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【ヤマハ マジェスティS】よく見るにはワケがある

  • おすすめコラム
  • 2021.07.14

今回は「マジェスティS」をご紹介します!

マジェS人気はどこにあるのか検証!

都市部では移動手段として125~150ccクラスのスクーターがたくさん走り回っている。


移動手段としてならばその車種は何でも良さそうなものだが、どうもマジェスティSをたくさん見かける気がするのだ!


中身は最新というわけではなく、価格も特別リーズナブルというわけでもない……人気の秘密はどこに??

  • ヤマハラインナップを見てみると

ヤマハはそもそも最初のマジェスティ250の大ヒットや、長く愛され続けている125ccのシグナスXなどスクーターについては一日の長というか、得意な印象もあるかと思う。


アジア圏でもヤマハ系スクーターはかなりのシェアを誇っていると言えるだろう。


軽二輪クラスとなる155ccにはこのマジェスティSの他NMAXと3輪のトリシティ、そして250ccのXMAXがあり、125ccクラスならシグナスX、アクシスZの他、125cc版のトリシティとNMAXと充実のラインナップ。


こんなにあって自社内で食い合うんじゃないか、なんてことも思うのだが、どうやらそうでもないらしい。


ちなみにNMAXとマジェスティSの価格差は1万円以内。完全にライバルに見えるのだが、しかし街で見るのはやはりマジェスティSの方なのだ。


【155cc・軽二輪枠の優位性を考える】

市町村のナンバーがついて、各種税金や保険といったランニングコストが抑えられる125ccクラスは昔から人気で、各メーカーも便利なモビリティとして推奨していたりする。


しかし125ccは「高速道路や一部バイパスに乗れない」という不利点がある。一方で250ccクラスとなると車体が大きいものが多く125ccのような気軽さは少ない、というジレンマが長いこと存在したと思う。


それに良いトコ取りをしたのが150cc近辺のスクーターの登場だろう。


車体は125と同じ、排気量こそ250ccには満たないものの区分的には軽二輪となるためバイパスや首都高も乗れてしまう。


ランニングコストはいくらか高くなるがそれよりもメリットが多いと捉える人も多いだろう。だからこその躍進であり、ヤマハはこの充実のラインナップ、ホンダも新しくなったPCX160やADV150をラインナップし人気を博している。


どうせなら250cc、という心理も働くのはわかるが、125ccと共通車体というコンパクトさは魅力だ。扱うにも気軽さがあるし、駐車スペースなどにも自由度があるはずだ。


都市部の移動には150cc近辺でも十分なパワーがあり、かつちょっと急いでいる時に首都高を利用できるというのはかなりの強み。そりゃこのクラスが人気なのもうなずける。


【ステップスルーの勝利】


そんな中でマジェスティSが支持を集めるのは、ステップスルーをはじめとする、125ccクラスと共通する装備に思う。


NMAXやPCXは価格こそあまり変わらないものの、車体の成り立ちはラグジュアリー路線で、250ccクラスに通ずる部分が多いと言えるだろう。


まずステップスルーではないこと、そしてPCXではハンドル左右ボックスにはフタがついていることなど、または全体的なデザインの作り込みも含めて、ちょっとした高級車というイメージもある。


対するマジェスティSは各種装備が125ccのシグナスX的なのだ。このクラス唯一のステップスルーであることは何といっても乗り降りが楽。特に都市部ではサッと降りて横断歩道を押して渡るだとか、駐輪場から歩道を押してサッと乗って走り出す、といった場面が多いのだが、ステップスルーはこれが劇的にやりやすい。


さらにはいわゆる「コンビニフック」があるわけだが、ここにビジネスバッグなどもぶら下げられるのもステップスルーの魅力。筆者のような田舎出身者の感覚で言えば、ステップスルーだと18Lの灯油も買いに行けるな(ステップ部にそれだけの荷物を置くのはいかがかとは思うが)、などとその使い方の自由度が頭に浮かんでしまう。


またハンドル下のボックスは大きく開口部が開いていてペットボトルなどを気軽に放り込むことができ、また給油口も高い位置にあるため給油もスマート。スーツを着ている時にしゃがまずに給油できるのは魅力だ。


加えてライディングポジションも、NMAXやPCXのようなリラックスしたものではなく、比較的背筋が伸びているため乗り降りが本当に便利。長距離の快適性ではそれらライバルモデルに譲るが、都市部ではそのアクセスのしやすさが強みだ。


マジェスティSがコレだけ人気で、都市部では本当によく見かけるのはこの125cc的、日常的使い勝手の部分ではないだろうか。こういったアプローチは155ccクラスではマジェスティSだけなのだから、一人勝ち状態である。


【簡素が良いか、それとももう一つか?】


125ccクラス的使い勝手が魅力と書いたばかりだが、同時にそれは簡素さにも感じることがある。


例えばハザードランプがないのはどうかな、と感じた部分。都市部ではちょっと停車して道を確認するだとか電話に出るといったことがあるため、そういう時にハザードランプは使いたかったし、軽二輪枠であるからには首都高に乗れるわけで、そういった場所での緊急時には安全のためにぜひ欲しい装備。


