他カテゴリ記事を絞り込んで探す
BMW R18 Classic First Edition 話題の“新人”はさすがの完成度だ
- 最新ニュース
- 2021.05.28
2020年発売の、BMW R18 Classic First Editionの試乗体験をレポートしていただきました!
2020年の秋に発売されたBMWの大型クルーザー、R18に新しく加わったR18 CLASSIC First Editionに試乗。
フロントホイールのサイズや装備が異なる別バージョンの気になる走りと魅力を紹介する。“BMW”と“クルーザー”の組み合わせはどんな世界を作り出したのか。
-
登場した疑問を払拭させる魅力
BMWのクルーザーというと、1999年に発売されたK1200LTがその分野のさきがけだった。
K1100LTの後継として登場したが、ヨーロピアンスポーツツアラー的だったK1100LTとは違い、ハーレー・ダビッドソンのツーリングファミリーや、ホンダのゴールドウイングといったラグジュアリーツーリングモデルの対抗馬として生まれてきた。
それは本場とも言える北米市場でも評価され、事実としてハーレー・ダビッドソンはLTを常に販売上のライバルとみなしてきた。そして現在はこれをK1600シリーズが受け継いでいる。
スポーツバイクのイメージが強いBMWだが、クルーザー分野、市場にまったく興味がなかったわけではないのである。だからR18の登場にはいろいろ驚く部分があったけれど、突飛だとは思わなかった。
ラグジュアリーツーリングモデルに続いて、よりテイストにこだわったクルーザーに手を広げたのは、ある意味で満を持してのことではないか。
特徴のメインは、同ブランド史上最大の排気量を持ったエンジン。BMWのアイデンティティとも言えるフラットツインレイアウトを採用して、だれもが容易に納得できる“らしさ”を手に入れながら、カテゴリーの定番であるVツインとは違うスタイルと走行フィールで差別化につながっている。1930年に誕生したR5をリスペクトした有機的なカタチのクランクケース形状は独特だ。
試乗したのは昨年発売したR18に新たに加わったCLASSIC First Editionだ。フロントホイールがR18の19インチから16インチと小径になって、大型スクリーン、リアのサイドに大きめのバッグを装備したよりツーリング仕様。目の当たりにすると、1802ccの空油冷水平対向2気筒OHVエンジンの視覚的な迫力にまずは驚くだろう。
見慣れているRシリーズの1.5倍はボリュームがある。排気量がそれだけ大きくなっているのだから当たり前といえば当たり前なのだが、黒く塗られたシリンダーなんて普通の人のフトモモから競輪選手のフトモモになったようなたくましさ。
大きさに圧倒されるけれどもまたがるとシートはお尻がスッポリと収まる良好なフィット感。日本では標準がローシート仕様でシート高は690mm。身長170cmで体重66kgの筆者でも膝に余裕ができる足着きの良さ。
ハンドルグリップ位置は同体型の人より腕が短めな私でも近く感じられ、上体の前後自由度も大きいポジションだから、大きく重くても御せない不安につながらなかった。
足を置く場所はステップボードタイプになっていていわゆるミッドコントロールの位置。膝の曲がりはほぼ90度で感覚的には椅子に座っているような格好。
-
キラキラ光る車体
エンジンを目覚めさて軽くスロットルを開けると、ドドドドというすごみのある低音とB M Wフラットツイン特有のバラバラとした歯切れのよい音が混ざった排気音とともにグラっと生き物のように車体が右に動いた。
アイドリングさせたまま単体で置いといても車体がゆれて生物みたい。大心臓の鼓動がそのまま車体全体に伝わり左右に揺り動く。動作の早い“震え”ではなく、ワッサワッサとした“ゆすぶり”という表現が適当。
このCLASSIC First Editionはいろんなところが光ってキラキラしている。出し惜しみせずとことんやった感じ。シャフトドライブにはカバーはなく、むき出しになったドライブシャフトユニットとジョイント部分でさえニッケルプレートメッキを施して光る。
油圧&スリッパークラッチ採用で大排気量2気筒のトルクを受け止めるクラッチでもレバー操作が軽いのは助かる。
1速に入れて動いてしまえば車両重量374kgの重さが消え、アイドリング回転に近いところでクラッチをミートしたままスロットルから手を放してもエンストすることなく前に出た。
低速でのセルフステアも強すぎず、ポジションとエンジン特性も味方してUターンのハードルは高くない。クルーザーモデルの常で、すぐにフットボード裏が地面に当たってしまうから、傷つけないように気をつけて操縦していたけれど、そうじゃなければもっと小さく回れた。重心が間違いなく低いから、そろそろと歩くような低速で動かしてもふらつかず安定したもの。
