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【遠藤イヅルの名車カタログ】第47回 MVアグスタ 750Sアメリカ
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- 2018.03.11
毎週イラストレーター遠藤イヅル氏による名車・珍車を紹介するコーナーです。今週の名車は、コアなファンを持つイタリアの名車MVアグスタの中から、「MVアグスタ 750Sアメリカ」のご紹介です。
■MVアグスタ 750Sアメリカ ■エンジン:空冷DOHC2バルブ4気筒788㏄
■最高出力:75hp/8500rpm ■最大トルク:5.9kgm/7800rpm
戦後にレースで大活躍したイタリアの名門バイクメーカー、MVアグスタ。
1920年代に「ジョバンニ・アグスタ航空機会社」を設立した
ジョバンニ・アグスタを父に持つドメニコ・アグスタは、
父の死後も航空機製造を続けるも、第二次世界大戦の敗戦で
航空機の製造が禁止されたことからバイク産業へ転身。
その際に生まれたのが、MV(メカニカ・ヴェルゲーラ)アグスタだった。
ヴェルゲーラ(Verghera)とはミラノ近郊の地名である。
終戦の1945年に「Vespa98(MV98)」の製造を開始したMVアグスタは、
1946年には早くも地元のレースで初優勝を飾った。
100〜125ccクラスの初期MVアグスタは2ストエンジンだったが、
以降1950〜1970年代にかけて単気筒175cc/250cc、
ツイン250cc/350ccなど次々とバリエーションを展開していった。
一方、MVアグスタの象徴とも言える直4エンジン搭載バイクは、
1960年代にすでにバイクレースでも数々のタイトルを
MVアグスタにもたらしていた。
特に1967年から1973年は、
ライバルのホンダがGPから撤退していたこともあって、
MVアグスタは7年連続でタイトルを獲得した。
MVアグスタの量産4気筒バイクは1968年登場の「600GT」だった。
同社は、これをベースにGPマシンのイメージを盛り込んだ
「750S」を1969年に送り出し、
さらに1971年にはレーサーレプリカそのものの姿が魅力的な
「750SS」を登場させている。
イラストに選んだ「750S アメリカ」は、
その名の通り対米輸出向けも視野に入れて開発されたモデルで、
それまでの美しい曲線を多用したボディとは大きく印象が異なるが、
1970年代的イタリアンデザインのエッセンスに溢れた
近代的かつ無骨でスクエアなスタイルは、むしろ一層獰猛さを感じさせる。
GPレーサーの血統を持つ4気筒エンジンの排気量は788cc、
最高出力は80psに達した。
750S アメリカの発売が開始された1976年、
MVアグスタはレースから撤退。
さらに翌1977年には、社業を本来の航空機のみにするべく、
バイクの製造自体を終了してしまった。
この時すでにドメニコは亡くなっており、
社長は弟のコラードが継いでいたのだった。
それゆえ、MVアグスタのバイクは今なお伝説的な存在として、
バイクファンの心をつかみ続けている。