他カテゴリ記事を絞り込んで探す

【SUZUKI SV650X ABS】待望の「SV-R」は既に存在した!

  • おすすめコラム
  • 2022.05.30

今回は「SUZUKI SV650X ABS」をご紹介します!

名車SVはそのベストバランスが受け入れられ堅調な売り上げを続けている。

何かを狙うわけではない、いわゆる「スタンダードなバイク」、それのバリエーションモデルがこのSV650X。

カフェレーサースタイルも特徴だが、セパハンが運動性に与えた影響は大きい。これは一部ファンが待ち望んだ「SV-R」なのでは?

 

【目次】

1.ロングライフを達成してきたSVシリーズ

2.試乗インプレッション

3.車両詳細

 

  • ロングライフを達成してきたSVシリーズ

振り返れば、スズキのSVシリーズの歴史は90年代まで遡り、特別スズキにVツインスポーツというイメージもないようにも思うが、今となっては国産唯一のVツインエンジンを作り続けているメーカーとなっていて、このSVシリーズの650ユニットの他、Vストローム1050のリッターVツインユニットも展開している。スズキは新規エンジンを次々と投入するよりも、最初に良いものを作り、それをずっと熟成し続けるのが得意なメーカー。SVのエンジンもしかりで、SV400/650→グラディウス、そして今のSV及びSV-Xへとインジェクション化や各種規制への対応をしながらロングライフを達成してきた。

 車名にXが付くこのバリエーションモデルは、ライト周りに小さなカウルが付き、セパハン仕様&タックロールシートで「カフェレーサー」スタイルをアピール。カウルのラインとタンク横のシュラウドが繋がるようなデザインとすることでロケットカウルのイメージを追求しているが、とはいえ別段カフェレーサーの枠にはめなくても良いような、独自のルックスをしていると言えるだろう。カラーリングもこのダークグレー一色であり、スズキとしては力を入れているのか入れていないのか……各社はこういったバリエーションモデル展開に飛びついている昨今、いくらか独自の路線にも思える。

 乗っての違いはセパハンによるポジションの変更が大きいものの、それ以外の部分はベースモデルである名車SVそのままであり、間違いのないものだ。熟成のVツインエンジンがハイスピード域にもしっかりと対応する剛性の高いフレームに積まれ、それでいて日常領域でも扱いやすいという、まさに「熟成」のモデルと言えよう。

 しかしセパハン化がもたらした印象の違いは大きい。SVはそもそも車体の重心が低くかつシート高も低くサスペンションの初期沈み込みがしなやかなため、走っていて路面が近く感じられそれが安心感にも繋がっているが、セパハンのXではさらに上半身も前傾して結果としてライダー込みの重心が路面に近づくため、この感覚がより一層強くなる。フロントホイールのアクセルを左右の手で直接つかんでいるような錯覚を覚えるほどで、路面そのものを掴んで走っているかのよう。それにより生み出される一体感はさすがセパハンであり、ハイスピードで路面のうねりなどを拾ってもビクともしないしっかりした骨格と共に、かなりスポーティなペース及び気持ちで乗ることができる。

  • 試乗インプレッション

そのスポーティな味付けはエンジンによるところも大きい。スペックはベースモデルと変わらず、ベースモデルでは扱いやすい日常領域も魅力。クラッチを繋いですぐの領域が扱いやすいため、650ccのツインでも予想外にウッ!と前に出てしまう、などということがなく扱いやすい。ベースのSVはアップハンということを考えるとこれは特に親しみやすさを生んでくれている作り込みだろう。しかしフロントタイヤをしっかりとつかんでいる感覚のあるセパハン仕様のXに乗ると、逆に低回転域は少しマッタリに感じるから不思議だ。アクセルがロースロに感じ「開け増す」ような場面も多く、最初は「あれ?SVってもっとパワフルじゃなかったっけ?」と思ってしまった。ところが回転数が上がってくるほどに右肩上がりに72馬力が実力を発揮し、6500回転ほどから先は、少なくとも公道においては十分すぎるパワー。フレキシブルな低回転域と、元気なパワーバンドを持つ高回転域で、しかも振動は少なく全域スムーズ。どこか4気筒的ですらあったのだ。

スタンダードSVでは適度に緩慢な常用域がむしろ親しみやすく、そしてXでは高回転領域の「回して楽しい」パワーを解放しやすい設定。ポジション一つで同じエンジンでもこれだけ印象が変わることにオートバイの奥深さを実感させられると共に、長らく熟成してきたSVユニットにも改めて舌を巻いた。

