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【SUZUKI GSX-S1000GT】 スズキが「GT」市場参入で、ツアラー復権の兆し

  • 最新ニュース
  • 2021.10.15

今回は「SUZUKI GSX-S1000GT」をご紹介します!

アドベンチャーに代わる(?)新たなカテゴリー


ハイスピードツアラーが今アツい!


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長距離ツーリングするならアドベンチャー! 近年のアドベンチャーモデルの超高性能化&最先端化により、もはやこれは常識となりツアラーとしてだけでなくあらゆるシチュエーションで速い、という視点からもアドベンチャーは各社のフラッグシップとなっていた。しかしじわじわと復権しているのがスポーツツアラー。


ニンジャ1000、トレーサー900GTに続くGSX-S1000GTで再び注目カテゴリーとなるか!?


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  • 久しぶりの「スズキのGT」


スズキのスポーツバイク、GSX-Sシリーズがモデルチェンジ。ネイキッド版のGSX-S1000は縦目2灯でファイタースタイルを更に押し進め既に注目モデルとなっているが、ではカウル付のGSX-S1000Fの方はどのような進化を果たすのか……と注目していた人も多いはず。


ネイキッド版ではクイックシフターやドライブモードセレクタが搭載されるなど電子制御の充実の他、ポジションが楽になりタンク容量がアップとなるなど、長距離走行を重視したような変更も見られたため、カウル付でより長距離クルージングに有利なGSX-S1000Fの方はさらにクルーズコントロールがつくぐらいではないか、などと想像していたが、スズキは久しぶりに「GT」の名を冠して予想以上にツアラーに仕立ててきたのだった。


「GT」と言えばスズキの中では歴史のある名前。まだまだ2ストロークメーカーだった70年代には、水冷2スト3気筒の750を筆頭に、車名そのものが「GT」としたシリーズを展開していた。


当時、他社がスポーツ性を追求している中、その乗り味はまさにグランドツアラーであった。その後スズキ二輪車で「グランドツアラー」を掲げる車種は思い当たらないが、しかしスズキの社風(車風?)にはどこか懐の深い、ツアラー的許容度が高いモデルも多かった。


そんな中久しぶりに「GT」のネーミングを与えられたこのGSX-S1000GTが登場。ツーリングもできますよ、ではなく、本気で快適なハイスピードツアラーの登場である。



ガラリとイメチェン 仕切り直しスタート


 先代のGSX-S1000Fもとても良いバイクだった。GSX-R由来のエンジンと快適なライディングポジション、高速道路では特にカウルの恩恵は大きく、またツーリングに役立つ各ガジェットを装着するにも都合が良かった。しかし一方で17Lというタンク容量やミニマルなタンデムシート部など、その構成はあくまで「アップハンのスーパースポーツ」、もしくは「カウル付ストリートファイター」といった感じで、ツアラーというわけではなかった。


新型ではその方向性を明確にツーリングにフォーカスさせた。見た目にも斬新なカウルはもちろん新設計。ネイキッド版にも使われている小ぶりなモノフォーカスLEDヘッドライトをカウル左右に埋め込み、ライダーの快適性を徹底追求した空力を実現。サスペンションセッティングも長距離クルージング向けにリファインされ、そしてテールセクションは荷物の積載やタンデムを考慮した新設計。当然電子制御もネイキッド版に採用されたものにクルーズコントロールを加え、アプリでスマートフォンとリンクさせられる機能やフルカラーのディスプレイなどライダーエイドも充実させた。


これはもう、GSX-S1000Fのモデルチェンジではなく、完全なニューモデルとして捉えるべきだろう。このスポーツツアラーカテゴリーではカワサキのニンジャ1000が長らく孤軍奮闘し、それにヤマハのトレーサー900 GTが加わったばかり。さらにスズキからこのブランニューGSX-S1000GTがラインナップされたことで、新たなカテゴリーが再び形成されつつあり、ツーリングシーンに新たな風が吹き込んでくる予感がしてきた。

  • ​細部アップデートもぬかりなし

車名をGTと変えたタイミングで、同時にユーロ5対応のための各部変更もなされている。新たに電子制御スロットルボディを採用し、エアクリーナーボックスや排気系を変更。カムシャフト変更によりバルブのオーバーラップを減らすなど、スズキが他車でも行っているユーロ5対応と同様の各種合わせ込みがなされているが、より厳しいエミッション対応しているにもかかわらずパワーは向上させているのが素晴らしい。


またツアラーとしてはトルク値も気になるところだが、スペック上でのピークトルクは微減しているものの、実は先代に存在していたトルクの山や谷を均すことで、常用域である2000rpmから11500rpmの間での平均トルクは1.9%アップさせている。さらに「スズキクラッチアシストシステム」と名付けられた、いわゆるアシスト&スリッパークラッチが新採用されたことでクラッチ操作の負担も軽減。ツアラーとしてはありがたい装備だろう。


