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60代も70代もカリフォルニアでモトクロス三昧! 第40回ワールドVET

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  • 2024.12.13

今回はカリフォルニア州グレン・ヘレン・レースウェイで開催されたワールドVET MXの模様をご紹介します!

11月1~3日、アメリカ・カリフォルニア州郊外にあるモトクロスサーキット、グレン・ヘレン・レースウェイで『ワールド・ベテランズ・モトクロス・チャンピオンシップス』

が開催されました。ワールドが付くだけに世界26各国から、ベテランズというだけに中高年ライダーが1200台以上集まってレース三昧と国際交流を繰り広げる祭典とも言える華やかな大会で、今年で開催40周年を迎えました。

 

 

  • 年齢別×技量別で走るクラス分けが人気のヒミツ

ワールドVETの大きな特徴は、同年代・同レベル同士で走ることで、これがライダー達には「年齢も技量も同じくらいのライダーとレースできるのは最高に楽しい!」と大好評です。年齢別は5歳刻み、技量別は3段階(エキスパート・インターミディ中級・ノ-ビス)に分かれ、そのためクラス数は30以上もあり、なるほど1200名以上のエントリーにもなるわけで、朝から夕方までひっきりなしのレース三昧が続くのです。

ワールドVETは毎年11月第一週末と決まっていて、他にも多くのレースが開催されているグレン・ヘレンも、このレースウィークだけは例えば80歳代のライダーでも安全に周回できるようにとの配慮から、ジャンプは削られマイルドなコースに変身します。とはいえグレンヘレン名物の長い登りと下りセクションは健在で、ライダー達は他にないジェットコースターライドを満喫できるようです。

レースウィークの金曜は公式練習日で、土曜と日曜が決勝レース。ライダーは土・日で計3レースを走り、各レース順位の合計で総合順位が決まるという少し変則的な大会でもあり、

3レースとも大きなミスなくいかに上手く順位をまとめるか、というところがポイントにもなります。

 

一気に駆け上がり、激しく駆け降りたと思えば再び駆け上がるを繰り返す、これぞまさしくグレン・ヘレンの洗礼。

 

40台一斉スタートはモトクロスの醍醐味。1200台以上で週末3レースを消化するため
2列、3列スタートも採用され大賑わい。

 

コースも広大ならパドックもまた見渡す限りの広さ、見て回るだけでもレイシーな雰囲気一杯で圧倒されます。

 

こちらは賞金プロクラスの表彰台。3人とも50歳を過ぎた往年のライダー達、実にかっこいいオジサマばかりです。

 

  • +65歳クラス、レジェンド伊田井佐夫さんが念願のチャンピオンに

日本からは5名のライダーが参戦しました。井口充さん(+45ノービス)、源治篤さん65歳(+60・+65エキスパート)、チャンドラー佐藤さん67歳(+60・+65インターミディ)、伊田井佐夫さん68歳(+60・+65エキスパート。1986年全日本MXチャンピオン)、そして古川正昭さん71歳(+70ALL)。それぞれのクラスで3レースを思いきり全開した結果、伊田さんが+65エキスパート総合優勝で念願のワールドVETチャンピオンに。チャンドラーさんは+65インターミディ総合2位、源治さんは+65エキスパート総合5位を獲得して、レース後に大きなメダルを授与されると共に、副賞のグレン・ヘレン特性ビールジョッキをゲットしました。夜、このジョッキで大乾杯したことは言うまでもありません。

「私が初めてワールドVETに出たのは2005年、49歳の時でした。もう19年も経ったんですね。」と伊田さんは遠くを見つめます。「ケガや病気をしたりゴロナ渦があったりで参加できない年もあり、世界2位で悔しい年もありましたが、通算13回目の挑戦でやっと獲ることができました。」と大変嬉しそうです。その情熱は一体どこから来るのでしょう?

