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実戦で知るマシンの戦闘力fromFSWミニろく2023最終戦
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- 2024.01.17
【KAZU中西の鋼騎馬ラプソディ】vol.173。『FSWミニろく』にライダーとして参戦されたKAZUさん。マシンの戦闘力をレポートいただきました!
見るより乗る方が断然楽しいFSWミニろく。そして、走れば分かるマシンの性能と自車のポテンシャル。今回はカワサキプラザ山梨チームの第2ライダーとして参戦、コース上で気づいた様々なことを、ライダー目線で紹介します。
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見ると乗るでは大違い!?超グローバルクラスの戦闘力
富士スピードウェイのレーシングコース・ショートサーキット・カートコース、そして筑波サーキットと、全6戦のシリーズとなったFSWミニろく2023。前回=第5戦レーシングコース戦では、放送席からレース全般を観て実況解説。ラップモニターに表れる順位や数値からマシンの戦闘力を観察していました。今回=最終戦では、僕自身がコース上に出て、実際の現場で生の走りを観察し、データだけでは分かりにくいマシンやチーム、ライダーの戦闘力を目の当たりにしました。どのコースでも速いのは85クラスですが、ショートサーキットではスーパーグローバルクラスが強いようです。
僕は2015年まで自身が監督を務めるチームで参戦、同年に現役引退を宣言したのですが、2016年以降は「雇われライダー」として、カワサキプラザ山梨チームで走っています。同チームは年に1~2回の参戦であるため、参戦しないレースでは解説者としてFSWミニろくに参加しています。
ショートサーキット戦では大林道路様に大会をスポンサードいただいています。前エントラントに成り代わり、この場を借りて御礼申し上げます。
ショートサーキット戦もルマン式スタートを採用。第1コーナーまでの距離が無いから直後は大混雑。ここで上手く前にすり抜けられれば、レース進行は優位になります。
ショートサーキットは高低差の大きいトラックレイアウトであるため、排気量差やMAXパワーの差から、混戦模様になりがちです。
カワサキプラザ山梨チームのZ125PROはグローバルクラスの中でも低パワーの部類なので、いとも簡単に抜かれることがほとんど。なので、後方から皆さんの走りを観察、勉強できるというメリットもあります。
スーパーグローバルクラス優勝の#99SCSレーシングチーム。マシンはGSX-R150です。前回のレーシングコース戦ではクラス10位でした。走行データやコースカメラの映像から、速いマシンだと思っていましたが、実際にコース上で会うとスピードのノリが良いと分かります。
スーパーグローバルクラス2位の#5Y’sFactory+KRT Factory+ぽんdeれーしんぐ。マシンはGSX-R150です。3コーナー以降バックストレートの走り方が絶妙で、パッシングの上手さが光っていました。
スーパーグローバルクラス3位の#15RT MotoRockです。前回レーシングコース戦ではMT-15でしたが、今回はGSX-S150にスイッチ。スマートに抜きまくっていたのが印象的でした。
スーパーグローバルクラス6位の#20 F-RT.with EGん屋さん。マシンはYZF-R15です。正立フォークなので、いわゆる初期型のYZF-R15と思われます。今回のスーパーグローバルクラスはスズキ勢が多く孤軍奮闘。マシン性能を生かした安定的な速さだったと思います。
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長期観察で確認!あるチームマシンの強さ
FSWミニろくでは、十数年以上参戦している老舗チームがいくつかあります。僕自身は2010年頃より参戦し、レース解説もやっていますから、長きに渡り観察できているというか…。特に85クラスに参戦しているチームは、仙人と称しても過言ではないくらいのFSWマイスター揃いです。マシンは2スト85ccまでがレギュレーションとなっており、ミニバイクならではのタイトでクイック、超フルバンクコーナリングが特徴。また、歴戦の強者ライダーが多いせいか、パッシングの際にスパッと切れのある走りを見せます。同様の強さを見せているのが、125I(アイ)クラスと125C(シー)クラス。どちらも排気量を守ればどんな改造も…その気になればオリジナルフレームも使用可能。いわゆるオープンクラスになります。この2クラスもミニバイクレースの強者揃いで、前述した85クラスまで含め、実戦経験の多さがチームの強さ、マシンの速さにつながっていると分かります。
