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【遠藤イヅルの名車カタログ】第49回 ベロセット・ベノム・スラクストン

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  • 2018.04.15

毎週イラストレーター遠藤イヅル氏による名車・珍車を紹介するコーナーです。今週の名車は、当時から高い性能でマン島TTレース常勝マシンとなった英国車「ベロセット・ベノム・スラクストン velocette_venom_thruxton」のご紹介です。

■ベロセット・ベノム・スラクストン  ■エンジン:空冷単気筒OHV499cc

■最高出力:40hp/6,200rpm


戦前から戦後の1960年代にかけて、

イギリスには高性能なバイクを生み出すメーカーが数多く存在した。

その頃日本のバイクが世界中に進出を開始し始めたため、

イギリスのバイクメーカーもほとんどが消滅していった。


名バイクメーカーとして名高い「ベロセット」も創立は1900年代と古く、

ジョン・テイラーとウイリアム・ギューが作った

「テイラー・ギュー有限会社」を始まりとする。

彼らは「ベロス(Veloce)」社としてバイクを生産していたが、

1913年に発売した2ストのバイクから

「ベロセット」の名称がすでに現れている。


高い性能と独創的、先進的な機構を備えたベロセットは

戦前からレースに積極的に参戦し、

マン島TTレースなどで幾多の勝利を得た。


戦後の1949年には個人需要や市場拡大を目指した

「LE」(Little Engineの略)を社送り出した。

その一方で、ベロセットらしくクラブマンレース参戦も見越した

「クラブマン」も1959年以降カタログに用意された。


当時のベロセットの最高峰は500ccの「ベノム」で、

1956年に登場。なお350ccは「バイパー」と呼ばれた。

ハイカム化された4スト500cc単気筒OHVエンジンには

4速クロスレシオのミッションが合わせられ、

数多くの勝利をベロス社にもたらした。


ベノム、そしてベロス社の最後を飾るのが

1964年に追加された「ベノム・スラクストン」だ。

シリンダーとヘッドをアルミ製とするなど

高度なチューニングが施され、

BSAゴールドスター無き後の

500cc単気筒最速のモデルとなった。


しかしメカニズムの古さは如何ともし難く、

また、急激に進むバイクの乗り方の多様化と

高性能化の中では、ベロセットのバイク、

いや多くのイギリス製バイクではもはや対応できなかった。

そのためベロス社もついに1971年に倒産。

高い技術と高品質を誇ったバイクメーカーがまた一つ

惜しむらくも消えてしまうことになったのである。


制作・協力

(イラスト・文)遠藤イヅル

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