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「バイクに乗れない」障がい者から一転、「レースに出る」障がい者に

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  • 2023.01.25

2022年12月18日(日)に開催されたミニバイクの耐久レース『Let’s レン耐!』において、史上初となる障がい者のみのチームが参戦しました!そのレースの様子をレポートします!

2022年12月18日(日)、群馬県にあるハルナモーターランドで『Let’s レン耐!』という、ミニバイクの耐久レースが開催されていました。このレースに『レン耐!』史上初となる障がい者のみのチームが参戦、自分たちでも操作が可能なハンドドライブユニットを組み込んだグロムを持ち込んでレースを楽しみました。

 

  • バイクに乗る楽しさを再び

今回レン耐に参加したのは、4名の障がいを持つライダー。この4名をつなぐこととなったのが『パラモトライダー体験走行会』です。1990年代に世界で活躍した伝説的GPライダーである、青木三兄弟の長男・宣篤さんと、三男・治親さんの二人が立ち上げた一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)が開催しているものです。

 

1998年のシーズン前に行っていたテスト中の事故で脊椎を損傷し、車いす生活を送っている青木兄弟のひとり、青木拓磨さんに再びバイクに乗ってもらいたいということで、下半身不随でもバイクを操作できるユニットをバイクに取り付け、発進と停止の際には仲間が支えることで実際にバイクに乗ることができるようになりました。

 

この感動をもっと多くの人に、という思いで、バイク事故などで身体に障がいを負ってバイクを諦めてしまった人に、再びバイクに乗る楽しさを提供したいと、SSPは2020年から定期的に『パラモトライダー体験走行会』を開催しています。

 

  • バイクに再び乗れた。その後……

『パラモトライダー体験走行会』は、他に車両のいないサーキットや休校日の自動車学校を利用して開催しています。さらに2022年9月には、箱根ターンパイクを貸し切って一般公道を走行する機会も用意されました。障がいといってもそれぞれですが、SSPでは操作系のカスタムをするなど、毎回それぞれの障がいに合わせたマシンを用意しています。

 

SSPでは障がいを持っていても再びライダーとしてバイクに乗ることとなったライダーをパラモトライダーと呼びますが、脊椎損傷以外にも視覚障がい者など、数多くのパラモトライダーを輩出してきています。脊椎損傷の場合、体幹がなくバイクのバランスを取ることが難しく、誰でもすぐにバイクがうまくなるわけではありません。ただ、一方で、ステップアップをして行くパラモトライダーもいます。

 

そんなステップアップをして行ったライダーの中で、一緒にレースに出たいね、という話が盛り上がっていきます。この活動の元となった青木拓磨さんが主催しているレンタルミニバイクでの耐久レース『Let’sレン耐!』では、SSPのハンドドシフトユニットを組み込んだ車両で青木拓磨さんが実際に参加者に混じって走行をしたりしています。それを間近で見たパラモトライダーのひとつの目標として、このレン耐参戦が現実味を帯びてきます。

 

もちろん、レン耐はその名の通り、マシンのレンタルが基本です。が、車両の持ち込みも可能です。そこでパラモトライダーの中で実際にグロムを購入する者も現れ、SSP側からハンドシフトユニットを譲り受け、車両に組み込むという作業も同時に進行していきます。シフトペダルを直接動かすアクチュエーターの装着については、ミニバイクになればなるほど他の操作の邪魔にならないように、とレイアウトには苦慮しますが、それでも何とかカタチになっていったようです。

 

  • 構想1年弱? チームSSP結成

レン耐の東日本第27戦「RSタイチCUP Xmasレン耐ハルナ4時間耐久」に参戦したのは、右大腿切断の2名と、脊髄損傷の完全麻痺という障がいを持った3名に、元GPライダーで事故により足に障がいを持っている小林 大さんも加わった4名です。もちろんライダーだけではこの耐久レースを走り切ることはできません。ボランティアとしてSSPの活動を支えている2名がサポートに入ります。このチーム全員が巡り合ったのが『パラモトライダー体験走行会』です。そこで参戦チーム名は『チームSSP』となります。

 

チームSSPが持ち込んだグロムは、障がいが異なる各ライダーが乗るため、操作する左ハンドル周りはレバーが2本にシフトスイッチと複雑な構造となっています。また、

 

レン耐では、マシンとライダーがホームストレートを挟んで並び、スタートの日章旗が振られライダーがマシンに駆け寄って走り出すル・マン式スタートです。また、ピットに戻る際には、ピットロードにあるチェックポイントでバイクを降車して、自分たちのピット前までマシンを手押しで移動させ、ライダー交代をしてもピットロード出口側にある乗車ポイントまでマシンを押していかなければならなかったりします。

 

そういったレギュレーションについては、他のチームに迷惑のかからないように、ということで、スタートはライダーの代わりにヘルパーが担当し、ライダーの乗降についてもピットロード入り口側および出口側の脇のスペースで行ない、ヘルパーが手押しでピットロードを進行することで、了承を得ての参戦となりました。また、この日は『クリスマスレン耐』ということもあって、仮装をするとプラス5周のハンデがもらえるということで、チームSSPもサンタの仮装をして出走です。

 

当日は、天候には恵まれ陽が射してはいたものの、12月の榛名ということで、気温はもちろん路面温度も低かったこともあって転倒車両が続出し、4時間に26回という、いつにも増して多くの転倒を数えることとなりました。転倒したら大変だ、とサーキットおよびレン耐スタッフが心配をしていたもののチームSSPは無転倒のまま無事にレースを終えることができました。

 

それでも全くトラブル無しというわけではなく、途中でシフトスイッチのボックスが緩んでしまうというアクシデントもあり、緊急ピットインもありましたが、4時間のレースで4人が2スティントずつ乗り換えてハンデを加算した190周を走行してクラス16位でフィニッシュとなりました。

 

いずれもパラモトライダー歴は1年半未満ですが、それでもレース中は無理をせず、きちんと他車に注意を向けながら走行を重ねたこと。そして何より、転倒したら自分たちはもちろん、参加している他のチームと青木拓磨さんに迷惑が掛かるという緊張感から達成したものでした。もちろん、他のレン耐参加者のマナーもすばらしいことは言うまでもありません。パラモトライダーからは早くも次の参戦についての話が盛り上がっています。近いうちにまたレン耐の場で、健常者と障がい者の隔たりのないレースが見られると思います。

 

制作・協力

■レポート&写真:青山義明 

■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクト、takuma-gp(Let’s レン耐!事務局)

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