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【遠藤イヅルの珍車カタログ】第93回 ヒラノ・バルモビル
- おすすめコラム
- 2020.02.23
毎週お届けするイラストレーター遠藤イヅル氏による名車・珍車を紹介するコーナーです。 今週の珍車は、1960年に発売された超小型バイク「ヒラノ・バルモビル」のご紹介です。
■ヒラノ・バルモビル ■エンジン:2サイクル空冷単気筒
■最大出力:2.8ps/6,900rpm
戦後のバイク業界では、復興需要の追い風を受けて
現在では消えてしまったメーカーが数多く存在しました。
愛知県名古屋市で、戦前にはオート三輪を、
戦後はモペットやスクーターも製造していた
機織り機メーカーの「平野製作所」もその一つです。
平野製作所のバイクといえば「ポップ」などが知られていますが、
同社には隠れた名物バイク?がありました。
それが「バルモビル」という超小型バイクです。
1960(昭和35)年に発売されました。
バルモビルはトランク状のボディ後半にフレームやハンドルを収納して
持ち運びができてしまうという「折りたたみバイク」で、
元々は第二次世界大戦時にフランス軍が
パラシュートで投下後に地上で組み立て、偵察などに使用した軍用バイクを
1952年に民生転用して生まれた「Valmobile」がベースでした。
これを平野製作所がライセンス生産してアメリカへ輸出したのですが、
わずかながら日本でも販売が行われたそうなのです。
生まれ故郷のフランスでは、
美しい女性や軽飛行機をバックにしたカタログが示す通り、
まさにレジャーバイクとして生まれました。
当時の日本ではようやく「レジャーを楽しむ時代」になった頃。
それなのになぜ日本でレジャーバイクを・・・?ということなのですが、
折からの繊維不況で、平野製作所では本業の繊維機械部門がピンチに。
そこでバルモビルも国内販売を行ったのでした。
その際はやはりレジャーバイクとしてではなく、
折りたためる便利な移動手段、という触れ込みだったそうです。
画期的なバイクでしたが1961(昭和36)年の平野製作所倒産とともに消滅。
短い生涯を終えてしまいました。