 ルックスこそ「スタイリング重視」と受け取ってしまいそうなカフェレーサーテイストではあるが、これは実は一部スズキファン・SVファンが待ち望んでいた、スポーティ仕様のSV、「SV-R」なのではないだろうか。ペースを上げていった時の「その気になる」感覚はベースモデルとは別レベルにあった。欲を言えばさらにステップも後退させ、フルカウルに近いようなルックスにすれば、今盛り上がりを見せているフルカウルミドルスポーツ(ヤマハYZF-R7やアプリリアRS650など)のカテゴリーに即参入できるだろう。

汎用性の高い「良いバイク」であるSVはもちろん良いが、もう一歩、何か違う側面を楽しんでみたいと思うアナタにお薦めできるモデルである。

 

  • 車両詳細

熟成のVツインは親しみやすい低回転域に加え、SV-Xではセパハンになったことで改めて高回転域の魅力も再確認できた。回してこそ楽しいユニットであり、それでいて嫌な振動はどこにもなく、常に上質なのが魅力。燃費も上々である。

 

正立フォークのフロント周りはスタンダードSVでもXでも同様だが、セパハンになったことでフロントホイールを掴んでいる感覚は強くなり、今まで以上に路面に張り付いて操作しているダイレクト覚がある。

 

シンプルな鉄のスイングアームにプリロード調整機能付きリアサスを持つリア周り。特別なことはないが特別なことが必要ないのがSVのバランスだろう。160幅のタイヤが5インチ幅のホイールに装着されている。

 

とても静かで日常使いにも気兼ねのないマフラー。グラディウス時代はバンク角が深くなるとサイレンサー根本を擦ってしまうことがあったが、SVではバンク角もより確保されているようだ。

 

かなり位置の下がったハンドルに対して、ステップの位置はどうやら変更されていないようで、ハンドルとのバランスを考えるといくらか前方すぎるような感覚もある。スポーツを更に楽しむならバックステップキットなど検討しても良いだろう。

 

タックロールシートは着座位置のみブラウンとなっているのがポイント。ただ上半身が前傾しているため尻の骨がシート前方に刺さるイメージがあり長距離での快適性はスタンダードSVに譲るかもしれない。

 

トップブリッヂ下に設定されたセパハンこそがSV-Xのキモ。かなりダイレクトな操作感を生んでいて、かつ路面がさらに近くなったようなエキサイティングさがある。一部ファンが待ちわびている「SV-R」はコレなのでは? ただ長距離では前傾がきついぶん肩や首に疲労も感じた。

 

最近の煌びやかなメーターに比べるとシンプルではあるものの、機能的には何も問題がなく、実をとるスズキらしい設定。電子制御の類はABSのみだが、このバランスの良さを知れば複雑な電子制御など必要ないと思い知らされる。

 

シート部もそうだが、そもそもフレームからしてかなりスリムな車体をしているのはVツインエンジンのおかげもあるだろう。感覚的には250ccのVTRなどに近く、接しやすさは大きな魅力である。

 

ロケットカウルと呼ぶにはいくらかミニマム過ぎるメーターバイザーを装着。ヘッドライトやウインカー、テールライトなど全てハロゲン/電球でLEDは一つも使っていない。筆者は特にヘッドライトについてはLEDよりもまだまだハロゲンにも魅力があると思っているが、それをコスト面での都合だと思わせないためにも、デザイン的にLEDのDRL(デイタイムランニングライト)などを加えて欲しかったところ。

 

●SV650X ABS/SV650 ABS主要諸元

■エンジン種類:水冷4ストローク90度V2気筒DOHC4バルブ ■排気量:645cm3■ボア×ストローク:81.0×62.6mm ■圧縮比:11.2 ■最高出力:53kW(72PS)/8,500rpm ■最大トルク:63N・m(6.4kgf-m)/6,800rpm ■全長×全幅×全高:2,140×730[760]×1,090mm ■ホイールベース:1,450mm ■シート高:790[785]mm ■車両重量:199kg ■燃料タンク容量:14リットル ■変速機形式:常時噛合式6段リターン■タイヤ(前・後):120/70ZR17MC・160/60ZR17MC ■ブレーキ(前・後):油圧ダブルディスク(ABS)・油圧式シングルディスク(ABS) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:グラススパークルブラック[グラススパークルブラック、グラススパークルブラック×ブリリアントホワイト、マットブラックメタリックNo.2] ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):847,000円[803,000円] ※[ ]はSV650 ABS

 

制作・協力

■試乗・文:ノア セレン 

■撮影:渕本智信 

■協力:SUZUKI

オークネット提供サービス一覧
© 2016- AUCNET INC.