またアイドリングストップ機構がないのはよしとしても、キルスイッチがないのは不便。時間の長い信号などではマニュアルでアイドリングストップしたいものだが、キーをいちいちオフにしなければならず、キルスイッチがあればいいのに、とは感じさせられた。


色々簡素なのはむしろ魅力的でもあり、ヘンに高級志向ではないのは逆に日常的に使いやすかったりもするのだが、キルスイッチやハザードといった都市部で特に便利な機能はセーブせずにつけて欲しかったというのも本音だ。
  • 走りは元気! シグナスXイズム

さて、走りの方だが、このマジェスティSはここでも都市部での使用を最優先に考えていると感じた。


パワーそのものはライバルと同等なのだが、クラッチが繋がる回転数が高く、加速中もずっと高回転域を維持して持てるパワーを常に振り絞っているフィーリングなのだ。よってかなりキビキビした運動性を持っていて、シグナスX的なスポーティさも楽しめる。機動性の高さゆえペースの速い幹線道路もリードできるし、細かな道でも小回りがきいて、場面を問わず「使える」と実感した。



またシート高が高めなこと、ステップボード下に燃料タンクがあることで足を置く位置も高い位置となることなどから重心が高いイメージ。これにより高い位置から寝かせていくスポーツ性も感じられ、便利でありつつもスポーツスクーター的エキサイティングさも味わえてしまった。

基本的には便利な移動の手段として使うことになると思うが、それでもそういった趣味的要素もあると日々の使用でも楽しさが潜んでいるし、休みの日には趣味ユースとしてツーリングも楽しみたいような気になることだろう。


なお、そんな元気な性格だからこそエンジンの主張もそれなりに大きく、先述したアイドリングストップもしたくなるというもの。やはりキルスイッチは欲しい!


【納得の快速コミューター。人気に納得】


試乗を終えての結論は「大き目なシグナスX」ということだった。高速道路やバイパスも走れる軽二輪枠ながら、その中身は便利でスポーティなあのシグナスXの兄貴、といったイメージ。


その観点で言えばライバル不在なのだから売れて当然。しかも最近LEDヘッドライトなど外装のアップデートを受けてカッコ良くなったのだからそりゃ人気だろう。


いつも同じ通勤路だけでなく、様々な取引先に顔を出すアクティブなビジネスマンや、もしくは通勤・通学だけでなく趣味的にも使いたいと考える人、スクーターでもスポーツマインドをもって楽しみたい人にお薦めするマジェスティSである。

  • 装備・車両詳細

マジェスティSの魅力は何といってもクラス唯一のステップスルーであること。跨がずに腰を掛けただけでスッと乗れるし、降りるのも同様に簡単。


シート高自体はライバルより高めだが、このアクセスのしやすさが特に乗り降りが多い都市部においては強い武器となる。



NMAXのブルーコアとは違うのだが、水冷の155ccエンジンは15馬力を発揮。高回転域で繋がる設定の変速のおかげでかなり活発なイメージだ。


給油口がこの位置にあるのはしゃがまずに給油できるため大変に便利。


なお給油を終えた時にノズルをスッと上に向けて外せるため最後の2摘ほどをポタポタと落とす可能性もとても少ない。奥に見える大きく開いたフタのないボックス部は色々投げ込めて大変重宝すると同時に、シガーソケットも備えるためデバイスの充電などもできてしまう。



シンプルで使いやすいスイッチボックスだったが、停車時の安全のためのハザードランプと、長めの信号などでアイドリングストップできるようキルスイッチは欲しかったところ。


ステップボードは地面と水平な部分と、前方に斜めの面と用意されているため自由度は高い。


特に斜めのステップボード部分は若干内側に傾斜しているため靴底のグリップがよく、いわゆるステップワーク的入力をしてもすっぽ抜けたりする心配がない。これを活用するとスポーティな走りを楽しめてしまう。また靴底が滑りやすい革靴などでも安心だろう。


車体の剛性感やシグナスX的フィールを感じさせるのはモノショックによるところも大きいと思う。水平に配置していることでタンデムライダーの快適性も考慮しているそう。


なお短距離だがタンデムした際は、タンデムライダーが「ライダーのシートと段差があるから見晴らしがよい」とインプレしていた。


また段付きのためライダーがタンデムライダー領域を侵さず、常にタンデム用座面積を占有できるのも良かったとのこと。

メーターは中央にタコメーターを配し、そこでもスポーティなマインドを喚起しているのが伺える。ただこのタコメーターが常にかなり回っている表示を示すため、場面によっては急かされているように感じることもなくはなかった。他各種表示は必要十分といった感じ。燃費計もあればなお良いか。



シートはお尻を支える明確な段があり、このおかげでフィット感は高く、脚をステップボードに踏ん張れば体をロックできかなりスポーティな乗車フィールが味わえる。


一方でこのシートストッパーのせいで着座の自由度はいくらか制限されるかもしれない。もっとも、185cmの筆者でも都市部の移動では狭いと感じることはなかったが。シート下は32Lという容量。深くはないが広さがあり使いやすい。

制作・協力

■試乗・文:ノア セレン ■撮影:松川 忍 ■協力:YAMAHA

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