他カテゴリ記事を絞り込んで探す

ホンダが遊覧船でカーボンニュートラルを実現

  • おすすめコラム
  • 2023.09.21

ホンダが遊覧船でカーボンニュートラルを実現しました!

2023年SDGs未来都市のひとつである島根県松江市で、2023年8月から小型船舶用の4kW電動推進機プロトタイプを用いた実証実験を開始するホンダと松江市が記者発表を行いました。この実証実験は「カーボンニュートラル観光」を目指している松江市の観光地のひとつ、国宝である松江城のお堀で運営されている観光遊覧船の船外機を電動化し、その可能性を探る実証実験となります。

 

  • 観光遊覧船の電動化でカーボンニュートラルを目指す

島根県松江市は、温室効果ガスの排出量削減を先行的に実現するモデル地域として、2023年4月に環境省から第3回脱炭素先行地域の選定を受けています。その脱炭素先行地域テーマは「国際文化観光都市・松江」の脱炭素化による魅力的なまちづくり~カーボンニュートラル観光~というもの。また2023年5月には内閣府の「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に選定されるなど、SDGsとカーボンニュートラル実現へ向け、様々な取り組みを行っている自治体のひとつです。

 

小泉八雲ゆかりの地としても知られるこの松江市ですが、その中心部にある国宝松江城は山陰地方唯一の現存天守であります。その松江城を囲うように作られた堀を巡る「ぐるっと松江堀川めぐり」の堀川遊覧船は、約3.7kmのお堀を約50分かけて巡る遊覧船(大人1500円)です。春はお堀の周りの桜並木、冬はこたつ船などで四季をしっかり堪能できるだけでなく、低い橋の下をくぐるときは遊覧船の屋根が下がってギリギリで通過するという、アトラクション的な楽しみもあって、旅行新聞社が主催する第6回「プロが選ぶ水上観光船30選」では第8位に入るなど人気の遊覧船です。1997年7月に15隻で運航を開始し、2023年6月末時点での乗船者数は734万8000人にも上るということです。

 

脱炭素化に取り組んでいる松江市は、以前から堀川遊覧船の電動化による「カーボンニュートラル観光」を模索していたようです。そこでアプローチをかけたのが、ホンダが発表した「小型電動推進機コンセプトモデル」でした。2021年に発表されたこのコンセプトモデルのニュースを目にした松江市側が使用を提案し、ホンダ側がこれに応える形で、この2023年8月から堀川遊覧船での実証実験はスタートすることとなりました。

 

「コンセプトモデル」の時は具体的な仕様は定まっていなかったのですが、日本初の船外機メーカーであり30馬力以下の船外機では世界トップの販売数を誇る企業であるトーハツと、ホンダで共同開発して、この小型船舶向け電動推進機プロトタイプが生まれました。ホンダが出力4kWの電動パワーユニットを、そしてトーハツがギアケースやロアーユニットなどのフレーム領域を担当しています。

 

電動推進機プロトタイプは、ホンダのビジネスバイクシリーズであるジャイロe:の駆動ユニットを使用します。その動力源は、現在ホンダが二輪車で使用している交換可能な着脱式可搬バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(MPPe)」です。このMPPeを2本組み込むバッテリーBOX、そして電装デバイス、船外機本体という構成となります。

 

  • 静かで低振動 電動化によるメリットも

就航当初から堀川遊覧船では「静かで環境にやさしい」ホンダの4ストローク船外機(ホンダBF9.9)を使用してきています。BF9.9の最高出力は7.4kW (9.9馬力)になります。電動推進機プロトタイプはこれに代わるわけですが、電動推進機の最高出力は4kW(5.4馬力)となります。出力特性は、モーターならではの低速域でのトルクの大きさを生かし、巡航速度までの加速はエンジン船外機と同じだということです。またホンダ・ジャイロe:のモーターをベースとしながらも、回生の制御も加えています。これはエネルギーの回収という目的ではなく、停船時の制動距離を短縮させるためのものとなり、この推進機専用の制御となります。

 

実際に乗船をして、エンジン艇とモーター艇を乗り比べてみると、そのスペックの数値以上に音と振動の違いに驚くこととなりました。船の後部の船外機の横に船頭さんが座って操作をしながら観光案内も行っているのですが、マイク&スピーカーを使って観光案内をしていますし、乗客からの声は聞き取りづらいようです。ところがこれが電動推進機ならば、普通に会話ができるようになりますし、乗客も船体下部からの振動はなく、水が分けて進んでいることを実感できるようになります。

 

低振動、低騒音化、加速&制動性能向上、旋回性の向上に操作やメンテナンスの簡素化なども達成できるということです。これをすべて電動小型推進機に置き換えると、年間47トンの二酸化炭素の削減効果が得られるようです。

 

国宝松江城は、1611年に築城された山陰地方唯一の現存天守で、別名「千鳥城」とも呼ばれています。この松江城を囲うように作られた堀を巡る「堀川遊覧船」が実証実験の場となります。

 

堀川遊覧船は1日で最大8回航行をしますが、これに必要なMPP e:は3セット(6本)あれば十分だということです。

 

実用化や商品化に向けてこれから実証実験を重ねていくということですが、実証実験期間は未定ですし、一般の営業乗船も現在のところ実施はしておらず、こちらも検討しているそうです。

 

ホンダでは、創業者である本田宗一郎氏は「水上を走るもの、水を汚すべからず」という信念の下、1960年代から環境負荷の低い4ストローク船外機を船外機市場に投入してきたという歴史を持ちます。写真奥の赤い船外機が、1964年に発売された4ストロークエンジンのGB30。

 

この堀川遊覧船では現在42隻を持っています。これをすべて電動に置き換えると年間47トンの二酸化炭素の排出を削減できるということです。

 

実証実験の終了時期は決まっていないですが、実証実験にとどまらず、より地球にやさしくこの風情ある街を楽しむ「カーボンニュートラル観光」が実現していくことに期待したいですね。

 

島根県松江市で2023年8月から、小型船舶用の4kW電動推進機プロトタイプを用いた実証実験を開始するホンダと松江市が現地で記者発表を行いました。

 

この実証実験は、松江城のお堀で松江市観光振興公社が運営している堀川遊覧船に電動推進機プロトタイプを搭載し、実際の運行で使用し、遊覧船における商品性を検証するものとなります。

 

「電動推進機プロトタイプ」は、ホンダとトーハツが共同で開発したモデル。ホンダが出力4kWの電動パワーユニットを、そしてトーハツがギアケースやロアーユニットなどのフレーム領域を担当しています。

 

制作・協力

東京エディターズ

オークネット提供サービス一覧

© 2016- AUCNET INC.