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バイクのメンテナンス~駆動系のチューニングや分解整備して実働化~

  • バイクのメンテ記事
  • 2022.09.02

【KAZU中西の鋼騎馬ラプソディ】vol.157。今回は、駆動系の分解整備やチューニングなどバイクのメンテナンスについて注意すべき点を踏まえて、ご紹介頂きました!

【奥深きバイクライフの原点】

約30年前、僕はカワサキショップ山梨(後のカワサキプラザ山梨)の故・吉田英之社長から、こんな風に言われました。「原付き(50㏄)を上手く乗りこなせないヤツが、大型バイクを乗りこなせるはずがない」と…。当時、自己流で運転が上手い気になっていた僕の鼻っ柱をポキンっと折ってくれたのが吉田社長であり、安全運転大会へ出場するために鍛えてくれた師匠。僕は親しみを込めて「オヤジさん」と呼んでいました。ちなみに、原付を上手く乗りこなすとは、乗用車用の駐車スペース1台分の傾斜地で8の字走行ができること。この程度のことができなくて、うまく乗りこなせていると思うな!という叱咤ですね。とにかく厳しいオヤジさんでしたが、僕はその後に山梨県の安全運転大会で優勝、現在は特別指導員になっていますから、結果的にオヤジさんの言っていたことは正しいと思えます。

 

原付バイクといえば、16才になって初めての免許は原付でした。取得の目的はアルバイトの採用要件でしたが、日常の足としてはもちろん、その当時に流行っていたミニバイクレースにもフル活用。家には常時3台くらい、原付バイクがありました。売ったり買ったり廃車にしたり…、とにかく色んな原付バイクに乗り、分解整備や自分理論のチューニングも試すなど、バイクメカの基本も原付バイクで学んだように思います。

 

僕が19か20才頃だったと思いますが、原付バイクもヘルメットの着用義務が法制化されました。それ以前の50㏄原付バイクでは着用を強く推進、現代の胸部プロテクターと同様ですね。しかしながら、既にミニバイクレースで走っていた僕としては、街乗りでも被らないことがあり得ない。高校2年の時、アルバイト先で買ったアライヘルメットのラパイドは、僕の頭をしっかり護ってくれました。そんな装具の重要性も、この時代に学んだことです。

 

現在、僕は地元の自主防災会長をやっていますが、担当区域のパトロールに原付バイクを使っています。田舎ですから2段階右折はほとんどないし、別荘地内の道路を走ることになるので、速度やパワーも必要にして十分。むしろ、軽量車体を活かして、担当地区のまさに隅々までパトロールできます。災害時に活躍するバイクとして、オフロードやトライアルバイクがよく挙げられます。しかし、ライフラインが断たれ、燃料の入手すらままならないというような、ひどい災害となった場合は、運転操作が簡単でタフネスな原付バイクに利があるように思います。50ccのスクーターなら、4輪の免許を持っている人でも乗ること自体は可能ですからね。使い勝手が良いです。このように、過去を振り返りつつ、災害時のことまで考えると、原付バイクの存在は実に奥深い。お財布事情や保管スペースの問題はあるでしょう。でも、一家に一台あっても良いのが原付バイクだと思います。

 

  • メンテナンス方法と重要ポイント

 

 

10代の頃は、学業より真剣だったと断言しちゃう!ミニバイクレースの世界。転んでは直し、自己流チューニングの結果に一喜一憂。大した成果は残せなかったけれど、吸排気系のセッティングからタイヤチョイス、CVTとは何ぞや?まで、実践でしっかり学べたのがこの時代だったと思います。一見してパッソルⅡに見えるバイク、エンジン&駆動系はチャンプ80をごっそり移植しています。このノウハウが、後に製作したRX50車体+TZR50エンジンという魔改造バイクに活かされています。若さゆえの無謀とでも言いましょうか…。

 

 

 

 

中古のDioSRが全然走らないので、駆動系を分解整備しました。原因は各部のサビとウエイトローラーの偏摩耗、ベルトの摩耗、センタースプリングのへたり等、多岐にわたっていました。エンジンの調子はいいのに、スピードの「ノリ」が悪いと感じた時は、こんな風になっているかもしれません。

 

