他カテゴリ記事を絞り込んで探す
【遠藤イヅルの名車カタログ】第82回 スズキ・TL 1000R
- おすすめコラム
- 2019.09.01
毎週お届けするイラストレーター遠藤イヅル氏による名車・珍車を紹介するコーナーです。 今週の名車は、90°Vツインエンジンを搭載するスーパースポーツモデル「スズキ・TL 1000R」のご紹介です。
■スズキ・TL 1000R ■エンジン:995cc水冷4ストV型2気筒
■最大出力:93ps/8500rpm ■最大トルク:8.6kg-m/7000rpm
レースで成績を残すことが出来なくても、売れなくても、
強烈な印象を記憶に植え付け、そして消えていったバイクがある。
1998年にスズキが発売したTL1000シリーズは
まさにそんな一台だった。
登場の背景には、
1988年にスタートしたバイクレース「スーパーバイク選手権」の存在があった。
当初は、4気筒=750ccまで、2気筒=1,000ccまでだったために
排気量でハンデがある国産の4気筒バイクは苦戦。
そこで、ホンダとスズキは1000ccのVツインモデルと
レーシングバージョンを投入した。
ホンダは「VTR1000F」をベースにした「VTR1000SP1/SP2」を発売、
ワークスレーサーがスーパーバイク選手権で2000年と2002年に
チャンピオンに輝くなど、輝かしい戦績を残した。
一方のスズキも同様にロードスポーツの「TL1000S」と
フルカウルの「TL1000R」を展開。
しかし、結論から言ってしまうと、TLシリーズは
成功作とはいえなかった。
その理由の一つに、先行して発売したTL1000Sに採用の
「ロータリーダンパー」が挙げられる。
Vツインバイクで避けられない、長くなるホイールベースの対策として
スズキはリアサスペンションに着目、
ダンパーとスプリングを分離したロータリーダンパーを開発したが、
これの動きが芳しくなく、フロントの挙動をも不安定にさせてしまった。
スズキは対策として、フロントにステアリングダンパーを
“リコールで後付け”して凌いだ……という「伝説」が残っている。
そのため、改良して後からデビューした
レーサータイプのTL1000Rの方が乗りやすかった、とも言われている。
しかし、そのTL 1000Rも、肝心のレースでは成績を残せなかった。
なお、TL1000シリーズを迷車たらしめたロータリーダンパーは、
TL1000Sの後継「SV 1000S(2003年)」では採用されていない。