電子制御では、GSX-S1000の方にも採用されたドライブモードセレクタ(SDMS)やライドバイワイヤ、上下方向のクイックシフター、ワンプッシュでエンジン始動可能なイージースタートシステム、クラッチ繋ぎしなの回転数を高めてくれるローRPMアシストに加え、ツアラーならではのクルーズコントロールも当然搭載。なおトラクションコントロールは先代の3モード+OFFから5モード+OFFへとアップデートされた。


■ツアラーとしての素質


前から見たルックスが大きく変わったのが印象的ではあるが、今回のGT化での注目ポイントはむしろリア周り。メインフレーム周りは先代から引き継ぐが、シートレールは新設計としているのだ。


先代ではウィークポイントであった荷物の積載やタンデム性能を格段に向上させるべく、リア周りはかなりのボリュームアップ。純正アクセサリーのパニアケース搭載に加え長距離のタンデムライドを想定した強度が与えられ、さらにレールの位置そのものも低めたことでシートクッションを増やすことに成功。大幅に座面積を増しグラブバーも新設したタンデムシートだけでなく、ライダーのシートもツーリング向けの快適性を確保した。


ライディングポジションも、ハンドルを14mmライダーに近づけ、幅は23mm広く設定。肩周りへの防風効果も追及した新カウリングとも併せて、より快適に長距離を走破できるポジションとしている。なおハンドルバーは新たにラバーマウントとし、フットレストにもラバーを貼るなど振動をライダーに伝えない工夫もされている。


こういった各部の作り込みにより、スポーティさを前面に出しているネイキッド版や、先代のGSX-S1000Fとは別次元の長距離性能を確保していることだろう。スズキらしい「トリトンブルー」の他、シックな紺系のダークブルー(メタリックレフレクティブブルー)と黒(グラススパークルブラック)という落ち着いた3色展開もスポーツツアラーという大人の嗜みにぴったり。国内での発売が楽しみなモデルである。

  • 装備・車両詳細

スラントしたノーズとコンパクトなLEDライト、タンデムや荷物の積載を考慮しシートレールから新作となったリア周りなど、一見してGSX-S1000Fの後継機種とは思えない程の進化を果たしたGT。逆にニンジャ1000やトレーサー900GTとの真っ向勝負を感じさせる、非常に力の入ったモデルであることが伝わってくる。


アジャスタブルサスペンションを備えるのは先代同様だが、特にリア周りの変更と、そしてGT的味付けのためセッティングは変更。タイヤサイズは先代同様だが先代のダンロップD214から専用設計されたロードスポーツ2へと変更。新型GSX-S1000の方にもこのタイヤが採用されたが、車体とのマッチングが素晴らしかった。


異形6角形のモノフォーカスLEDヘッドライトは小型でカウルデザインの自由度が高まっている。カウルはジェット戦闘機をイメージしたデザインだそう。ポジション灯やウインカーなど灯火類は全てLED化されている。


角ばったデザインや容量の2L増量など、燃料タンクの変更はネイキッド版と同様。航続距離の増加はツアラーにとって特にありがたい項目。


ネイキッド版と基本的には同じ電子制御だが、クルーズコントロールが追加されたことやスズキオリジナルの「mySPIN」アプリでスマートフォンとリンクできることなどから、左のスイッチボックスには十字キー及び上下スイッチが設定された。


6.5インチのフルカラーTFT LCDマルチインフォメーションディスプレイを新採用。様々な情報を表示させることができるほか、スマートフォンとのリンクによりマップや連絡先、カレンダーなどマルチに使うことができる。またメーター横にはUSBアウトレットも用意されているため、肝心のスマートフォンへの給電も安心だ。


スズキでは「スズキクラッチアシストシステム」と呼ぶアシスト&スリッパークラッチを新採用。確実な動力伝達はもちろん、過度なシフトダウンをしてしまった時のリアのホッピングを緩和してくれる機能を持つが、何よりもクラッチ操作が軽くなるのが魅力だろう。ちなみに上下方向のクイックシフターを備えるためギアチェンジ時のクラッチ操作は不要だ。


メインフレームは先代から引き継ぎ、スイングアームはGSX-Rのものを使うが、シートレールは今回新設計された。積載やタンデムも考慮した剛性を与えただけでなく、シートレール自体を下げたことでシートクッションを増すなどツアラーとして正常進化させている。


新たに電子制御スロットルボディを採用するなど吸排気系の変更に加え、カムを変更などしてユーロ5に対応しつつパワーもアップ。また、新型ハヤブサでも行われたがエンジンの耐久性向上のため細部のアップデートもなされている。


カウルデザインやスクリーンデザインなど目立つものの他、ステム下部には走行風がカウルの下からライダーの方へと入ってこないよう、小さなディフレクターが新たに採用された。GTとして細部まで空力にこだわったのが伺える。

■試乗・文:ノア セレン 


■協力:SUZUKI

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