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【石塚健の目指せMotoGP】第10回 CEVレプソルインターナショナル選手権 第7戦・第8戦

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  • 2020.11.28

【レーシングライダー石塚健の目指せMotoGP】vol.10。今回は、CEVレプソルインターナショナル選手権の第7戦・第8戦をレポートします!

こんにちは。レーシングライダーの石塚 健です。

今回は、スペインにあるバレンシアサーキットで行われた、第7戦・第8戦をレポートします。

  • 資金不足の危機を乗り越え…

最終戦となる今回は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による資金不足で、参戦ができるかどうかギリギリの状態でした。


新型コロナウイルスは、レースの開催スケジュールだけでなく、応援していただいている企業の状況も大きく変えてしまったのです。


しかし、ギリギリまでスポンサーを募り、チームと支払い期限の交渉をするなど、様々な調整を経て、多くの応援して頂いている方の協力もあり、なんとか参戦することができました。


そんな状況の中で行われたCEV第7戦・8戦は、またしても1回のレースWEEKで、週末にレースは2戦分という強行スケジュール。


10月28日に35分間のフリープラクティス(FP)が3本、29日に40分間のFPが2本、30日に40分間の公式予選が2本、31日に15分間のウォームアップと第7戦の決勝レース、11月1日に15分間のウォームアップと第8戦の決勝レースがおこなわれました。


バレンシアは数少ない左回りのサーキットで、実は少し苦手意識があったのですが、走りだしは良好。すぐに自己ベストを更新し、どんどんタイムアップしていくことができました。

  • 予想もしていないアクシデント発生!

しかし、今回も問題が発生します。


まず、日本からレースの度に通いで参戦している僕にとって、レースに必要な荷物の運搬は大きな問題です。できるだけ経費は抑えたいので、格安航空券を毎回探して移動している為、預け入れ荷物には重量制限があり、空港でチェックインをする時は、いつもギリギリ。事前に宅急便で送る方法も無駄にコストがかかってしまいます。


そのため、レースごとに日本では使わないものなどを少しずつ、チームのトラックに置いて帰っていたのですが、前回置いて行ったはずのブーツが見つかりません。


幸い、前回ボロボロになってしまい、修理が必要となった右側は日本に持って帰っていたので、無くなったのは左側のみでしたが、そうなると使用できるのは今回日本から持ってきた1セットのみで、左側の予備がありません。


「大丈夫かなあ・・・。」

不安になりながらも走行を重ねていると、案の定、左側の靴底がすり減って今にも穴が開きそうな状態になってしまいます。


しかし、今さら買いに行く訳にもいかず、現地に居た他メーカーのサービススタッフの協力を得て、ガムテープで応急処置をしながら走るしかありませんでした。


とは言っても、これ以上削れたら修理すらできなくなってしまいます。そうなると、新しいブーツを購入しなくてはならなくなる為、これも余計な出費。できれば修理ができる状態で日本に持って帰りたい僕にとっては、かなり心配な要因です。


海外でレースをしていると、日本では簡単に対応できるようなアクシデントも、かなり致命的な状況を引き起こすので、細心の注意が必要となります。


今回の件も、ガムテープで補修したブーツがライディングに影響するということはありませんが、装備車検などで安全性の問題を指摘されてしまうと、このブーツはレースで使えなくなってしまうため、決死の思いでこの場所まで来たのに、出場できないなんてこともあり得るのです。


こんな風に、海外でレースをしていると、予想もしていなかった心配事が続々と出てきます。

  • アウェイでレースをすることの難しさを改めて体感

そして、ふたつ目の問題。それは、今までに感じたことのないレベルでの、左腕への負担でした。


約30分から40分程度の1セッションを、走り切るのが辛いほどの強烈な張と痛みを左腕に感じ、その痛みが走行を重ねるごとに蓄積されていったのです。


この問題も、日本では走行後に病院に行くなどの対処ができますが、ヨーロッパでは自分で解決するしかありません。今回は、こういった日本でレースをする上では大した問題ではなかった事が大きな壁となる、アウェイでレースをすることの難しさを改めて体感することになりました。


(ちなみにこの左腕の痛みは、帰国後病院で見てもらったところ、重度の腱鞘炎とのことでした。)


ライダー・マシン共に、タイムやパフォーマンスは悪くないのに、クラッチ操作がかなりキツイ。そんな状況に、自己流のテーピングや痛み止め、グリップの握り方を変えるなどの試行錯誤をして、予選・レースに挑むことになりました。


予選結果は、1分37秒933で13位。レースは第7戦・8戦共に10位でした。


コロナ禍のなかスケジュールが大きく変わり、どんなシーズンになるのか全く想像もつかないまま手探り状態で始まった今シーズン。目指す場所には、まだまだ届きませんでしたが、フィジカルやメンタル、レース内容などすべてにおいて、明らかな成長を感じる事ができました。


日本でレースをしていた時は正直、「僕は速い」と思っていましたが、世界レベルでは全然実力が足りていないのが現状です。


しかし、2年間CEVに参戦し、出た答えは「僕は、まだまだ速くなれる」。その確信が持てたからこそ、来年はチャンピオン争いに食い込めるライダーになって戻ってきて見せます!

今シーズンも応援ありがとうございました。


来年は、絶対に楽しんでもらえるようなレースをします!引き続き、応援よろしくお願いします。

制作・協力

レーシングライダー 石塚健

バイクの窓口編集部

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