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【バイク用品正直レビュー】検証は一日にしてならず
- おすすめコラム
- 2024.07.04
【KAZU中西の鋼騎馬ラプソディ】vol.179。今回はタイヤとオイルフィルターについてレポートいただきました!
何事にも言えることですが、時間をかけて使ってみたからこそ真価が分かる。特にレビューの少ないパーツや用品については、いわゆる『人柱』になる勇気?も必要。今回はVMAX1700で使ってみたタイヤとオイルフィルターについて、ある程度の期間使ってみたので、現時点での結果をレポート。
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履ける種類が少ないからこそトライしてみた
近年、大型ロードスポーツバイクの定番タイヤサイズといえば、フロント120/70ZR17、リア180/55ZR17になります。スパースポーツモデルのリア用では190幅とか200幅のワイドタイヤもありますが、ルックスに迫力があるという見た目の理由よりも、パワーと想定される走りのシチュエーション的に必然性から選ばれたと思われます。VMAX1700の場合、フロントは120/70ZR18と普及サイズですが、リアは200/50ZR18で、かなり特殊なサイズ設定になっています。何ならダンロップかブリヂストンの車種専用タイヤしか履けないという状況。車両の性能的に致し方ないと思いますが、僕の経験上ではフロントが平均して1万キロ程度しかもたず、しかも前後ともに市場価格が高額。僕の場合、とにかく距離を乗るので、もっと耐摩耗性が高く低価格なタイヤだとありがたいです。そんなある日、ショッピングサイトを眺めていたら、200/50ZR18サイズの激安タイヤが目に留まりました。車種専用タイヤと比較して価格は約半分。これは財布にやさしいかも?と思った反面、タイヤは命を乗せる最重要パーツでもありますから性能が気になるところです。最近はXJR1300ばかり乗っているので思ったより距離は伸びていませんが、それでも3000km超は走れました。初めてのメーカー、初めてのブランドのタイヤは導入に勇気がいりましたが、ようやく特性がつかめてきたように思います。
VMAX1700はフロント荷重が強いせいか、僕の場合はリア1回の間にフロントを2回交換するサイクルになっています。タイヤ選びとしては、軽快なハンドリングを求めるならダンロップ、安定性を重視するならブリヂストンの車種専用タイヤが一般的だと思います。いずれも残溝が50%を切ったあたりから、ハンドリングに影響が出始めます。今回履かせてみたのはシンコータイヤのヴァージです。シンコータイヤといえば、以前JD-STER(ドラッグレース)の会場で知ったタイヤで、気になって調べてみると1946年創業の老舗メーカーでした。これまでのイメージとしては、自転車やオフロードバイク用のタイヤを出しているイメージでしたが、それがごく1部だったことも知り、自身の勉強不足を痛感。市場価格は車種専用タイヤの約半額だったので、これは試してみる価値あり!と大手通販サイトで購入。装着はYSP沼津にお願いしました。
装着から3000km超となりました。その間、日常的な街乗り・講習会のイントラ乗務・高速道路を使ったロングツーリング・クローズドコース走行等々、天候関係なく走り回って性能を検証。晴れの日もあればヘビーウェットもあり、スピードレンジも人が歩く速さからVMAX1700の国内仕様が出せるトップスピードレンジまで試してみました。比較対象はそれまで使ってきた車種専用タイヤになります。晴れのドライコンディションでは特に不満なし。強めにスタートダッシュしても、しっかりと路面を捉えています。乗り心地についても全く不満なしで、むしろ長距離でも疲れにくいです。旋回時のグリップ力については、リーン角が増えても手応えはありました。ただし、ステップを擦ってしまう領域になるとタイヤの硬さなのか、若干スキッド傾向になります。しかしVMAX1700をそこまでリーンさせねば曲がれないようなシチュエーションは、公道においてほとんどないといえるので、実用的には全く問題なしです。ウェット性能については、ドライの時とほぼ同じような感覚でした。トレッド面のグルーブが少ない割に食いつきが良いなという印象。とはいえ、性能重視でVMAX1700に乗っている人にとっては、深いリーン角での限界グリップ力に期待したいでしょうから、車種専用タイヤの方が向いているのかもしれません。僕はクルクル小回り必須のイントラ業務でも十分に使えるタイヤだと確認できたので、今回の検証はかなり有意義だったと思います。
関連リンク
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類似品にご注意ください