スロットル操作にパワーの出方が神経質ではなく速度コントロールが楽で、頻繁にシフトチェンジせずずぼらに乗っても大丈夫。
せわしない乗り方をしなくてもいいのは大排気量と制御のおかげ。ひとたび、スロットルをワイドオープンしたら3千回転で、158N・mものトルクを発揮するエンジンは力強い怒涛の加速だ。わざとシフトダウンをして急減速、ラフにスロットルを開けての急加速など繰り返してみたけれど粗野なところを見せない。
サスペンションには突っ張ったところはなく、初期の柔らかさがありつつ適度な減衰をして体を前後に動かすピンチングモーションが上手に抑えられて乗り心地がいい。
コーナーリングはさすがに機敏とは言えないけれど、低速ではセルフステアも強すぎずニュートラル。ハイスピードで切り返しが連続するシーンでは起き上がり小法師のような感覚があるけれど、フットボードを踏んづけてメリハリあるスロットルワークをすればスムーズに動いた。どの速度域でもいたって従順。
-
諸元・装備について
●主要諸元
■エンジン種類:空油冷4ストローク水平対向2気筒OHV4バルブ ■総排気量:1801cc ■ボア×ストローク:107.1×100mm ■最高出力:67kW(91PS)/4750rpm ■最大トルク:158Nm/3000rpm ■全長×全幅×全高:2465×964(ミラー含む)×1340(ミラーを除く)mm ■ホイールベース:1725mm ■シート高:690mm ■車両重量:374kg■燃料タンク容量:16L ■変速機形式:6段リターン ■タイヤ(前・後):130/90 B16・180/65 B16 ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスクブレーキ(ディスク径300mm)・油圧式ディスクブレーキ(ディスク径300mm)■フレーム形式:ダブルクレードルスチール(アンダービームはネジ留め)■メーカー希望小売価格:3,262,000円~(消費税込み)
往年のR5をオマージュしたケース形状が独特の空油冷フラットツインエンジン。エンジンの前方下にあるのはオイルクーラー。フレームはスチールのダブルクレードル。CLASSIC First Editionは、上り坂で一時停止しても後ずさりしないですむヒルスタートコントロールと、下傾斜地に駐車したときなどに助かるリバースギアを装備している。
オーバーヘッドバルブ(OHV)で1気筒あたり4バルブ。ケース側にあるカムシャフトからヘッドへ吸気側、排気側とプッシュロッドが2本伸びてバルブを駆動。無鉛プレミアムガソリンを入れる燃料タンクの容量は16Lとエンジンとの対比で小ぶりに見えるけれど、十分な容量だ。CLASSICFirst Editionは690mmのローシート仕様が標準。
R18の3.50-19のリムと違い、CLASSICのワイヤースポークホイールのリムは3.00-16になる。テレスコピックフォークのサスペンションストロークは120mm。ダブルディスクブレーキに使われているローターはφ300mm。メッキされたキャリパーは4ピストンだ。試乗車が履いていたタイヤはBRIDGESTONEのBATTLECRUISE H50。
サイドバッグを標準装備。ひとつの容量は15.5L。リアホイールは5.00-16のリムに180/65 B16サイズのタイヤを履く。ウインカーとテールライトはLED。パッセンジャーシートは標準。左右2本出しのマフラーはステンレス製。リアサスペンションは、ダブルスイングアームを使ったセンタースプリングストラット。ストロークは90mm。
明るいLEDを使ったヘッドライトProを採用。ヘッドライト照射の角度を自動でコントロールするアダプティブタイプ。CLASSICは往年のクルーザーらしさを演出する2つの補助ライト(LED)が装備されている。アンダーブラケットの下方にステアリングダンパーが装備されている。歪みの少ないスクリーンはそれほど高くなく視界を妨げない。
ハンドルからバーエンド、両側のマスターシリンダーまでありとあらゆるところがクロームメッキされている。油圧のクラッチレバー操作は軽い。シンプルなメーターの造形や昔の金庫ダイヤルを連想させる燃料キャップなどスタイルに対してのこだわりを感じさせる。BMWらしくグリップヒーターとクルーズコントロールを装備している。
■試乗・文:濱矢文夫
■撮影:渕本智信
■協力:BMW Motorrad Japan https://www.bmw-motorrad.jp/ 、JAIA 日本自動車輸入組合 http://www.jaia-jp.org/