「何歳になってもモトクロスが楽しい。ここへ来ると70歳代の先輩も大勢いて、好きなら走っていていいんだと納得します。私は50歳の時にMTBダウンヒルで世界一になったので(※UCI MTBワールドマスターズ ダウンヒル+50チャンピオン)、じゃあ今度はベテランモトクロスで、と思ったんです。」

 

日本人全員をピットに受け入れてくれた現地の『バイクレンタルKNOBBY・STAPO』で。LA在住の井口さんはマイバイクで、源治さん、チャンドラーさん、伊田さんはバイクレンタル&レースサポートを利用、古川さんは日本からLA到着後にニューバイクを購入しての参戦でした。

 

キャリアナンバー130で全開する伊田さん。バイクは日本でも乗っているスペインのGASGASをレンタル。

 

スタートダッシュは若い頃から得意でホールショットを奪いに行く。2番手に北海道の源治さんが追いかけます。

 

慣れないコース、愛車と同じブランドとはいえ慣れないレンタルマシンだが「攻略する、上手く合わせる」熟練の集中力を発揮。

 

レース1を3位で終えたものの、レース2とレース3を1位でタイトル獲得。ライバルの1人#86カナダの65歳レジェンドとの接近バトル。

 

メダルを下げて記念撮影、左から源治さん、伊田さん、チャンドラー佐藤さん。

 

伊田さんの金メダル。1stの下にあるfeel the speed はスピードコースであるグレン・ヘレンの合言葉。

 

  • 古川さん始め、元気にモトクロスを謳歌する70歳代・80歳代

九州・佐賀県から渡米した古川さんは71歳、実はワールドVETは決意のリベンジ参戦でした。それというのも以前、レース前の練習走行で大怪我を負い、コース近郊の病院で入院・手術を受けた壮絶な経験があります。それでも決して諦めずに何年もかけて再挑戦の計画を立て、今年それが実現したのです。最初は少し慎重に、徐々に慣れてスピードに乗って、3レースを15位/8位/8位と無事完走、+70クラスの全21台中総合10位、トップ10入りを果たしました。走り終えた古川さん、喜びと安堵でなかなか興奮が冷めません。

「すべてが広いし大勢いるしで、スタートに並ぶ時から雰囲気に圧倒されました。そして

スピードの出方が、日本と全然違いますね!コースのレイアウトがまたすごい。でも年寄りも走れるように作られているんですね。ワールドVETは、モトクロスが好きで興味があれば、誰でも走れる大会なんですね。とにかく無事に走れてよかったです!」

ワールドVETには、年上のライダーをリスペクトする文化が根付いています。50代は60代に、60代は70代に敬意を払い、自分自身もその年齢まで元気で走りたいと思うのです。

今年の最高齢ライダーは81歳と11ヶ月、しかも+80クラス総合2位に入るスーパーぶり。「モトクロスは楽しいネ!」とてもシンプルな動機が、走るパワーの源です。

 

古川正昭さん71歳、渡米直後にロサンゼルスで購入したピカピカのバイクで参戦。「遠征費は年金から調達しました(笑)!」

 

アメリカ在住経験もある佐賀県人、松田さんのアテンドを受けて体制は万全、いよいよ決勝レースに挑みます。

 

大クラッシュでレースを走れなかった以前の反省をバネに、公式練習からレースまで慎重に組み立てました。

 

レース1で転倒があったものの、レース2、レース3と調子も出てアクセルも全開、スピードコースを堪能しました。

 

+70クラスでトップ争いを見せてくれたのはアメリカン・レジェンドのG・ジョーンズさん、バイクもクール。

 

いつも奥様と一緒、毎年参戦しているマチャドさんは79歳、来年いよいよ+80タイトルを狙います。

 

3レース全て1位で+80タイトル獲得のB・フーバーさん、カリフォルニアの超レジェンドです。

 

グレン・ヘレン入口にある鉄のオブジェ。これを見て世界中のワ-ルドVETライダーが「今年も来たぜ!」と気合いを入れます。

 

制作・協力

■文・写真:高橋絵里

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