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障がい者が一般公道でツーリングを愉しんだ

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  • 2022.09.26

今回は、SSP(サイドスタンドプロジェクト)が開催したイベントレポートをご紹介します!

9月11日(日)、神奈川県にあるアネスト岩田ターンパイク箱根は占有貸し切りイベントのため、封鎖されていました。そのイベントというのが、一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)が開催した『やるぜ!!箱根ターンパイク2022』でした。

 

【目次】

1.障がい者を支える活動が結実した一日

2.秋の箱根を、昔のバイク仲間と一緒にツーリング

3.パラモトライダーツーリングを終えて

 

 

 

  • 障がい者を支える活動が結実した一日

バイクは自立出来ない。でもサイドスタンドがあれば立っていることができる。そんなところからネーミングされた一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)は、「障がいを抱えても、オートバイに乗りたい」と考えるオートバイ好きに、再びバイクに乗る楽しみを提供したいという活動を行なっています。それを立ち上げたのは、1990年代に世界で活躍した伝説的GPライダー、青木三兄弟の長男・宣篤さんと、三男・治親さんの二人。

 

その活動のきっかけとなったのは兄弟のひとり、青木拓磨さんに再びバイクに乗ってもらったことです。1998年のシーズン前に行っていたテスト中の事故で脊椎を損傷し、下半身不随となってしまいました。しかし4輪へ転向しレース活動を続け、また自らミニバイクレース「Let‘sレン耐」や「takuma-GP CUP」を主催する等積極的に活動をしています。

 

ヨーロッパで障がいを負ってしまった人たちがその後もオートバイを楽しんでいる様子を、たまたま動画配信サイトで見つけたのをきっかけに、拓磨さんにもう一度バイクに乗ってもらいたい、と動き出したのがきっかけとなりました。下半身不随でもバイクを操作できるユニットを入手し、実際に2019年の鈴鹿8耐レース前に集まった約7万人の観客の前でその走行の披露をすることもできました。

 

その後、この感動をもっと多くの人にということで、このSSPを立ち上げ、『パラモトライダー体験走行会』を開催してきました。この活動の最終的な目標が「箱根ターンパイクを貸し切って、パラモトライダーの一般公道でのツーリング」でした。障がいを受けた後、2輪に乗ることができなくなったということで、障がい者の多くは、免許をなくしています。そのため、一般公道ですが借り切ることで免許がなくても走行が可能な箱根ターンパイクを使いたいという思いでした。できれば10年以内、2030年までには実施したいというのがその夢でした。ところが、今年急きょ、ターンパイクを借りることができるという話が現実的なものとなり、SSPは計画を8年前倒しして、この日の開催に至ったのです。

 

  • 秋の箱根を、昔のバイク仲間と一緒にツーリング

箱根ターンパイクでの走行は、これまでのパラモトライダー走行会で使用していたバイクを使用。ハンドル横に用意したシフトアップとダウンの操作ができるスイッチで直接シフトペダルが操作できるハンドシフターを装着しています。足を置く通常のステップはビンディングのついた特殊なステップに付け替えています。これまでのサーキットなどを使用した走行会ではライディングブーツにもクリートを取り付けて足を固定していましたが、今回はツーリングということで各自のシューズにクリートを付けたプレートに装着します。大腿部についてはベルトで開かないようにしています。

 

「箱根ツーリングを再び」ということで、参加するパラモトライダーはそれぞれ一名につき9名まで友人を誘うことが可能となりました。昔一緒に走った仲間とまた同じようにツーリングを実現できるのは、SSP側から招待された14名。

 

このSSPの体験走行会は、多くのボランティアスタッフによって支えられていますが、今回集まった150名におよぶボランティアスタッフは、スタート&ゴール地点でのパラモトライダーの乗せ下ろしや発進&停止のサポート以外にも全長26kmにおよぶコースの沿道にもスタンバイし、パラモトライダーたちの走りを見守り、そして声援を送ってくれました。

 

ゴールまで帰ってきた面々は、口々に「素晴らしい」、「楽しい」を連発。「こんな日が来るなんて夢にも思わなかった。一度はあきらめてしまったことをまた実現できるなんて。このすばらしいイベントをもっと続けていってほしい」とコメントをしてくれるパラモトライダーもいました。

 

主催したSSPの青木治親代表理事は「事故がなかった。これがすべてですね。この走行会の開催は“隔たりのない社会”の実現の未来に向けた、大きく、そして大切な第一歩です。健常者も障がい者も当たり前のようにみんなで一緒に走れるこの活動をさらに広げていきたい」とその思いを口にしてくれました。

今回の開催にとどまらず、来年以降も引き続き開催を模索しているとしています。また、この箱根のツーリングに参加できなかったパラモトライダーもいつか箱根を走れるように、と引き続きパラモトライダー体験走行会を開催していく予定です。パラモトライダー体験走行会の詳細はHPを参照にしてください。

 

  • パラモトライダーツーリングを終えて

好天に恵まれた9月11日(日)、サイドスタンドプロジェクトの設立当初からの夢が実現しました。パラモトライダーとそのバイク仲間、スポンサー企業関係者、クラウドファンディング出資者、そしてボランティアスタッフ、計200名超のメンバーが集合しました。

 

SSPの体験走行会では参加者のためにヘルメットからグローブ、ブーツ、革ツナギなどをすべて用意しているのですが、今回はツーリングのため、自身のライディングギアで参加。ブーツの加工は出来ないためプレートを介して足を固定しています。

 

この箱根でのパラモトライダーツーリングを開催したSSPの青木治親代表理事は「事故がなく終えられたことに感謝しています。事故で身体の自由を損なったのに、また事故してしまうってことだけはどうしても避けたかった」と、事故防止と事故が起きた時の徹底した対策の準備を行なって開催となった。

 

通常のツーリングに使っているライダーも多いサインハウスのインカム「B+COM」を今回のイベントでもパラモトライダーや前後のサポートライダーとの連絡用に使用。各参加者が持ち込んだヘルメットにサインハウスのスタッフが装着しグループごとに通話ができるようセットアップし、ツーリングに備えました。

 

地元小田原警察署もこの記念すべきイベントに協力。白バイ隊員2名が先導役を担当。10名のパラモトライダーを先導した。参加したパラモトライダーからは「普通なら絶対にできないけれど、今日は白バイと一緒にツーリングができた!」と喜ぶコメントも。

 

スタート地点はまだまだ暑さが残っていましたが、大観山に上がると涼しく、初秋の好天に恵まれ、富士山の絶景や小田原市とその先に広がる相模湾もしっかり見渡せました。サーキットや自動車教習所での体験走行会とはまた異なるツーリングを各参加者が楽しみました。

 

今回のツーリングルートは、箱根ターンパイクの小田原料金所から大観山展望台まで駆け上がり、ここで特別に設けられたUターン路を使用して、ノンストップで大観山を折り返し、再び小田原料金所まで戻ってくるというルートとなりました。

 

友人ライダーやボランティアスタッフがコースの沿道からパラモトライダーたちに声援を送ります。「手を振ってくれるギャラリーに励まされました。手を振り返したかったですが、両手はバイクの操作でいっぱいいっぱいで」とコメントも。

 

正午にスタートしたパラモトライダーのツーリングは陽が傾く午後5時には14名すべてが事故もなく走行を終えました。ツーリングから帰ってきたパラモトライダーを受け止めると、鳴りやまない拍手に迎え入れられたパラモトライダーの中には涙を流すライダーもいました。

 

制作・協力

■レポート&写真:青山義明 ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクト 

 

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