歴史を振り返ってみても、高性能で高品位、しかもコストパフォーマンスの高い製品が登場すれば、それに似たような物も出回ります。いわゆる類似品と呼ばれるもので、外観上の形状こそ本家本元に似ていますが、機能性能面ではおおよそ及びつかないお粗末さ。その分を低価格で納得させるというやり方が、これまでの製品によくあったものです。時計やバッグ、アパレルだけでなく、バイク用品やカスタムパーツにおいても類似品が問題になっていたりします。僕はXSR700やカズ兄のZ2、VMAX1700に、アメリカのトップブランドK&Pエンジニアリングのステンレスマイクロニックオイルフィルターを使っています。アメリカにおいて、従来の繊維製品以外の素材を使用したフィルターとしては唯一、米国航空宇宙局より『航空機への使用認可』を取得したもので、オイルフィルターとしての機能性能の良さだけでなく、洗浄して再使用できるというゴミを増やさないことにもつながる製品として注目。実際に使ってみて全く問題がないばかりか、オイルポンプに関連する機械的なロスが減少することにより、エンジンの回り方が軽くなることも確認しました。そんな良い製品ゆえに、そのうち類似品が出てくるのではないか?と心配していましたが、案の定、完全に同形状・同性能ではない、まさに似たような低価格の製品が市場に出回るようになりました。類似品が本家本元を超えるような高性能であることはあり得ないわけで、このフィルターに限らず新しいパーツを使ってみようかなと思った際には、仮に高額であっても本家本元の間違いのない製品を選ぶと良いです。
約3年前、YSP沼津で装着してもらったモリワキK&Pコラボのステンレスマイクロニックオイルフィルターです。記憶している限り、既に2万キロ超(何ならボチボチ3万キロ)を使っていますが、この製品の不具合でオイル漏れを起こしたり、エンジン故障の原因となったことは一度も無し。フィルターの脱着には、付属のカップレンチを使用するのが鉄則です。
フィルターボディのエンジン側になる部分には、シール材としてOリングが用いられています。いわゆる丸断面ではなく、太さも径も淵の溝にジャストサイズの専用品です。今回取り外してみて、ペタンと潰れていないことから、Oリングがしっかり機能していると思いました。他のパーツにも言えますが、僕は毎回Oリングを新品交換したい人なので、あらかじめ新品を購入、ストックしてあります。外した使用済みOリングと新品を並べてみましたが、目視や指ざわりで違いが分かる人は皆無だと思います。また、径が同じだからと言って、専用でないOリングを使うのは絶対にNG。オイル漏れの原因となるのでご法度です。
中に納まるメッシュフィルターは、洗浄して再使用します。外した逆の手順で組付ければ良いのですが、スプリングの向きとメッシュフィルターのインサート時に慎重さが必要。
メッシュフィルターはしっかり奥まで収め、指で押さえつつ右回転させ、ロックできるところまで回します。初めて作業する人は、ここの溝に収まることでロックされると形状の特性に気づくのですが、一連の作業を丁寧にやらないとフィルターをロックできないことから不具合の元になるかもしれません。取扱説明書通り、確実に作業することが大切です。
フィルターの取り付けは、手締め→カップレンチ→トルクレンチという手順になります。これは純正フィルターでも同じなので、間違える人は少ないと思います。ただし、僕と同世代以上(50代後半以上)では、『そんなもん、思いっきり手締めすりゃあいい』等と、トルク管理しない人もいます。これは当然のことながらNGです。昔の知識やノウハウが、現代にも通用すると思ってはいけない。モノも作業技術も時の流れとともに日々進化しているのです。作業が完了したら、エンジンをかけてオイル漏れをチェックします。取扱説明書通りに作業していれば失敗することは皆無だと思いますが、念のためにしっかり確認しておくことをお勧めします。
参考リング
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使う人によって結果は異なるかもしれない
今回レポートしたタイヤ、オイルフィルターは、物理的に性能を数値化できるものだと思います。しかし、僕も含めたユーザーレベルでは、研究機関のような検証は現実的に不可能。レビューは実際に使ってみてどうだったのか?と、個人的な感想を述べるに過ぎません。K&Pエンジニアリングのステンレスマイクロニックオイルフィルターについては、再使用性も含めてほとんどの人が性能を体感でき、感想も同じようになると思います。シンコータイヤ・ヴァージについては、VMAX1700ユーザーでも同じような感想になるとは限らない。タイヤの性能は、乗り手のスキルや走行シチュエーションによって体感に違いが表れるからです。さらに別の車種となれば、また異なるフィーリングになることでしょう。つまり、製品の良し悪しは、使う人に合っていれば良いとなり、そうでなければ悪いと評価されがちです。何かを購入する際、ショッピングサイトのレビューやSNS等をチェックすると思いますが、特に悪いと評されている場合は、その書き手にとって合ってなかっただけだと変換してみれば、本物の高性能品を見つけ出すことは意外に容易だと思います。
これまで紹介してきたバイクやパーツと同様に、僕は走り込みによって性能をチェックしています。晴れの日も雨の日も、快走出来る道だけなく、酷道と呼ばれるルートや山岳地の林道も走り、時には小川もわたります。よく製品についてのレポートやレビューでサーキットでの検証を挙げられていますが、僕はストリートにおける使い勝手にこだわって確認します。僕自身の人生を振り返ってみても、サーキットを走るより公道を走っている時間の方が圧倒的に長いからです。今後も、乗って乗って、乗りまくって検証していきたいと思います。
■ライター:KAZU中西
フリーランスのモータージャーナリスト。通称カズ兄さん。イベントMCやラジオDJ(FMIS・カズ兄さんのモーターレボリューション)などタレント業でも活躍。
観察分析力に定評があり、開発に携わったバイク用品やカスタムパーツも多数。
一方では、二輪車の事故防止&安全利用の最前線に立つ『Mr.事故ゼロ』とも呼ばれている。愛車はスペシャルメイドのZ2他。趣味はプレジャーボートのクルージング