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【新型TEST&RIDE】ホンダ PCX ELECTRIC(エレクトリック)

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  • 2019.02.03

中国をはじめとしたアジア各国を中心に、2輪車に電動化の波が押し寄せている。まだ日本国内ではマイナーな部類となるが、その電動スクーター市場に、ホンダが8年ぶりに登場させたのが、原付2種モデルとなるPCX ELECTRICだ。ベースとなる3代目PCXシリーズに追加となるこの電動モデル、そのコンセプトは「e-Comfort Saloon」。電動化によって生み出される快適な移動体、だ。

PCXの先進性と上質さをさらに極めた一台


2010年に登場したホンダPCXは、排気量125ccと150ccという2種類のエンジンをラインナップする小型スクーター。ひとクラス上の上質さと高い動力性能を武器に8年にわたって常に通勤快速マシンとして、人気を博してきた。そのPCXが2018年4月にモデルチェンジを受け、3代目に生まれ変わった。

  • 量産二輪車初のハイブリッドモデル「PCX HYBRID」が登場!

これまで同様に125ccと150ccのモデルラインナップに加え、今回125ccエンジンにモーターアシストが加わる量産二輪車初のハイブリッドモデルPCX HYBRID(2018年7月登場)、そしてピュア電動スクーターであるPCXELECTRIC(エレクトリック)が、このPCXシリーズに加わることとなった。



前後の外装パーツはPCXシリーズ共通(一部さし色などで差別化)であるこのエレクトリックだが、バッテリー収納スペースが影響し、リアタイヤの稼働スペースを確保するために、ホイールベースはノーマルのPCXよりも65mm延長することとなった。リアフェンダーもシート下から伸びている通常のモデルとは異なり、専用となるハガータイプを採用しており、さらにマフラーがないこともあって、リアからの眺めは少し華奢な印象となる。


電動ユニットは、シート下にバッテリー、そしてスイングアームの後端にモーターを置いている。モーターはクラッチ機構を持っておらずダイレクトにホイールを回すこととなる。また、減速時にモーターを逆回転することで電気を回収する回生ブレーキも採用を見送っている。モーターは、冷却対策の付加物をなくし自然冷却としており、極めてシンプルな構成となる。

フロントにはABS(アンチロックブレーキシステム)を標準搭載するなど装備は充実している。

ボディカラーは専用色「パールグレアホワイト」のみ。各所にキャンディブルーの差し色が入る。

  • 充電は車載ままでも車外専用充電器でもOK!

その動力源となる円筒形のリチウムイオン電池をアルミケースに収めたバッテリーパックは車体から取り外しができる可搬型のもので2本搭載する。2本のバッテリーパックは、1個ずつ使用していくのではなく、2個を直列に接続して使用するので、2個ともに車体に装備しなければ走行はできない。



またバッテリーは可搬型であるが、車載充電器も装備しており、さまざまな充電環境に対応できるようになっている。充電時間は、全くのゼロの状態から満充電まで、車載充電器で充電した場合で約6時間、バッテリーを車体から外して充電する専用充電器の場合は約4時間/本となる。


ちなみに、車載充電器からの充電なら並列に2つのバッテリーパックに最適充電を行ってくれるが、取り外して充電する場合は、1本ずつの充電となる。バッテリーパックの取り付けは、パック上部の把手をもってストレージに沿って差し込み、ロックプレートを回転させることでパックは固定され、同時にコネクターに接続される。取り外しはその逆で、非常に簡単で確実に取り付け・取り外しができるようになっている。

シート下にヘルメットの収納はできないが、ヘルメットホルダーと小物収納スペースはしっかり確保。

コンセントがあれば、バッテリーは搭載したまま、コード長2mの充電プラグで充電が可能。

  • 気になる動力性能と燃費、航続距離は?

実際に走行してみると、走り出しから中低速の加速は素晴らしく、EVらしさがしっかり強調されているし、もちろん音と振動がない分、走りの上質さはPCXシリーズ中ピカイチといえる。走行モードの設定もないシンプルなものだが、アクセルの微妙な操作ということとも無縁で、アクセルを開ければ開けた分だけ加速していき、都心部での通勤のような使用用途にぴったりのキビキビ感がある。アクセルオフ時の減速も極めて自然だ。



気になる一充電あたりの航続距離は、41km(60km/h定地走行テスト値)と、少々物足りない数値となっている。ただ、この「60km/h定地走行」モードは、ずっと時速60kmで走行した場合の可能走行距離であって、実測値とは少し異なる走行モード。ガソリン車の場合は効率が良く、実際よりもいい数値が出て、EVではこれが逆になることもあるという。発進・加速・停止といったパターンも取り込み使用実態に近い燃費表示測定値である「WMTCモード」での計測では航続距離は50km以上であるという。使い方にもよるが、40km以上の走行は可能であろう。


ちなみに、開発陣が使用用途を検証した結果、必要性能として導き出されたのが、常用速度域は20~0km/h、最高速度は60km/h、一日の走行距離は50kmという答えだ。1日50km走行できれば、このPCXの仕向け地各国の80%以上のユーザーの使用距離をカバーできるとしている。


もちろん高望みをしても仕方ないが、走行のためのエネルギー充電に時間がかかるEVの場合、残走行可能距離はどうしても気になるものだ。もう少しそのハードルが下げるべく、もう少しいい数字になっていればなぁ、というのが正直なところ。EV慣れしている層、もしくは、航続距離圏内での通勤や使用用途のルートが定まっているユーザーなら十分だろう。


ただ、残念ながら法人企業、個人事業主、官公庁に限定したリース専用車となり、価格等は公表されていない。ただ特別に3月1日から4月15日までの期間、大阪及び兵庫県在住のモニターを募集しており、免許、車庫をお持ちの方なら応募が可能だ(30名、抽選)。Hondaのホームページ内「PCXELECTRICモニターエントリーサイト」にて。

■Honda PCX ELECTRIC(ZAD-EF01)

<主要諸元>

●全長×全幅×全高:1960×740×1095mm、

●ホイールベース:1380mm、シート高:760mm、

●車両重量:144kg、乗車定員:2名

●一充電走行距離(国土交通省届出値)

:41km(60km/h低地走行テスト値、1名乗車時)、

●原動機型式・種類:EF01M・交流同期電動機、

●定格出力:0.98kW、最高出力:4.2kW[5.7PS]/5,500rpm、

●最大トルク:18N・m[1.8kgf・m]/500rpm、

●メインバッテリー種類:リチウムイオン

●電池、メインバッテリー電圧/容量:50.4V/20.8Ah×2個、

●バッテリー充電電源:AC100V(単相)、

●タイヤ・前:100/80-14M/C、後:120/70-14M/C、

●フレーム形式:ダブルクレードル

※運転には普通二輪免許(小型AT限定もOK)か、

大型二輪免許のどちらかが必要。



●青山義明

モータースポーツの世界から、4輪、超小型モビリティ、

2輪まで次世代の電動モビリティを追いかける、EV

フォトジャーナリスト。


■試乗・文:青山義明

■撮影:依田 麗

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