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好みに近づけるブレーキチューニング
- バイクのメンテ記事
- 2024.04.08
【KAZU中西の鋼騎馬ラプソディ】vol.176。今回はKAZUさん流のブレーキチューニング方法をご教授いただきました!
新車・中古車を問わず、納車されていざ乗り出してみたら、走る・曲がる・止まるについて、イメージしていたのと違う?そんな風に思うこともあるでしょう。そこから自分好みに調整していくことがチューニング。僕はブレーキの効き方、効かせ方にこだわるので、アフターマーケットのブレーキパッドを活用しています。
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純正より効きが良く減りにくいパッドなんてあるの?
量産市販車のブレーキシステムは、そのモデルに関わった技術者やテストライダーによって、膨大な時間をかけて構築されています。別の表現をするなら、ほとんどのライダーが不満なく安心して使えるよう、全方位に高バランスで仕上げられているというか。ブレーキの効き具合についてはモチロン、メンテナンス性や耐久性についても十分に考慮されています。しかし、いざ乗ってみたら、ブレーキ性能について「もうちょっとこうなれば良いな」と思うところもあるでしょう。僕の03年型XJR1300でいえば、絶対効力に全くの不満は無いですが、ブレーキの効き初めはもう少しクイックに効力が立ち上がっても良いのかな?と思うところがあります。先ごろ、デイトナのテストコースでそんな話をしていたら、「そのフィーリングが好きなら試してみてください」と、ゴールデンパッドχ(カイ)を渡されました。訊けば純正ブレーキパッドより効きが良く耐摩耗性も良いとのこと。そんな都合の良いパッドがこの世に存在するとは!早速試してみることにしました。
デイトナの最高峰ブレーキパッドとしてリリースしていたゴールデンパッド。その正常進化版がゴールデンパッドχ(カイ)です。違いは効力の強化だそうで、まぁ効きが良いことはありがたいのですが、耐摩耗性にも優れているとか。にわかに信じがたいコメントでしたが、先ずは装着してみなきゃあ始まらないってね!
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難しくないけど絶対にやることはある
ブレーキシステムは重要保安部品であるため、正しい整備知識と方法、整備できるスキルが必要。自信の無い人は、バイクショップに持ち込んでメンテナンスするしかないです。法的には、車両所有者が自身の手で行なうか、整備士資格のある人が適切な整備工場で作業することになっています。そんな前置きをしつつ、純正パッドからゴールデンパッドχ(カイ)に交換してみます。なお、交換による違いを感じられるよう、事前に純正パッドでの走り込みを済ませておきました。ブレーキパッドの交換について、XJR1300の通称スミトモキャリパーの場合は、簡単に言えばピンを抜いて差し替えるだけ。なので、交換作業もあっけなく終わってしまうわけですが、どんなバイクでもパッド交換後にいきなり走り出すのはNG。必要な儀式があるので、そこまで含めて交換作業のポイントを記しておきます。
XJR1300の場合、フロント2セット、リア1セットが必要になります。ゴールデンパッドχ(カイ)は、金属粉を焼結したシンタードパッドと呼ばれるものです。特徴は絶対効力の高さ、雨天時走行でも効きが低下しづらいこと。ブレーキ性能が安定的だと言えます。
アフターマーケットのブレーキパッドに交換する際、気をつけたいのが純正パッドに装着されていた金属板を移植するか否か。パッケージや取扱説明書に純正のプレートは使用しませんと記載されている場合は、その指示に従わないとブレーキ性能に悪影響を及ぼすことがあります。ゴールデンパッドχ(カイ)の場合は、使用してくださいと記載されていますので、変形等が無ければ移植します。プレートにキャリパーピストンの痕跡がついている場合は、サンドペーパー等で磨いておくと良いです。
パッドの交換作業は、純正を外した時の逆の手順で組付けるだけ。ざっくり言えば、ピンを抜いてパッドを交換し、再びピンを差し込むだけです。この時注意したいのは、パッド同士の間にディスクローターが収まる分のすき間を確保すること。使用限度に近いくらいパッドが摩耗している場合、新品パッドを組み付けただけだとすき間が無くてキャリパーを組み付けられないという事態になります。
