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【Triumph TRIDENT 660】水冷並列3気筒エンジンの“ちょうどいい”ロードスター

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  • 2021.08.26

今回は​「Triumph TRIDENT 660」をご紹介します!

伝統の“TRIDENT”の名前が復活。トライアンフの代名詞である直列3気筒エンジンを使ったオーセンティックなの新型のミドルネイキッド、TRIDENT 660はヒットの予感が漂う意欲作だった。

  • “ちょうどいい”クラスを狙ったトライアンフの意欲作

“ちょうどいい”というのが最近ヒットするバイクのキーワードだと思う。その“ちょうどいい”とは、エンジンパワーとフィールのちょうどよさ、スタイリングのちょうどよさ、気軽に乗れるちょうどよさ、価格のちょうどよさの4つが大きな核になっているのではないか。カワサキZ900RSやホンダGB350などはまさにこれに当てはまる。手に入れやすく日常的にも乗れるから幅広いユーザーがバイクライフを構築しやすい。ある意味で趣味的バイクの現代版普及モデル。TRIDENT 660はそんな“ちょうどいい”クラスを狙ったトライアンフの意欲作と言えるだろう。


 エンジンのパワーとフィールのちょうどよさは、ストリートトリプルSのエンジンをベースにした水冷並列3気筒660ccからなる。ボア・ストロークが76.0mm✕48.5mmのストリートトリプルSに対し同じ排気量ながらTRIDENT 660は74.0mm✕51.1mmとよりストロークをアップ。最高出力は81PS (60 kW) / 10,250rpmで、最大トルクは64Nm /6,250rpmと、ストリートトリプルSよりやや低い数値で、それをより回転数で発生させているのがキモだ。


 スポーツエンジンをロングストローク化して、最高出力、最大トルクの発生回転数を下げるやり方は、ストリートで扱いやすくするための定番レシピ。ストリートトリプルの高回転域の伸びの良さを少し抑えて、その分を低中回転域の上にのせたようなフィール。フラットな特性が強まって、スロットルを全開にしてものけぞるようなところはないけれど速度は伸びている。レスポンシブルでも神経質なところがなく、低回転域からでもスロットルだけでよどみなく高回転域までつながっていく。街でもワインディングでも適度に速く走れて、実にコントローラブルで戸惑うところがない。


 スタイリングのちょうどよさは、丸目のヘッドライトのシンプルなネイキッドスタイル。燃料タンク部分にボリュームを置いて、トライアンフブランドを遠目からでも強調するおしゃれなグラフィックをほどこし、テールは現代的に小さくスポーティーさを際立たせている。そこはかとなくレトロ感のあるオーソドックさを加味しているのも重要なポイント。こういうスタイルとディテールの仕上げの巧みさはヨーロッパブランドらしいところ。


 気軽に乗れるちょうどよさは、660cc直列3気筒のエンジンのコンパクトさからくる車体が大きすぎないところと、バーハンドルを使ったアップライトなポジションだ。ゆっくり流して乗っても姿勢が楽で、視線が下を向かず、身長170cmで同じ身長の人より少し足が短い体重66kgの私で両足カカトまではいかないが、力が込められる拇指球部分まではしっかり接地するシート高だから、どこでも何にでも気兼ねなく使える万能性。1400mmと400ccクラス並の短いホイールベースをしたコンパクトな車体は乗った感覚も400ccクラスのように扱える。


 それでいてちゃんとスポーツライドしたくなるフィーリングがある。気軽に乗りやすいけれど退屈ではない。スロットルを開けて走れば操るおもしろさが感じられる。フットワークが軽くて小気味よく動きながら、ストリートトリプルのフロントからさっと素早く向きを替えていくのとは違い、トレールが大きくしっとりと粘りがあり自分で曲げていく要素が増した良い意味で角を落としたみたいな操作感。前後のサスペンションは速度を出さなくてほどよく動くから平均速度が高くないタウンユースでもしっとりと路面をとらえ乗り心地も悪くない。


 価格のちょうどよさは、ずばり税込みのメーカー希望小売価格が100万円を切る99万3千円だというところ。ライバルと照らし合わせると戦略的な価格だと思う。大きな決意がなくても購入候補としてあがってくる絶妙な設定。もっと本気でスポーツライディングがしたかったらストリートトリプルシリーズがあるという2段構えなのもニクイ。TRIDENT 660はこのように個人的に思っている4つのヒット作となるエレメントがそろっているのである。トライアンフはいいところをついてきた。

  • 装備・車両詳細

ストリートトリプルSの水冷並列3気筒DOHC12バルブエンジンをベースにしながらボア・ストロークを変更し、圧縮比も下げられているのがミソだ。変速は6段。吸気にはマルチポイントシーケンシャル電子燃料噴射を採用し、排気はステンレス製3 into 1レイアウトのショートタイプマフラーを採用。シンプルなフレームはチューブラースチールのペリメータータイプ。スリップアシストクラッチと解除も可能なトラクションコントロールを装備する。


トライアンフのロゴを大胆に使った燃料タンクのグラフィック。フレームに沿わずまたごしてまでレトロ風の形状にしたところと、ニーグリップラバー風のデザインがモダンさの中にオーソドックスな雰囲気を醸し出している。燃料タンク容量は14L。イグニッションキーの差し込みはトップブリッジよりライダー側、フレームのネックの部分にある。


フォークにはSHOWA製インナーチューブ径41mmのSeparate Function front Fork [SFF]を使う。17 x 3.5サイズのアルミ鋳造ホイールに120/70R17サイズのミシュラン・ロード5を履く。ダブルディスクブレーキのローター径は310mm。キャリパーはニッシン製ピンスライドの型押し2ポッド。ラジアルマウントの対向ピストンよりコストを下げながら、キャラクターに見合った充分な利き。


スイングアームはアルミではなくスチール製。お尻の小さいスタイルを実現するために行き場を失ったリアフェンダーとナンバーは流行のスイングアームマウントとなる。リアサスペンションはプリリード調整機能のあるSHOWA製モノショック。リアブレーキはφ255mmシングルディスクとニッシン製シングルピストン。もちろん前後ABS付。リアホイールサイズは17 x 5.5でタイヤサイズは180/55R17。


100万円を切る価格で、電子制御スロットルにシンプルながらTFTカラーディスプレイを使うマルチファンクションメーターなのは立派だ。ライダーに近くアップライトなポジションを提供するパイプのハンドルバー。手前へ適度に絞られていて手首に負担がかかりにくい。ライドバイワイヤによるライディングモードは『ROAD』『RAIN』の2種類のみ。灯火類はすすべてLEDを採用。ウインカーには自動キャンセル機能もある。


●Triumph TRIDENT 660 主要諸元
■エンジン種類:水冷4ストローク並列3気筒 ■総排気量:660cm3 ■ボア×ストローク:74.0×51.1mm ■圧縮比:11.95 ■最高出力:60kw(81PS)/10, 250rpm ■最大トルク:64N・m/6,250rpm ■全幅×全高:795×1,089mm ■ホイールベース:1,400mm ■シート高:805mm ■車両重量:190kg ■燃料タンク容量:14L ■変速機形式: 6段リターン■タイヤ(前・後):120/70 R17・180/55R 17 ■ブレーキ(前/後):デュアルディスク・310mm/シングルディスク・255mm ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):979,000円

■試乗・文:濱矢文夫 ■写真:渕本智信 ■協力:Triumph JAPAN https://www.triumphmotorcycles.jp/bikes/roadsters/...

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