85クラス優勝の#3 RIZIN+Power House Sports+MAKANI。マシンはNSR80です。迷い無きパッシング術に、ただただ凄いなとトラック上では思うばかり。実況解説でも、よく出てくるチーム名なので、FSWミニろく仲間にはすっかりお馴染みと言ったところでしょう。
85クラス2位の# HEARTS racing+FUN-B+走魔。マシンはNSR80です。今回のレース結果こそクラス2位ですが、トラック上ではスムーズな走りで際立っていました。抜かれた時に気づいたのは、レース用マシンとしての仕上がりがハイレベルであること。押し引きする段階でもかなり軽やかなマシンなのでは?と推測します。
#23一国Racingと#11Webike Team Young、どちらもGSX-R125なので、スーパーグローバルクラスかと思いきや、実は125Iクラスでした。走行性能について、スーパーグローバルクラスとの差はほとんどなく、3コーナー以降の上り坂で排気量差が出る程度。また、FSWミニろくにGSX-R125/150が増殖しているのは、カスタムパーツの多さとチューンナップノウハウの蓄積度合いなのかな?と思います。
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実戦データから知りえるチームの成長ぶり
僕はカワサキプラザ山梨チームで、2016年と2023年のショートサーキット戦を走りました。マシンはZ125PROで、チーム運営では良くも悪くも様々に経験してきました。今回のライディングで感じたことは、ライダーがマシンに慣れてきたこと、チーム運営がスマートになってきたこと、勝つことだけが全てではない!ことです。やはりFSWミニろくは、和気あいあいとレースを楽しむスタンスが、長続きする秘訣だと改めて実感しました。記録に残るデータの話では、2016年シーズンはベストタイムが41.684秒、平均スピードは64.590km/hです。対して2023年シーズンは41.300秒、61.560km/hです。数字で言えば、スピードは落ちたのにラップタイムは良くなった。実は今回のマシンセッティング、レーシングコース仕様のロングファイナル設定で、エンジンを回しきれないからストレート区間で速度が伸びない。下り坂でもスピードが足りない!上り坂ではパワー感が無い!各ライダーはいかにロスを少なくするか、減速し過ぎないかにテクニックを駆使し、知恵を絞った結果だと言えます。僕自身も、普段はやらないラインどりとか、ブレーキングなど、マシンのポテンシャルを最大限に引き出すつもりで頑張りました。
チーム監督は吉田雄介GMが務めるカワサキプラザ山梨。メンバーは入れ替わっていますが2016年からマシンはZ125PROを継続。グローバルクラスになります。
レースを楽しむ姿勢はモチロンですが、実はパドックグルメにもこだわっているカワサキプラザ山梨。今回は野菜鍋を用意。冬場のレースですから温かい食べ物はありがたいです。
参戦初年度のZ125PROです。ファイナルはSTDですが、ドライブチェーンはRKジャパンの高品位モデルに変更。この年はタイヤチョイスのノウハウが無かったせいもあり、コーナリングに苦戦しました。
その後、レーシングコース戦を経て、数年ぶりにショートサーキット戦へ。2023年は、レーシングコース戦仕様のままで、エンジンを回しきることができませんでした。ストレートで負けてもコーナリングで勝つ!特にブレーキングで頑張りました。僕自身は減量も上手くいっていたので、レースの結果には残念ですが、次に走る機会があれば、エントラント皆様の邪魔にならないよう、可能ならばバトルが楽しめるようにしたいと思います。
参考リンク
■ライター:KAZU中西
フリーランスのモータージャーナリスト。通称カズ兄さん。イベントMCやラジオDJ(FMIS・カズ兄さんのモーターレボリューション)などタレント業でも活躍。
観察分析力に定評があり、開発に携わったバイク用品やカスタムパーツも多数。
一方では、二輪車の事故防止&安全利用の最前線に立つ『Mr.事故ゼロ』とも呼ばれている。愛車はスペシャルメイドのZ2他。趣味はプレジャーボートのクルージング