それこそ10代から構造を学び、チューニングノウハウを蓄積しているスクーターのCVT機構。シグナスXに乗っていた時は、何十通りものウエイトローラーやセンタースプリング、クラッチ、CDI、マフラー、キャブレターのセッティングに、若かりし頃のノウハウが活かされました。2003年のSUGO24時間耐久レースに出場したのは、良い思い出になっています。

 

 

 

 

 

数年前にJOGを購入しました。目的は安全運転講習会の訓練車として。しかし、買い物の足や自主防災会長としてのパトロール車にも活用しています。大雨が予想される時は、JOGに乗って担当地区の隅々まで、土砂崩れ等の地形変化が無いか、大水が出ていないか等を調べに行きます。4輪では、そのままバックしないと出られない所まで入っていけますので、かなり便利だと思っています。

 

 

8月のパトロール時、上り坂でもう少しパワーがあれば…。そんな風に思う場面が何度かありました。となれば、手っ取り早くウエイトローラー交換です。純正は1個5.0gなので、4.0gに変更します。先ずは駆動系のカバーを外して、クラッチ側(後ろ)のドリブンフェイス(ムーバブルドリブンフェイス・トルクカムなどとも呼ばれる)を、センタースプリングの押し戻す力に負けないようクラッチ側に握力で寄せて、Vベルトを谷の内側に落とし込みます。次にVベルトがフリーとなった状態のプーリー側を特殊工具(現代は使い勝手の良い工具が市販されています)にて取り外します。作業のポイントは、ドライブフェイスを固定しているナットを外す際に、ナットの角をナメないようにすること。

 

プーリーを取り外す際は、プーリーボスやプーリー裏側にあるランププレートまでごっそり引き出すこと。この時、ランププレートをしっかりと指で押さえつつ、プーリー全体をそっと抜き出すようにすると良いです。外したプーリーは隅々まで清掃、新たに用意したウエイトローラーに入れ替えます。セオリーとしては、ウエイトローラーが収まる溝に薄くモリブデングリスや専用のローラーグリスを塗りますが、僕は自分の経験則から塗らない派です。ウエイトローラーを収めたら、ランププレートをガイドに合わせて被せます。この時、ガイドピースに破損や摩耗があった場合は、新品交換しちゃいます。

 

ランププレートが外れないように指で押さえつつ、プーリーユニットとプーリーボスをそーっとはめ込みます。しっかりと奥まではめ込んだら、プーリーフェイスにマーカーで線を入れておきます。これは、ウエイトローラーのセッティング変更で、Vベルトがどこまで押し上げられるか、または落とし込まれるか。つまり、稼働領域がどうなっているのかを後々確認しやすくするためです。ウエイトローラーの再セッティングをしない人は、線を入れなくても良いです。

 

Vベルトを通してからドライブフェイスをはめ込み、ナットで固定します。ナットは手締めしてから工具で締め付けるのが鉄則です。この時点でVベルトは遊んでいますが、エンジンを始動させれば自動的に適正位置に落ち着きますので、さほど気にしなくて良いです。さて、ウエイトローラーを交換した結果ですが、5.0g×6=30.0gから4.0g×6=24.0gとなったことで、ゼロ発進からの加速が力強くなり、上り坂も以前より楽に進めるようになりました。

 

実は最近、2ストのJOG90を入手しました。走行距離は2,000km台です。20年以上不動のまま車庫にしまってあったものを譲ってもらい、分解整備して実働化させました。いわゆるレストアとはちょっと違うかな?とにかく走るように最低限の作業をしたまでです。久々の2ストは、やっぱり気持ちの良い加速を楽しめます。今後はウエイトローラーやトルクカム、センタースプリング、マフラーを交換して、もっと遊べるバイクにしていこうと思います。

 

制作・協力

■ライター:KAZU中西

フリーランスのモータージャーナリスト。通称カズ兄さん。イベントMCやラジオDJ(FMIS・カズ兄さんのモーターレボリューション)などタレント業でも活躍。

観察分析力に定評があり、開発に携わったバイク用品やカスタムパーツも多数。

一方では、二輪車の事故防止&安全利用の最前線に立つ『Mr.事故ゼロ』とも呼ばれている。愛車はスペシャルメイドのZ2他。趣味はプレジャーボートのクルージング

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