値になりました。そこから走行距離を重ねて、油圧がどのように変化していくかで、性能の低下ぶりが分かります。


僕は、一般的に入手できるエンジンオイルを一通りチェックしましました。総合的に言えるのは、化学合成油は1000km~1500kmを走行した時点で、エンジンが要求する最低油圧レベルまで数値が一気に落ちる。鉱物油は2500km~3000kmを走行するまで緩やかに数値低下していくことです。


なお、この状態になるとギヤの入りが悪くなり、エンジンもノイジーになるので、性能低下は薄々感じられるのですが、数値で観察しているからより確信が持てるというか。エンジンオイルは温まれば粘度が下がり、冷えれば粘度が回復するのは、実体験からご存知の方も多いでしょう。その性能回復ぶりが、このチェック方法によって可視化できるというわけです。まさに百聞は一見に如かず!ですね。


油圧計を装備していない車両の場合、発生油圧が適正範囲であるか否かをチェックするためには、その都度テスターを使うことになりますが、多くの市販車では油圧過多によってエンジンが危険な状態にならないよう、オイルエレメント(フィルター)にリリーフバルブ機構を装備しています。


その機構は、エレメント本体に内蔵されている物や、エレメント室のボルトに内蔵されている物もあります。なお、リアルタイムの油圧計を装備している車両で油圧が上げ止まらない場合は、リリーフバルブの故障を早期に知ることができますね。


エンジンオイルの性能チェックをする際、抜き変え作業の度にドレンボルトを外すことになります。同時に、金属系のガスケットは、毎回新品交換するのが鉄則。1回の締め付けでこれだけ潰れてしまいますからね。


僕は1回の検証だけで全てを語りたくないので、一つのエンジンオイルに対して、何度もモニタリングします。従って用意するエンジンオイルはペール缶(20L)単位になります。オイルレベルはロアーとアッパーの範囲に入っていればOKですが、僕はあえて中間のレベルに合わせます。その後、オイルの銘柄を変えてもレベルは同じにすることで、より正確なモニタリングができますね。


僕は、レースやサーキット走行など、エンジンの運転時間が比較的に短い場合は化学合成油、街乗りやツーリングなどの普段使いは鉱物油をセレクトしています。言い換えれば、パフォーマンスを重視するのか、耐久性を重視するのか。それをシチュエーションに応じて使い分けています。


さらに、これまでの検証から言えることですが、ガスケットやシール類への攻撃性が低いのは、鉱物油に多いと思います。


また、全く同じ銘柄のオイルでも、購入時期=出荷時期によって性能に違いが表れることもあると知りました。なお、この検証結果は、車両や乗り方によっても違ってくるでしょうから、やはり最終的には自身が良いなと感じたエンジンオイルを使うのが一番!ということになりますね。

制作・協力

■ライター:KAZU中西

フリーランスのモータージャーナリスト。通称カズ兄さん。イベントMCやラジオDJ(FMIS・カズ兄さんのモーターレボリューション)などタレント業でも活躍。観察分析力に定評があり、開発に携わったバイク用品やカスタムパーツも多数。一方では、二輪車の事故防止&安全利用の最前線に立つ『Mr.事故ゼロ』とも呼ばれている。愛車はスペシャルメイドのZ2他。趣味はプレジャーボートのクルージング。

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