フロントキャリパーのパッド交換は、リアとほとんど同じ作業になります。単純にパッドを交換するだけでも良いですが、できれば関連する他のパーツ=ピンやパッド押さえプレート等も磨いておくことをオススメします。
パッドの交換直後は、キャリパーピストンが引っ込み、パッドとディスクローターにすき間ができていると思います。いきなり走り出すとブレーキが全く効かず大事故につながります。そうならないよう、走り出す前にブレーキレバーをあおっておくのが鉄則です。
いわゆるポンピングブレーキの要領で、パッドとディスクローターが接するまでレバーやペダルをあおります。キャリパーピストンが正常に動いていれば、3~4回あおると手応えを感じられると思います。何度あおっても手応えが出ない場合、パッドの組付け作業に間違いがあるか、ブレーキシステムに重大な問題が発生している可能性あり。その際は、バイクショップに相談して、修理してもらうことになると思います。
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いきなり遠出しないのが使いこなしのコツ
何らかのパーツを交換した時、その違いを試したくなり、ツーリングに出かけたくなるところですが、いきなり遠出するのは危険です。ブレーキに関して言えば、交換前の効きを確保できているか、ブレーキフルード等の漏れは無いか、脱着したボルトやピンに緩みは発生していないかを確認する必要があり、自宅から遠く離れた場所へ行ってしまうと、トラブルが発生した場合に帰れなくなるからです。先ずは近所を走って様子を見る、問題が無ければもう少し距離を延ばす、そんなあんばいで徐々に慣らしていくのが良いでしょう。
先ずは自宅から10km県内、往復で20kmの距離を走ってみます。僕は、近所のカフェへ行くことが多いかな。バイクを停めたらパッドピンやキャリパーボルトの緩みをチェック、一服して走り出す前にブレーキフルードの液漏れをチェックします。
次に25km圏内、その次は50km圏内と徐々に延ばしていきます。これまでの経験則から、装着後300km走って問題が無ければOK!ツーリングにもガンガン出かけられるようになるでしょう。僕はパッドとディスクローターの接触面をキッチリ馴染ませたかったので、1000km以上走りました。馴染ませ仕上げの地に選んだのは横浜。10代の頃からよく走り回っていて、ある程度の道路状況を把握できていること、万が一のトラブル時に頼れる友人が多いという理由です。往復の道中に高速道路を使えることも横浜を選ぶ理由かな。
いよいよ、ゴールデンパッドχ(カイ)の性能チェックです。レバーを操作してブレーキが効き始めるところの効き具合、効力の立ち上がりとも言います。その時点において、純正パッドより応答性が良い。効力の立ち上がりが早いです。ただし、ガツーンと効くというより、キュッと強めに効き始めるという感じで違和感は無し。ブレーキを操作した時、操作していない時のフロントフォークの沈み込み具合で比較できると思います。そこから握り込んだ時、効力の強まり方は入力等倍というかリニアです。倍力感も薄く、握った分だけ効きが増します。タイヤがロックする寸前で、効き具合が純正パッドと並ぶ感覚です。パッドを変えただけで、これだけ明確に差が現れると面白い。
ゴールデンパッドχ(カイ)は、僕好みのブレーキ効力とレバータッチ、コントロール性でした。反応速度と効力の早い立ち上がりは、見通しの悪いワインディングロードで活きると思います。例えば横に枝道がある区間、クルマや人間、動物等が突発的に飛び出してきた際にブレーキングで回避できる可能性を高めます。純正のブレーキシステムを大きく変えず、ブレーキの効き具合を変化させたい人に、パッド交換はやってみて損なしだと思います。
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■ライター:KAZU中西
フリーランスのモータージャーナリスト。通称カズ兄さん。イベントMCやラジオDJ(FMIS・カズ兄さんのモーターレボリューション)などタレント業でも活躍。
観察分析力に定評があり、開発に携わったバイク用品やカスタムパーツも多数。
一方では、二輪車の事故防止&安全利用の最前線に立つ『Mr.事故ゼロ』とも呼ばれている。愛車はスペシャルメイドのZ2他。趣味はプレジャーボートのクルージング