他カテゴリ記事を絞り込んで探す

『HRC Sakura』から、ホンダのモータースポーツへの 新たな挑戦が始まる。

  • おすすめコラム
  • 2022.08.24

今回は、HRC(ホンダ・レーシング)についてどのような活動をしているか、魅力等を交えながらご紹介します!

HRC=ホンダレーシングは、これまで二輪のレース活動を担ってきた。日本のみならず世界のあらゆる分野のモータースポーツ・タイトルを獲得してきた。常に勝つことを目指した集団だ。今年、創立40周年を迎えたこのHRCが、四輪レース活動機能を追加することを発表した。二輪のMotoGPとともに、四輪の最高峰レースであるF1への支援をする。二輪と四輪の互いの技術力を高め、さらに強う組織を目指すという。

 

【目次】

1.HRC(ホンダ・レーシング)とはどんな集団なのか?

2.HRC Sakuraの施設紹介

 

 

 

  • HRC(ホンダ・レーシング)とはどんな集団なのか?

先日、3年振りに開催となった“真夏の祭典”こと鈴鹿8耐(FIM世界耐久選手権・鈴鹿8時間耐久レース)において、予選から決勝まで圧倒的速さを見せ、完璧なレース展開で優勝を果たしたホンダのワークスチームである「#33Team HRC」(長島哲太/高橋巧選手/イケル・レクオーナ組)。ホンダにとって2014年以来8年(5大会)ぶりの勝利は、正に“強いホンダ”の復活と言ってよい。

 

 HRC(ホンダ・レーシング)は、2ストロークV型3気筒のNS500で世界GPに挑んだ1982年に設立。翌1983年は“HRC”ロゴを付けたNS500が世界タイトルを獲得。以降、HRCは世界のあらゆるカテゴリーでの栄光に加え、モータースポーツ裾野の拡大にも貢献してきた。勝ちにこだわるDNAを受け継ぎ、常に勝つことを使命とする集団である。

 

 これまでホンダの二輪レース活動を担ってきたHRCであったが、9月1日に創立40周年を迎える今年は四輪レース活動機能を追加。モータースポーツ体制の強化を図っており、二輪ロードレースの世界最高峰・MotoGPに対し四輪の最高峰であるF1では2チームに技術支援、4台のマシンにパワーユニット(PU)を供給。内1チーム、レッドブル・レーシングは今シーズン、現時点でドライバー、チーム共にランキングトップを快走中だ。尚、レッドブル・レーシングとの協議により、2023年から2025年までPUに関する支援が延長されたことも発表されている。

 

 四輪のレース活動が加わったことで二輪と互いの技術力を高め、さらに強い組織を目指すHRCだが、取り組みのひとつに「持続可能なモータースポーツを目指したカーボンニュートラルへの対応」を掲げている。カーボンニュートラル燃料の実用性向上に加え、小型・高出力・高効率なモーターやバッテリーの研究開発など、レースを実証実験の場としているのは、ホンダの伝統“走る実験室”が今も脈々と受け継がれていることを表している。

 

 栃木県さくら市に第4期F1活動をはじめとする最新鋭の四輪モータースポーツの技術開発を行う施設として2014年4月に設立され「HRD Sakura」が、今回の新生HRCの誕生に伴う組織変更によって2022年4月に「HRC Sakura」へと名称変更。今回、風洞やシミュレーターなど、その内部がメディアブリーフィングとして公開され、二輪・四輪のモータースポーツの新体制と今後の活動方針について発信が行われた。

 

 二輪モータースポーツにおいては従来通り朝霞をメインに研究開発が行われているが、今後はSakuraの施設も活用していきたいとのこと。後半戦がスタートしたMotoGPはエースのマルク・マルケスが肩の四度目の手術で戦線離脱、残念ながら今シーズンは苦しい戦いを強いられているが、サマーブレイク中にマシンの改良が進み、今後の戦いに期待してほしいとのこと。9月25日、地元開催となるMotoGP・日本ラウンドでの戦いぶりに要注目である。

 

 

  • HRC Sakuraの施設紹介

栃木県さくら市にあるHRC Sakuraは、同県芳賀郡にある四輪市販車の研究施設からクルマで約40分くらい。敷地面積は230ヘクタールでプルービンググラウンド、ソーラー発電所、環境学習エリアなどもある。

 

 

 

自動車用として世界最大クラスというステンレス製1ベルトをもつ対流式の風洞。ヒトとの対比でメインファンの大きさがわかる。ターンテーブルにより横風の影響も計測可能。最高速は200キロまでだが、アダプティブウォールシステムを利用することで280キロまでのテストも可能。

 

 

DIL(Driver In the Loop simulator)は鈴鹿サーキットやドイツ・ニュルブルクリンクのバンプなども再現。ドライバーは三半規管などからリアルなドライビング感覚が得られる。セッティングやパーツ開発などにも貢献。

 

 

SMR(Sakura Mission Room)は世界中のサーキットとネットワーク回線で繋ぐことでリアルタイムで走行データを監視、最前線に戦略アドバイスを送る部屋。F1では4台のエンジンのデータを監視しているという。

 

 

RV(Real Vehicle)ベンチではレース1~2週間前にエンジンを回し、サーキットの特性や気温・湿度・気圧に合わせエンジンを最適化、ダメージなどを洗い出す。

 

 

エンジン組み立て室。年間3基しか使えないF1エンジンをメンテナンス。担当スタッフは志望による新入社員やディーラーメカ出身者も起用される。

 

 

HRC Sakuraは四輪メインの研究施設であるが、HRC全体の活動を知る機会として今回、二輪メディアにも公開された。プレゼンテーションでは株式会社ホンダ・レーシングの(左より)取締役 二輪レース部 部長の若林慎也氏、代表取締役社長の渡辺康治氏、常務取締役 四輪レース開発部 部長の浅木泰昭氏、取締役 企画管理部 部長の長井昌也氏が新生HRCについて説明。

 

 

若林部長と並ぶのは、マルク・マルケスのライディングによって2019年のMotoGPチャンピオンとなったRC213V、先日行われた鈴鹿8耐で優勝したCBR1000RR-Rのテスト車両。

 

 

世界GPで250ccクラスと共にフレディ・スペンサーによってダブルタイトルを獲得したNSR500(1985)、3名のライダーによって全15戦全勝のNSR500(1997年)、MotoGP初年度を制したRC211V(2002年)、パリダカ4連覇を達成したNXR750(1989年)など、エントランスホールに「HRC40年の歩み」として展示された車両。

 

 

制作・協力

■取材・文:中山五朗 ■協力:HONDA

 

オークネット提供サービス一覧
© 2016- AUCNET INC.