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【YAMAHA テネレ700】砂漠の名前を冠した気になるスポーツアドベンチャー。

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  • 2021.07.16

今回は「テネレ700」をご紹介します!

アフリカ大陸北部に横たわる巨大なる砂漠、サハラ。ニジェールにテネレと呼ばれる大きな砂漠もその一部だ。


砂漠の遊牧民、トゥアレグ族の言葉で「何もない場所」を意味するというテネレ。そこはかつてパリ~ダカールラリーが好んで通過した中盤のハイライトだった。


ヤマハのテネレが誕生してすでに40年近い歴史を持つ。その最新作がここに紹介するTēnērē700である。

  • ツーリングと冒険ラリーのクロスーオーバー

1983年、XT600テネレの名で発売された初代は、パリ〜ダカールラリーを走破するバイクを思わせる巨大な30リットル入りの燃料タンクと、短くなったシングルシート、そして空冷600㏄単気筒エンジンを搭載したビッグオフロードマシンだった。


その後、ラリーマシンの進化に歩調を合わせ、カウルを装備。また、80年代後半には直列2気筒750㏄エンジンを搭載したスーパーテネレが登場。ロードセクションでのより快適さを狙ったツアラーとして登場。ファミリーを拡げて行く。


その後、単気筒モデルは排気量を拡大し、FZ750でも採用された5バルブヘッドを持った水冷660㏄エンジンを搭載しフルモデルチェッジ。ヨーロッパを中心に高い人気が続く。


2010年には1200㏄エンジンを搭載したアドベンチャーツアラー、スーパーテネレ1200がデビュー。ヨーロッパメーカーの牙城に食い込む姿勢を見せた。


そして2019年。ラリーバイクのようなツーリングオフローダーとしてデビューしたのがここに紹介するTēnērē700だ。現在のダカールラリーを戦う450㏄単気筒ラリーレーサーのようなスタイルは、初代から続く「世界一過酷なモータースポーツ」と称されるダカールラリー参戦車を一目でイメージさせるもの。


エンジンはMT-07、XSR700にも搭載されるクロスプレーンエンジン。270度の位相クランクを持つ直列2気筒エンジンだ。フレーム、サスペンションは「オフ車を作るつもりで作りました」とヤマハの開発エンジニアが語るように走破性を重視したパッケージとなっているのが特徴だ。例えばスーパーテネレ1200が車重260㎏近いのに対し、Tēnērē700は205㎏。688㏄のエンジンが生み出すパワーは53kW、最大トルクは67N.mと必要にして充分な値。何より、代々テネレのセオリー通り、舗装路も未舗装路でも走破性と乗りやすさを実現するために軽い車体が武器になりまったく不足を感じない。
  • 試乗インプレッション


エンジンは滑らかに回りつつ、位相クランクが生み出す不等間隔爆発の恩恵で後輪が路面を蹴利出すような掴み感がしっかりと伝わってくる。


ライダーの体格によってシート高875mmという数値は、停止時の足着き性で判断する限り乗り手を選ぶ部分がある。



しかし、動き出せば低速走行からバランス感が良い車体の効果もあり、足をステップの上にとどめてバランスを取るのが難しくない。それに、オフ車としてこのTēnērē700を見たら、シート高がある、つまりそのままオフロード走破性に期待が高いということ。実際、グランドクリアランスも240mmとタップリ採られている。



ライディングポジションもしっかりとオフ的な味付けで、ステップ、シート、ハンドルグリップの3地点に乗り手の体を配置すると、意外にもコンパクトでオフ車的なポジションであることが解る。



また、悪路をスタンディングポジションで進むのにピタリと合うように、ハンドルバーをライズアップしているのだ。そのため市街地での極低速時にシッティングポジションととった場合、私の体格だと操舵感が軽すぎる印象になったがこれも慣れの範疇。


エンジン特性としては低回転から扱いやすい。あえて2気筒が繰り出すトルクの大きさを前面に出さず渋滞路でもアクセルワークが簡単。ファイナルギア比を低めに設定しているので、2速より3速でエンジン回転を低めて走り、エンジンの出力をマイルドに取り出す選択肢もある。



ビッグバイクなのだが、本当にオフ車、トレール車に乗っているような印象なのだ。


市街地でのサスペンションは長いストロークを活かし路面の吸収性が高い。軽量なことで採用されたブレンボ製のブレーキキャリパーはなるほど小ぶり。



パッドの性格もロードよりもオフロードでの扱いやすさを意識してか、最初の噛みつき感はマイルド。しっかり操作力を上げることで制動力が強まるタイプ。ブロックパターンがたくましい前後のタイヤはピレリ製のスコーピオンラリーSTRというマルチパーパスタイヤを履くだけに、市街地、郊外のワインディングロード、高速道路、そしてダートまでTēnērē700が持つ性能を不安無く引き出せるのがいい。


天候、路面、そして場面を問わない走りの良さ、楽しさ。これぞアドベンチャーバイクとしての必須条件。リッタークラスより軽量で引き出しやすいパワー。この組合せはTēnērē700にしかない魅力だと言えるだろう。

  • 装備・車両詳細

φ41mm径のインナーチューブを持つ倒立フォーク、φ282mm径のダブルディスク、2ピストンのブレンボキャリパーを採用。フロントフェンダーは上下に位置調整が可能。ブロック高のあるダート用タイヤを履くことを前提としている。


水冷DOHC4バルブ直列2気筒エンジン。クランクケースカバーはロアフレームとスキッドプレートで護られている。


リンクを持つモノショックユニットで構成されたリアサスユニット。φ245mm径のディスクプレートとシングルピストンキャリパーを組み合わせるリアブレーキ。


楕円オーバル形状のサイレンサー。ブラックの本体にスレンレス製のエンドキャップが装着される。


テールランプはLED光源のものを採用。ウインカーは白熱球を使う。


シートは前後で分割式。オフロードでのボディーアクションを優先してシート上面を前から後ろまでフラットな形状としている。パッセンジャーシート下にはETC車載器が収まるスペースがある。


燃料タンクは16リットル入り。一般道をツーリングペースで入ると燃費が伸びた経験があるので、乗り方によっては相当長い航続距離をもつ。


メーターパネルは液晶モニターを使う。速度、回転計、時計、ギアポジション、燃料計など必要な情報を一度にみることができる。メーター上にあるバーはスマホホルダーなどの装着に便利なもの。そのステー類は樹脂製で軽量化されている。


中央が太くグリップに向けて細くなるテーパー形状のハンドルバーを装着。


LEDのヘッドライト。上2灯がロービーム、下2灯がハイビーム。ハイビーム時は4灯全部が点灯する。ライトガードを兼ねるスクリーンで作られたTēnērē700独自のフェイス。


左右のスイッチ類は現代のバイクにあって実にシンプルなもの。右側にあるセレクトスイッチで画面表示の変更も可能。


アルミ鍛造製のサイドスタンドを採用。軽量化へのこだわりだ。跳ね上げたときの角度にヨーロッパ製のエンデューロバイクのようだ。これは悪路でフルストロークしたときに路面との干渉を避けるのが目的だろう。

■試乗・文:松井 勉 ■写真:赤松 孝 ■協力:YAMAHA

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